止まった時計12
窓ガラスから射し込む光がテーブルを白く焦がす。
椅子の影にうずくまる僕は身じろぎすらできず、ただ息をつめる。
僕しかいないリビングはどこまでも綺麗で息苦しい。
助けてと紡ごうにも唇は動かず声は出ない。
どこまでも綺麗で明るいリビングに誰かがいることは許されない。
僕は心の中で助けてと繰り返す。
十時十分。
止まった時計。
僕は何処にいるの?
十時十分。
部屋の時間はそれで止まってる。
この部屋に一人住んでどのくらい?
ベランダカーテンは引きっぱなしでさすがにちょっと埃が気になる。
備え付けの食器棚見覚えのないグラス。
発泡酒の缶をあけグラスに注ごう。
ほら埃が見えなくなる。
時間を忘れて止まった時に溺れよう。