第23回
声を出して読んでみても返事は帰ってこない。動きやすいようにと必要最低限の荷物が入ったリュックも消えていた。
「信用されるわけ、ないよなぁ」
そこには手紙が置かれていた。
「“さきいくね メイ”」
にしても、あんなセキュリティロボだらけの中に、魔術が使えるからって一人で突っ込むなんて危険すぎる。よっぽどお兄さんのことを考えてるんだな。
「まあ、家族ってそういうもんなのかな…」
俺には肉親はいない。ちなみに特別親しい友人もいない。なんとなーく工学科で、それなりの友達と遊び、今に至る。まあそんなの特別でも何でもないけど、昔は違ったのになぁ。
アキちゃんか…
夢の中で小さい頃の俺が少年が呼んでいた女の子の名前。その子だけはうっすら覚えている。この島で俺が一番に仲の良かった女の子だ。凄く病気がちで、俺と同じ施設で育った。いつも遊んでいてお風呂も一緒だったな。オレ、女の子とお風呂入ったことあるんだよな…今考えるとすげーよ。
でも、ある時学校にも来れなくなったんだよな。
俺はそこから友達を作らなくなった気がする。AIにのめり込んだりしてたな。俺を育ててくれた施設の人も、なんでアキちゃんがいなくなったのか分かんないって言ってたな。
でも、今考えたらあれは人体実験の被験者だよな。
そこの施設の子は、たいてい被験者だった気がする。親がいなかったりでモルモットにされてる子もいたな。俺もちょっとだけ薬を飲んだりはさせられたなぁ、健康に害はないって契約書みたいなものも書かされたりしてたけど、とくに精神面でおかしなことがおきるほどの実験はさせられなかったと思う。でも、今考えるとよく平気でいられたなとは思う。
「ご主人様、ご主人様」
遠くでAIが俺を呼んでいる。充電もしていたので声が聞こえなかった。
「どうした?」
「メイさん先行ってしまいましたよ」
「知ってるよ」
「私の声には反応しなくてアラームに反応するなんて、ひどいです!」
「わりい、朝とかもあってスルースキルが上昇してたんだなきっと」
「そんなスルースキルいりませんよ~!」
ぷんぷん!という顔をしている。
「まあいいよ、とにかく俺はメイを追うよ」
「ご主人様、またあの技使うんです?結構お体に負担がかかるので、私はやめて欲しいんですが……」
「そうも言ってられない状況なんだよ、それにアイツを一人にするのは良くないっていうか…ほっとけなくてな」
「恋ですカ?」
「ちげえよ!」
「にひヒ」
さて、能力発動。することは少しの集中と体の常識と限界を忘れさせること、リミッターを解除するように。




