第10回
無理やりの笑顔でメイは言た。
「私はもともと本州で暮らしてたの。この島に来たのは2年前。ちょうど高等部に入学してからね。アナタも2年生よね?」
「そうだよ、まあ胸元の刺繍の色で分かるよな」
「私たちの代は『紫』、1年下は『緑』、1年上は『黄色』ね」
「そうだな、まあ俺はちょくちょく学校規定のものじゃないもの着てくるけどな」
「へぇ、この学校にも不良はいるのね。頭はいいはずなのに」
「いや、俺は小等部からのエスカレーター式だから、すんげーエリートってわけじゃないかも。あとは単純につっぱりたい年頃なのかもな。」
「小等部!?へえ、ここの島で生まれたの?ってかあんたオタクなのにつっぱるの?(笑)」
「うるせえよ……!そう、小等部からだ。クラスには俺ともう一人いたんだけど気付いたらいなくなってて、ずっと一人だった。まあ子供の頃の話はあんまり覚えてないんだ、親もいねえしな」
「親がいない…?捨てられたとか?」
「いや、それも分かってないんだ。気付いたら施設で育てられてて、普通に今にいたる。んで、この島から出たくないから必死で勉強した」
「ああ、例の島出たくない病……」
「何なんだろな、ほんとこの感覚」
「最近、私も分かるようになってきたわ。私も入学時はその研究もしてたから。実に非科学的で、非魔術的。魔術的なものは一切関わってなかったし、手がかりも掴めなかったわ」
「そうなのか。俺も自分が得意な分野から色々調べたりしたよ。何かしらの装置とか、電波とか、そういうものが飛んでるなんて話もあるんだけど、デマだった」
「そうね、毒電波が常にこの島を飛び交ってるとか、食品から出る何かの栄養素が人体に影響するとか、各分野で研究をする人間は後を絶たなかったけど、未だに原因不明なのよね」
「今じゃそれを調べる人もだいぶ減ったよ」
「昔はオカルト雑誌で色々と言われてたけど、最近は見ないしね」
「まあ、悪いことばっかりでもねえよ。空気は本州より美味いし、この島でしか取れない作物も美味い。なんだかんだ言って住めば都島ってやつだ」
「脱サラしたオッサンみたいね」
「うるせ」
笑い合う。それにしても一人でこの島に来たんだなメイは。寂しくないんだろうか?まあ、学校を首席で入学して、こんな状況でもへこたれないくらいだ。鋼のような精神か何かを持ってるのだろう。やっぱり凄いぜメイ。さぞかしこの社員の兄も相当な切れ者だったんだろうな。そう思いながら写真を見た。
「あれ?」
「うん?」
写真を見ながら俺は首を傾げる。
「俺このお兄さん、どっかで見たことあるような気がするんだよなぁ」
「ほんとに?」
「うーん、確証は持てないけど、子供の時に」
「ううん、そんなわけ、でも…」
独り言を呟き出すメイ。
「確かに、アナタは子供の頃からこの島にいたっていうのなら、可能性は無くもないわね、もっと詳しく教えてくれないかしら?」
「俺もさ、お前の力になってやりたいんだけど、昔のことを思い出そうとすると、なぜか頭が痛くなるんだよね。病院で見てもらったこともあるんだけど、原因は分からん」
「そうなの…ゴメンなさい。無理はさせられないわ」
「何か思い出したら教えるから」
「ありがとう」
メイには悪いと思った。最近のことを思い出すくらいなら何とも無いんだが。
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さて、話が少し落ち着いたところで、俺は風呂に入った。
「うわー知らないメーカーのシャンプーばっかりだな」
脱衣所からして、自分の生活との差に驚きを隠せない自分だったが、それは序の口だったようだ。まだまだ新たな発見は見つかる。
「うわ、なんか世界が嫉妬しそうな髪になるぞ…」




