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チュートリアル2

仕事を終え、陽加に頼まれていたゲームを買って帰宅すると既に20時になろうとしていて、まだ帰っていない更新彼女の代わりに夕飯の支度を済ませた頃に玄関が開く音が聞こえた。


「ただいまぁ…ごめん、遅くなった。あれ?カレーの匂い…ご飯作ってくれたんだ?」


「おかえり〜『Pioneer』もそこに買って来たからな。」


「は〜い、武ちゃんはカレー人参入って無いよね?」


「もちろん入ってるぞ!今日の人参は特別にハート型だ!端材はみじん切りにして投入済みだ!」


「何で人参入れるのよ!人参だけは食べられないって言ってるでしょ!」


「大丈夫、大丈夫。そう言いながら毎回ちゃんと食べてるだろ?文句言わずにさっさと食べるぞ。」


「…は〜い。食べたらゲームすんの?」


「そうだな。食器の片付けはよろしくっと何かあればメッセージしてくれ、メールやメッセージは中で見れる様になってるから。じゃあ、いただきます。」


「はい、いただきます。」


大皿に盛ったカレーライスを3分で平らげた武弥はさっそくゲーム機をベッドの上で起動させる。ヘッドセットタイプのこのゲーム機には仮想空間の中を動き回るという特性上、外部出力端末が必要なく、リクライニングのソファやベッドに横になって使用する。

ヘッドセットの内部の特殊な端末から脳波に干渉しているらしいがブラックボックスが多く、他のメーカーからはフルダイブ環境下でゲームが体感出来るハードは発売から8年経った今も出ていない。

もっぱら宇宙人が作ったなどと言われているが殆どのゲーマーたちにとって誰が作ったのかは重要ではなく、安全にちゃんと動いてくれさえすれば良いのだった。


「じゃあ………LINK。」


コマンドと同時に武弥は身体の力が抜け、ゲームの世界へと落ちていったのだった。



ピコン!


《採集用青銅カマを入手しました。》

《竹カゴを入手しました。》

《初心者用ロッドを入手しました。》

《青銅ナイフを入手しました。》


「ん?なんだ?ログインしたらアイテムが…。」


『何かご不明な点がございますでしょうか?』


「おっ、コロナさんか…実はログインした時に何故だかアイテムを幾つか入手したんだけど何故か分かるかな?」


『さんは必要ございません。コロナとお呼び下さいませ。入手したアイテムに関しましてはシュロップ様がお作りになった解放(リリース)したゾンビの犬が倒した相手からドロップされたアイテムでございます。』


「えっ?解放(リリース)ってゾンビがいなくなるんじゃないの?」


『使役が解除されるだけでございます。使役の状態で倒しますとクリエイトされたゾンビと制作者に経験値が入り、アイテムのドロップ、お金を入手する事がございます。

しかし、解放(リリース)されたゾンビはまず制作者を攻撃対象とする場合がございます。

そして経験値は入る事無く、成長する事はございません。しかし、ドロップアイテムやお金は制作者の元へと送られる仕様となっております。

尚、最後にドロップしたアイテムは討伐者へのドロップアイテムとなりますので入手となりません。』


「アンデットのクリエイト………仕様が壊れてない?大丈夫?」


『大丈夫でございます。逸脱していると感じましたら修正がございますので、それまではそのままお楽しみ下さい。』


一応、GMには設定のミスではありませんか?と確認をとって貰うメッセージをコロナに預け、チュートリアルへと戻る事となった。


『それでは、本来なら街でお買い物をしてみるという内容のチュートリアルとなるのですが、購入目的の採集用の道具を既に入手していますので、スキップする事が可能ですがいかが致しますか?』


「じゃあ…スキルも使わないと駄目だしスキップで!」


『ではスキップを選択しました。スキップしたチュートリアルの内容で入手するはずだった500Gを収納(ストレージ)内の所持金へと転送致します。そして、薬師のスキル【調薬】についてご説明させていただきます。』


「おっ、これで回復アイテムが節約出来るな!」


収納(ストレージ)内に転送されたバナグ草の葉とビビドの根を取り出して下さい。』


言われた通り2つの素材を出して手に持つ。


『必要な素材を持って【調薬】と唱えるとメッセージが出ます。やってみて下さい。』


「【調薬】っと………簡易調薬を実行します。成功率は42%ですか…はいを選べば良いんだよな?」


『そうです。簡易調薬というのは機材等を使わない代わりに初級の調薬しか行う事が出来ず、成功率・品質共にあまり期待出来ません。』


「じゃあ、機材を使ってちゃんとした方法を使って正規の手順を踏めばもっと高い品質の薬品が出来る訳だな。………あっ、はいを選択っと………。」


その瞬間、足元の地面に黄色いサークルが出現し、目の前にカウントダウンが表示される。


『待機時間は20秒のようですね。その間はサークルの中から出ると調薬の失敗となりますのでご注意下さい。』


「はぁい…………意外と20秒は長いな……外で使うと魔物との遭遇したら即アウトになりそうだな。おっ、あと3秒………っと出来た!ってあれ?」


【混ぜる痺れ薬・微】が出来ました。効果:肉や草などの餌に混ぜて相手に食べさせると麻痺する事がある。評価:苦くてマズい。


「……………普通はチュートリアルとかって回復アイテム作らない?」


『暗殺者のシュロップ様にサービスさせて頂きました。』


余計なお世話だとも言えず「…ありがとう」と返事をする。


『以上でシュロップ様のチュートリアルを終了しますがご質問や不明な点がございますか?』


「………う〜ん。一般的なプレイヤーはチュートリアルの後はどうしてるの?」


『7割以上の方が開拓者ギルドへ登録をしたり、街の周辺で狩りをします。最前線の方は既に隣の街を見付け、この街との間に道を作る計画を立てているとか。木を切ったりするには専門の方のスキルが必要ですが、枝をはらったり、ただ地面を掘り返すのは全員が使用可能な【開拓】というスキルで行えます。』


「ほう、他に誰でも使用可能なスキルってあるの?」


『それならば【釣り】と【決闘】でしょうか。

釣り文字通り、道具さえあれば水場で釣りが可能です。スキルレベルが上がる程に大物が楽に引き上げられる様になるでしょう。

決闘のスキルはこれまた文字通り、他のプレイヤーやNPCと決闘する事が出来ます。基本的には意見の対立や模擬戦闘の為に両者合意の上で行われるのですが、このスキルを使用して不当に他人を害した場合は運営から重いペナルティが課せられます。』


「つまり、新人虐めや不当な賭け試合とか?」


『その通りです。各プレイヤーには私のような担当するナビゲーションAIが存在しますので、あからさまに倫理的、性的に危ない事などを行われますと大変な事になります。』


「性的って…あぁ、風俗法とか色々なアレね。」


『色々なアレでございます。…では、特に他にないようなので失礼致します。ゲームメニューの【GMコール】のボタンから質問、不具合の報告などが行えますの、その時は私が対応させて頂きますのでよろしくお願いいたします。』


そう言ってコロナの声がしなくなりチュートリアルは終了したのだった。



さて、ゾンビ犬は何を倒したのでしょう?

主人公は気付かないので、謎は謎のまま進みますよっと。

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