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プロローグ
自分に自信が無かった。
そこにいる理由を、ずっと探していたのだ。
夏休みが始まって、もう理由もなくなったのだからと、誰と約束もすることもなく学校を飛び出した。
知り合いは大勢いた。
時々遊ぶくらいの関係だ。
「……」
薄かった。
もうずっと何年も過ごしてきたこの街では、もう生きていける気がしなかったのだ。
行くなら今だ――。
あらかじめ用意はしてあった。
親には、友人とキャンプにいくと言って、数日間分の服と、食べ物を詰め込んだ鞄だ。
「行こう」
鞄を背負って、家を出た。
旅に出るのだ。
嫌になって、逃げるのではない。
「旅だ」
そうして、坂井真は歩き出す。
高校2年夏。
その遅すぎた青春の始まりを、僕は思い出す――。




