第5回
「普段から持ちあるいてるの!今の状況なら私が使うより、アンタの方がいいと思って!」
まあ確かに!遠慮無く借りるぜ!素早く受け取った俺はスタンガンを見る。これ30万ボルトは出るぞ…
「これなら出会ったとしても一撃で倒せるな!」
「え?あ!もしかしたら説明不足だったことがある!」
「なに?」
突然、銃声が聞こえてきた。
「アイツ、武装してるから、飛び道具に注意して」
「言うの遅いって!!!」
「そりゃこれだけのことが起きてるんだから、セキュリティロボだって武装するわよ」
「ぎゃ?!」
こんなん状況じゃスタンガンなんて通用しない。接近すること自体がありえないからな。逃げ惑う俺たちは、階段までやってきた。
「ぜぇ、はぁ…やばい、もう限界だ」
「ハァ!?アンタ、男でしょ!体力無さ過ぎ!」
「工学部男子をナメんなよ!持久走のサボり方なら延々と語れる!」
「馬鹿言ってないで走りなさい!」
何とか中盤まで下った。ってかセキュリティロボってあんなドラム缶みたいな図体してるのに、ここまで降りてこれるのか?
世の中で働くセキュリティロボは階段などは登れない。しかし事実、さっきからこのロボット達は1階から3階までのフロアを行き来しているはずだ。くそ、どうやって下るのか、それだけでも見てみたい。知的好奇心のせいで後ろを振り向いてしまう!なんならじっくりと眺めたい!拝みたい!
「なにしてんの、撃たれるわよ!」
メイのそんな言葉も届かず、それでも俺は後ろを気にしながら息を切らしていた。我ながら命よりも好奇心を取るとは、マッドサイエンティストの才能があるかもしれない。しかし、展開は意外な局面を迎えた。
「お、追ってこない…?」
「止まったみたいね」
キュルキュル…と可愛い車輪が回る音をさせながら、セキュリティロボは階段とは違う方向を向いてゆっくり動き出した。壁を見渡しながらキョロキョロ首を動かしている。
「あれ、探してるの…」
「…コンセント?」
最期の力を振り絞るように、セキュリティロボは自らのしっぽのような電源ケーブルを壁の穴に差し込み、静かに青い充電ランプを灯した。
「なんか、可愛いわね…」
「生物の生きることに対する健気さみたいなものを感じた」
「まああれ生きてないけどね…」
「AIは生きている!AIは21世紀の財産!AIは友達!」
「分かったから、分かった…」
そっと俺はセキュリティロボに近づいた。
「大丈夫なの!?いつ襲ってくるか分からないわよ!?」
「大丈夫だって、コイツは自分がある程度活動するためのバッテリーが溜まらないと、動けないようになってるから。強制的にバッテリーが余ってたとしても、充電を行うようにプログラミングされてるんだ。動き出して行動した後に電池切れで道端で立ちっぱなんてバグ、10年前はあったけどな。ホント、科学の進歩だよな」
笑いながら近づく俺。コンコンと鋼のボディを叩く。
「ほらね、平気。こうみると可愛いフォルムだな、旧式と見た。」
「……でもその子って、改造されてるんじゃなかったけ」
確かに…何が起きても変じゃない。コンコンと叩いたボディから何かハードディスクのようなものの回転音が聞こえてきた。
「そういうことは早く言ってくれ…」
かっこいい起動音と共に赤いランプに切り替わり、セキュリティロボはこちらを銃口を向け、攻撃を再開した。