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第二話 王女の序曲(オーヴァーチュア)

 飛行機が着陸態勢に入る。窓の外を見ると眼下に日本の町並みが見えた。

「どうしたのだ? サラ。そんなにそわそわして」

 隣に座った父が、不思議そうに訪ねてくる。そんなに態度に出ていたのだろうか? でも素直に答える。

「やっとお祖母様の故郷を、この目で見ることができるのですもの」

 そうやっとこの目で見ることができる。お祖母様はこの東洋の島国から砂漠の国にひとり嫁いで来た、おそらく望郷の念もあったのだろうが、小さな頃から日本という国がどのような国か聞かされてきた。その日本に父が行くということで無理についてきたのだ。

「やっと長年の願いがかなう」

 私は呟いていた。

 飛行機が無事着陸し、タラップを降りるとすごい数のマスコミの数だった。フラッシュがたかれまぶしい。にっこりと笑ってTVカメラに向かって手を振ると、さらに激しくフラッシュがたかれる。国王である父より私のほうにカメラが向いている気がするのは気のせいだろうか。




 俺はフリーライターとしてマスコミの中に紛れ込んでいた。

「ほう、写真より美人だな」

 それが、実物の彼女を見た感想だった。シーリア国王女、『サラ=ブレンダ』。明後日で二十歳になる。王位継承者第三位で、確か祖母が日本人ということで国王ともども親日家として有名だ。

 今回の仕事は彼女の暗殺。依頼人は仲介屋の真琴が調べたところによると、王国の大臣らしい。王女の進める議会民主主義に移行するとその地位を追われるので、阻止したいというところだろう。だから暗殺というのもどうかと思うが、俺としては報酬さえもらえれば文句はない。

 ちなみに依頼人として俺の前に現れたバーゼル氏は、シーリア王国の諜報機関の人間だそうだ。飼い主は国王でなく大臣らしいが。

 今回の来日は環境サミットに出席するためで、サラ王女はそれに便乗して来日したということで、国賓こくひん扱いではないので宿泊も民間のホテルだ。

 仕事のタイムリミットは明日の夜だから、時間的には余裕だなと俺はタバコをくわえた。




「あ〜あ」

 記者会見も終わりやっと部屋に案内された私は背伸びをした。やっと休める。と思っていると侍従長のセバスチャンがやってきた。

「サラ様、こちらとこちらに目を通してください。それからドレスに袖を通していただきませんと」

「ちょっと待って。首相との晩餐ばんさんまでは休めるのでないのですか?」

 セバスチャンは、「何を言っているのですか?」という顔をする。

「とんでもありません。明日の訪問先での挨拶の草稿そうこうにも目を通していただかないといけませんし――」

「ちょっ、ちょっと待って」

 セバスチャンの言葉をさえぎる。

「飛行機の中でも色々と仕事をやっていたのですよ。少しは休まないと身体が持ちません」

「はぁ、しかしそれだとお時間が」

 困った顔をするセバスチャンにダメ押しをすることにした。

「やだやだやだー! 休むといったら休むのーっ!」

 大きなソファーに寝転がり両手両足をバタつかせる。しかし、セバスチャンは冷静だった。

「お見事な駄々でございますな。まあ、しょうがありません。お昼をはさんで6時までお時間を差し上げましょう。しかし晩餐の後には草稿に目を通していただきますぞ」

 セバスチャンは呆れ顔だ。でも、基本的にセバスチャンは私に対しては甘い。ちゃんと許可はくれた。

「では、国王陛下のお側にいますので、何かあったらご連絡ください」

 そう言って退出するセバスチャンに「大好きよ、セバスチャン」と声をかけると難しい顔が少しだけほころんだ。

 そして私は、扉を閉めたセバスチャンに「ごめんなさい」と両手を合わせた。


読んでいただきありがとうございます。


サラたんの登場です。

ネタばれやりますと、駄々をこねるシーンは新潮社『コンシェルジュ』の10巻64話TokyouHolidayよりパクリです(笑

あのシーン見てサラのイメージにぴったりだったので使っちゃいました。


次回はついに王女と狼が出会います。

たぶん今夜辺りにはUPできるかと思います。


※漫画のタイトルが間違っていました。1月30日に修正です。

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