第6回
狙いを定める機械の音。俺は無心で階段を下り逃げる。静かな廊下に響き渡る銃声と俺の叫び声。
「はやく!こっち!!」
狙いを定めて撃たれる銃弾。
「あぶない!」
「ひいい~!」
メイに腕を引っ張られた瞬間、放たれた銃弾が身体に触れた。
「ッ…!!」
やられた!肩を撃たれた。だがなんとか折り返しの階段のところまで逃げる。
「ハァ……そうだった、旧型はコンセントに繋がっていても動けるモードがデフォルトだったんだ!現段階で生産されている新型OSはバッテリーにかかる熱の負荷により消耗が問題になって、設定出来なくなってるんだけどな!」
「今は解説しなくていいから!!」
と言われても、どうも性格上自分が得意なことに関してはやたら饒舌になってしまうのがオタクという生き物だ。ひとまず幸運なことに、銃撃は俺の肩をかすめただけで済んだ。
「全然幸運じゃないわよ…大丈夫?」
「え……!?」
一瞬メイの言葉にヒヤッとした。とにかく傷を確認している。そこまで痛くはないが、血は相当出ていた。
「確かに旧型なら、もはやなんでもありだな……法律に基づいた制御の自動アップデートの解除、オフライン作動、ハッキングからクラッキング、外部の武装改造、一度この禁断を味わってしまうと、まさにもう何も怖くない。まあ個人で楽しむ分にはOKな趣味としても愛されているぞ」
はぁ……、と溜息混じりに地面に膝をつくメイ。しかし、ロボはそんな余韻に浸ってる暇も与えてくれないようだ。突然ロボの本体から、先ほどとは違うけたたましいサイレンが鳴り響く。
「あの音は確か仲間を、呼ぶ時の音だ…!!逃げるぞ!下へ!」
またどこかで、これまた先ほどと違うモーター音で走る音が鳴り響く。こんな一大事だって時にメイは、しゃがみ込み何かを考えていた。
「なにしてんだ!?先行くぞ!」
「ねえ?」
「どうした?」
「アイツは階段の移動はできそう?」
「いきなり何だ?」
「私に考えがあるの」
階段の移動か……さっきの旧型の本体を触ってみたが、特にそういった階段を登り降りできそうな改造はされてなかったと思う。
「そうだな、多分そこまでは出来ないと思う。走行の音が遠くからするのが聞こえるし、2階で2台同時に走ってるケースもなかったんだろ?そうなると、各階にロボが常駐してると考えられるな……」
「なるほど、同意見だわ」
「で?」
「私は少しだけ、気配を消す魔術が使えるの、ほんの1分くらいだけだけどね」
「それは凄いな…」
「でも全速力とかだと絶対に持たないから、下駄箱にダッシュで逃げる選択肢はここで捨てましょう。それにアンタ怪我してるしね」
「ああ、すまん」
「そいえば、アナタ名前は?」
「シュンだ。春って書いてシュン。」
「シュン、私に案があるの」
「なんだよ?」
なぜかメイは頬を赤く染めていた。
「………」
「なんで照れるんだよ!」
「…3階に私の部屋があるの、嫌じゃなければ、シュン、うちこない?。」
「え!あの、どういうことだ!?」
いきなりすぎてテンパる。
「そういう意味じゃないわよ!救急箱があるから!」
「あ、ああそうだな!」
「……でも、入る前に少し片付けたいから、外で待っててくれる?」
「そんなことしたら俺死んじまうよ…」
「まあ冗談はともかく、私の部屋は上がってすぐ右の角部屋なの。いくわよ!!」