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九話

今日は二話更新


 しばらく北上すると気配を感じた。


「2人ともストップだ。敵がいる……しかも数は50以上だ」

 しかも感じたことのない気配のやつがいる。それがおそらくゴブリンリーダーだろう。


「50匹ですか……どうします?」

 セシルが言う。


「もちろん迎え撃つに決まってますわ!50くらいなら、私の魔法の範囲内ですから一気に殲滅させていただきますわ!」

 ネビルが言う。なら迎え撃たせて貰おう。


「ならネビルはもう詠唱を開始してくれ。この位置で迎撃する」

 こちらが先に敵に気付いた利点を捨てる必要はないからな。


「了解しましたわ! 我、深淵のネビルが命じる―――――」

 詠唱は開始された。これであとは時間を稼ぐだけだ。


「―――――ガァァァ!」

 魔力の動きを感じ取ったのだろう、離れていたゴブリンたちが一斉にこっちに気付いたようだった。


「セシル、行くぞ!」

「はい! ユウヤさんもお気をつけて!」


 そうセシルに言い、前線へ繰り出すことにする。


 ゴブリン共が叫び声をあげながらこちらへ向かってくる。その中に1匹異質な感じのやつがいる。

 いままでのゴブリンとは動きが違う。速いし、バラバラにこっちへ向かってきていたものが、今ではまるで列を整えたかのような動きでこちらへ接近してくる。


 ―――――なんだ、この感じは。

 イヤな予感がする。本能がヤバいと言っている。

 いくら能力を奪われたからと言って、今まで経験してきた戦闘の経験が失われたわけではない。

 

 敵が接近してくる。だが落ち着いて考える。何かがおかしい。


「おい、セシル! 何かおかしな部分はないか!?」

 慌ててセシルにも声をかける。頼む、杞憂であってくれ……。


「……ゴブリンの動きが良すぎます。ギルドで情報を収集していたときにはこんな隊列をきっちりとつけるだなんて話は聞いていませんでした」

 やっぱりか……だとするとこれは―――――。


 だが思考している暇があったのはここまでだった。


「ガァァ!」

 既にゴブリンは肉薄してきていた。ギリギリで攻撃をかわす。

 だが、そのかわした先に、まるで読んでいたかのように別のゴブリンが攻撃をしてくる。やはり指示する敵がいることは確実だ。


「簡易結界壱式!」

 とりあえず防ぐ―――――が…


 ミシィ……!

「一発でこれか、貰ったら半端じゃすまないぞ!」


 撤退をするか? と少し考える。だが、相手の速さを考えるに、背を向けた途端に一斉に襲い掛かってくるだろう。


「俺にも慎重さが足りなかった、くそ!」

相手を纏めているのは恐らくゴブリンリーダーではない、さらに各上に相手だ。


だが、まだ相手のリーダーらしき個体は、こちらには攻めてこない。

ならばそのうちにこちらの魔法を完成させてぶち込むしか勝機はない。


「セシル!下がってネビルを守っていてくれ!」


「ユウヤさんはどうするんですか!?」


「数が多いうえに強い、先手を打つ!」


 そう言って敵陣に自ら突っ込む。使うのは呪縛の結界『カース・バウンズ』だ。

 まずはかなり出血する必要があるが……。敵陣に突っ込めばいやでもそうなるし、敵陣に自ら突っ込むことは、俺に攻撃が集中すると言うことであり、後ろの2人を守ることにも繋がるのだ。


「ぐぅぅぅぅぅ……」

 痛い。相手の攻撃力が前より半端なく上がっているのがわかる。全方位結界の上からの攻撃なのに、すぐに血だらけになってしまう。


 だが、突っ込んだかいがあって、後ろの2人には敵が行っていなかった。

 そして十分の量の出血をしたのを見計らって、結界を発動する。


「代償は我が血! 呪縛の結界『カース・バウンズ』!」

 これで相手の動きを止めて最後に呪文を完成させ当てれば勝てる。

 そう……油断してしまっていた。


「ほう……我が配下の動きを全て止めるとはやるではないか」

 突然声をかけられた。相手は……


「我の名前はゴブリンロード、あいにくだが我の動きはこの程度の結界で止めることは出来ぬ」

 嘘だろ!? かなり弱体化しているとはいえ、かなりの血を代償にした今使える結界の最高レベルだぞ!?


「なら、魔法で吹き飛ばすだけですわ! 食らいなさい、【ハイ・クロス・エクスプロージョン】!」

 どうやら魔法が完成していたらしい。今回は不意打ちで完璧と言えよう。いちいち俺に宣言してからでは避けられてしまう可能性が高かった。


「瞬歩!」

 ネビルの声が聞こえた瞬間に、全力でその場から離れる。食らったら身体が残る気がしないくらいの爆発になるからな。


 ―――ドゴォォォォォォ―――

 離れた瞬間に大爆発が起こる。前回の魔法よりもさらに威力がデカイ。思ったんだが、ネビルって優秀どころか、最高峰クラスの魔法使いなんじゃないだろうか。

 自分がいたいろんな世界でも、こんな大爆発を起こせる魔法使いはなかなかいなかった。


「はっ!あの程度の敵なんて私の敵では「そうだな、あの威力は少々予想外だった」

 !?いつの間にかゴブリンロードがネビルに肉薄していた。

 あれを避けたのか!? いや、少し黒くはなっている。当たった上で耐えたのだ……。


「本式結界壱式!」

 とっさに結界を張る。簡易結界より硬いこの結界なら……!


―――――ガキィン!

結界とぶつかった音が響く、あれでは恐らく数発保つまい。


「ひっ……」

 ネビルが怯えている。普段強気でも、あんなふうに固まってしまうこともあるんだな。

 まあここまで各上の相手と戦ったことがある人なんてそうそういないだろうし当たり前の話ではある。


「瞬歩!」

結界が保つ間に、ネビルとゴブリンロードの間に立つ……ことが出来ればいいのだが、瞬歩のコントロールがきかないため、ネビルとゴブリンロードの距離を話すことを最優先で考える。


「くらぁぁぁぁえぇぇぇ!」

 とった行動は、瞬歩で敵に突進をしかけるという無茶な行動だった。しかし、相手もそれは流石に予測してなかったのか、避けるのが間に合わなかったようだ。


「チッ」

そう舌打ちをして、ガードをするゴブリンロード。


 そこに瞬歩で勢いだけつけた身体で突進した。吹き飛ばされるゴブリンロード……と俺。


「ぐっ、なかなかやりますね」

 余裕で耐えたくせに何言ってやがる。こっちは勢いよく相手にぶつかったもんだから右腕が確実に折れている。


「ユウヤさん! 大丈夫ですか!? ヒーリング!」

 すぐさまセシルが駆け寄ってきて回復をしてくれる。


「回復はいい! それよりネビルを連れて街へ逃げてくれ!あのショック状態のネビルじゃ戦えない! 頼む!」

 魔法がきかなかった恐怖、今まさに殺されるんだというところにいた恐怖、そんなものを味わってすぐに行動できる人間はなかなかいないだろう。


「ユウヤさんはどうするんですか!?」

「俺は……!?」

 気づいたら背中から胸にかけてゴブリンロードの持っていた剣が貫通していた。


「あまり我のことを忘れないでもらおうか」

 まずい、これはまずい。


「セ……セシル、ネビルを、頼んだ」

 そうして貫通した剣を抜くために思いっきり全身した。身体中が痛みで支配される。


「でもユウヤさんが!」

「黙れ! このままネビルを殺すつもりか! パートナーなんだろう? 守ってやれ!」

「は、はい……助けを呼びにくるまで絶対に、絶対に死なないでくださいね!?」

 

 流石の強情娘でも、自分が組んできた仲間も戦えないとなると退いてくれた。これでゴブリンロードとの1対1。


「ぜぇ……はぁ……」

 セシルがネビルを引っ張っていくのが見える、とりあえず一安心である。だが……。


「仲間を逃がしたか、だが助けが来てくれるまでお前は無事でいられると思っているのか? 既に意識を保つことすら危ういというのに」


 事実その通りである、もともとゴブリン達の動きを止めるのに出血をしすぎていたし、ゴブリンロードの攻撃で恐らくだが片方の肺に大穴が空いている。


「……ばーか、お前は一番やってはいけないことをしてしまったんだよ……」

 何を言っているのか理解出来ていないゴブリンリーダー、まあ当たり前だが。


 後悔させてやる。そう思いつつ、ユウヤは意識を手放した……。


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