第86回
ボス「私はその技術を知り、最初はこう思った。人間の進化の時が来たんだと、歴史が変わると……」
部下「ボス、そろそろ時間です」
ボス「うーん、いいところだったんだが。さて、じゃあお別れの時間だね」
その男は銃をリコの頭に当ててこう言った。
ボス「命乞いをしろ」
リコ「……」
じっとして、何も言わないリコ。
ボス「お前のパパとママの命乞いは、そりゃもう映画やドラマに出てくるような命乞いだった。私はガッカリしたね。特にパパ。僕は昔からファンだったんだ。ほとんどの書籍も愛読していたし、彼の言葉が私の生きる道標だった。だが、蓋を開けてしまえば……本の言葉もすべて演技だったんだろう。まあ日々私らとは違って、堅気の世界で生きていた彼だ。そう、彼は言わば俳優。偽りであったが、私の心に灯した火は偽りではない。世界にはびこる憧れは、案外こうやって出来ているのかもしれんな」
銃を構えて男は続ける。
ボス「なあに、私も鬼ではない。仲良く両親の隣で眠らせてあげよう。あの世で仲良く暮らしなさい」
その男の目線の先には、リコの母親の綺麗で長い髪の毛が見えた。リコの目には再び先ほどのとは比べ物にならないほどの涙が溢れる。しかし、声は出さなかった。
ボス「強いんだな、その強さはカッコつけなのか、それとも精神力か」
安全装置を外す男は、少しの躊躇もなく引き金を引いた。
部屋に銃声が響き渡った。
◆◇◆
時は戻る。リコは眠りから覚めた。




