キャラクターメイキング
プレイ初日。ついに俺はPioneerの世界へと足を踏み入れるのだ。
このゲームはシュルトベヘナと呼ばれる世界でNPCやプレイヤーたちと協力しあい世界を開拓していって他の街や国との交渉を増やしながら行動可能エリアを広げていくゲームだ。
確認されているだけで40以上の種族と様々な職業、そして無数にあるスキルを利用して世界を旅する事が出来るガチガチのファンタジーRPGの側面も持っている。
「まずは基礎知識を軽く調べてからキャラメイキングだな…どんなプレイ目指すかなぁ…ヒーラーとかが仲間に拾って貰いやすいだろうけど、開拓がメインらしいからなぁ…。まずは公式サイトで種族の一覧っと…。」
開いたページにズラリと並んだ種族サンプルの画像のクオリティに吐息が漏れる。
「やっべ…エルフにドワーフ、フェアリーにホムンクルスに獣耳たち!マジで天国だわ!………何々?ハーピィやウンディーネは女性専用か…男専用は…何だ?リザードマン?裸だからか?よく分からん。………まだまだ記載されていない種族もいるけどランダムのキャラ作成じゃないとなれない?…再キャラメイクには…課金アイテム(百円)が必要である!?ちょっと待て…リザードマンとかになっても俺にはもう引き返せないという事なのか!現実ってヤツは…。」
もう既にランダム選択は確定なのかって?レアな種族がいるってのなら賭けてみるのが本物のゲーマーの姿ってもんでしょう!
「掲示板には…おっ?ランダムキャラ作成したら風の精霊になりました?凄ぇ!精霊とかもいてなれるのか!ん?でも基本の職業も自動設定されていて吟遊詩人になっていました?吟遊詩人もレア職業じゃねぇか!何を悩む必要がある!?」
基本の職業はレベル30まで変更する事が出来ずゲームが一般公開されて2週間が経つ現在のトッププレイヤーが未だに14らしい。サブ職業を付けると職業の個数で経験値が等分に分けられてしまうシステムのせいだと言うが様々な恩恵が受けられる職業の設定はメイン職業1つにサブ職業2つを全て付けるのが基本らしい。
「3つのうちの1つは必ず創作系の職業にしなければならないらしい仕様か…まぁ、タイトルが開拓者っていうくらいだしな。」
入手出来るスキルは種族によるものや所持している職業によって変わるシステムらしい。ますますキャラメイクの重要性は上がっていく。
「まぁ、どうにもならないキャラなら土下座して百円だけ課金させて貰おう…次はランダム無しの無難キャラメイクになるけどな。………百円くらい土下座すれば許してくれるよな?…るよね?」
しかし、いくら不安になろうともランダムキャラ作成を諦めたりする事はないのである。
「基本入力は昨日終わらせたから…後はベッドセットをかぶってスタートするだけ。………じゃあ…LINK!」
ボタンを押して決められたワード『LINK』と唱えるとベッドセットは起動し、ゲームの世界へと俺を誘っていった。
「ようこそシュルトベヘナへ。わたくしナビゲーションをさせて頂きますコロナと申し上げます。まずは貴方様のお名前を教えて下さいませ。」
真っ暗な空間に人形の白いアバターがポツリと用意されており、アバターの立つ前の空間にキーボードが浮かび上がる。
「シュロップっと…よし決定。」
「シュロップ様ですね。大変素敵なお名前ですね。では次にキャラメイクへと移行致しますが説明は必要ですか?」
「いや、必要ないよ。簡単には確認してきたから。」
「必要ございませんか。では、ご不明な点がございましたらその都度お声かけ下さいませ。」
「ありがとう、助かるよ。」
あまりにも滑らかな対応をこなす声に少し戸惑いながらも順調に答えていく。
「では、シュロップ様はキャラメイクを手動で行いますか?ランダムで行いますか?」
「ランダムですると基本職業もランダムで決まるって本当?」
「本当です。詳しくは答えられませんが、ランダム生成でキャラメイクすると種族、職業ともに通常の設定では選択不可能な特殊なものを獲得する可能性がございます。中にはその中でしか入手する事の出来ないスキル等もございますのでオンリーワンを目指すならランダムをオススメしております。」
なるけどな…ナンバーワンじゃなくオンリーワンね。ここでしか入手出来ないレアなスキルも使い勝手などまでは保証しないって事だな。でもまぁ…、
「やっぱりランダムでお願いします。」
「承りました。ランダム生成を行います。リラックスして好きな体勢でお待ち下さい。」
「神様お願い…どうか俺にレアキャラを!」
そうして周囲の闇の中へと溶けていくアバター。
「では、良い旅を…ふふふっ。」
最後に脳裏に響いた笑い声がただただ頭の中で繰り返し再生されるのだった。
最近のゲームは自由度が高いって言っても何でも自由過ぎるんですよ。最初くらい選べない不自由くらいならパターン数さえあれば独特な遊び方を追求出来て面白いと思うのですよね。