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六話

 と、いうわけでギルド再び。


「はい、ゴブリンの討伐15匹。確認いたしましたので報酬金が45000マナになります」


 受付から報酬を貰う。どうやら、この世界の金は魔力で作られているようだ。財布の代わりに水晶玉みたいなものを使うらしく、俺はまだ持っていないのでセシルに受け取ってもらった。

 っていうか金受け取るのに水晶玉必要とか、また金が必要じゃねーか。ホント金ないと生きていけないとか世知辛いよな。


 あと、ゴブリンの群れについての報告もした。ギルドでも、何が起こっているのか把握しきれていないらしく、注意勧告がされることとなった。

 有志の方には是非ゴブリン狩りを行ってほしいとのこともある。それを聞いたネビルが、「私なら100匹でも余裕よ!」とか言っていたがスルーした。


「まずはお金を分配しましょうか。1人15000マナですね。ユウヤさんは水晶玉を持っていないみたいですし、まずは雑貨屋へ行きましょう」

 と、次の行動先を決めるセシル。


「地理に疎いしどこに何があるかわからないからありがたいけど、付き合ってもらっていいのか?」


 というか雑貨屋に置いてあるのかよ水晶玉。魔法具店とかそういうところにあるものだとばかり思っていた。財布とかと同じ感覚でいいのだろうか、よくわからん。


「もちろん、ここまできたら付き合いますよ! ……というか是非付き合いたいですし……」

 なんか後半はよく聞こえなかったが、とにかくありがたい。


「助かる。で、ネビルもいいのか? 正直案内は1人いれば十分だし無理して付き合ってもらう必要はないが」


「ついて行くわよ! というかセシルと二人きりになろうったってそうはいかないんだからね!」

 そんなつもりは毛頭ないのだが。だれでも案内をしてくれれば助かるし。


「あーじゃあお願いするよ。水晶玉の良し悪しもよくわからないから選んでくれるとさらに助かる」

 というか違いがあるのかすらわからないが。でもまあ雑貨屋に売っているようなもので財布と同じような感覚ならいろんなのがありそうだ。正直考えるのがめんどくさい。


「選んでいいんですか!? では、ユウヤさんに似合うのを選びますね!」

 と、意気込むセシル。シンプルなのでいいよー、安いのでいいよー、と言いたくなるが頼む立場で贅沢は言えないだろう。


「仕方ないわね、そこまで言うのなら選んであげるわ、まああなたには安物で十分だと思うけれど」

 そこまでって言うほど言った覚えはない。でも安物をさくっと選んでくれたら助かるので黙っておく。


「よろしく頼むよ。じゃあ行こうか」

 そうしてセシルを先頭に雑貨屋へ向かうユウヤたちであった。


 


「ここが雑貨屋の【ミシェル】です。この街一番の品ぞろえの雑貨屋さんなんですよ!」

 やたらとテンションの高いセシル。やはりどこの世界も女性は買い物が好きなんだろうか。俺は正直即買い物終わるタイプだからよくわからん。


「じゃあよろしく頼むよ。俺は俺でいろいろ見て回るから」

この世界にどんなものがあるのか一応気にはなる。役に立ちそうなものがあったら買っておくつもりだ。


「はい、任せておいて下さい!」

「任されましたわ、まあ似合う安物を探してあげますわ」

 微妙にネビルの言い方が気になるがまあ気にしない。俺はスルーできる大人なのだ。



 そうしていろいろと見て回る。

 まず異世界へ来た時の問題点である、文字についてだが、読める。

 なぜ読めるのか、そもそもなぜ会話が成り立つのかは分からないが、いろんな世界を回って、読めなかったことも会話が通じなかったこともない。おそらくあのくそ上司がなにかしらやっているのだろう。助かるが助けてもらうと腹が立つ不思議。


 ふむ、売っているものは本当に雑貨だな。望んでいた武具などは流石に置いていないようだ。1つの商品を手に取ってみる。

 時計だ、大きめの懐中時計のようなものだ。時間がわかるのは助かるので地味に欲しい。デザインが気に入ったとかそういうのはないが。


「店員さん、これいくら?」

 カウンターに立っていたお姉さんに聞いてみる。安かったら欲しい。


「お! お客さん目が高いね! それはエルフとドワーフが共同制作した珍しい時計でね。今ならたったの20万マナだよ!」

 たけぇ! 話にならないくらいたけぇ! ゴブリンを70匹くらい倒さないといけない数である。しかも1人で。3人なら200匹だ。


「すまん、今日この街に来たばかりでな、あんまり手持ちがないんだ。また機会があったら買わせてもらうよ」

 多分買わないが。


「そうかー、まあその時まであるかはわからないけど、また見に来て下さいね!」

 いい笑顔で応える店員。いい店員だ。どこかの世界のどこかの深夜のコンビニの店員あたりに見習ってほしい。



 そんなこんなでぶらぶらといろいろ見て時間を潰す。他に欲しかったのは筆記用具やバッグなどくらいだったが、差し迫って必要なわけではないから買わないことにした。とにかく食事と寝るとこと武具が必要なのである。


「ユウヤさんユウヤさん、この水晶なんてどうですか?」

そうこうしていると、セシルが1つの水晶玉を持ってやってくる。


「ほう、小さめで持ち運びしやすそうでいいじゃないか。で、それいくらだ?」


「貧乏なあなたでも買える8000マナですわよ」

 ネビルが言う。……ん?


「8000……だと?」


「そうですわ、これくらいの安物でちょうどいいでしょう?」

 待て待て、俺の今の手持ちが15000だ。財布を買うつもりで来たら、所持金の半分以上が必要になるとかなにそれおかしい。


 だが、おかしいことはまるでないかのように、セシルは、

「本当はもっと良いものがあったのですが……ネビルさんがこれくらいでいいと言うのですよ」

 とか言う。これはホントに安いほうなのか? 嫌がらせとかではなく?


「装備すら買えないところを見て、お金がないのは明らかにわかりますからね、あなたにちょうどいいのを選んで差し上げましたわ!」

 とネビルは言う。


「あ……あぁ、ありがとう」

 正直言葉が出なかった。物価や通貨の価値がまるでわかっていなかったのはあるが、まさかここまで予想と違うと思っていなかった。

 ぶっちゃけると買いたくないのだが……。


「水晶玉を持ってないとこれからもギルドの報酬が受けられませんよ?」

「えぇ、安物でもいいから持っておくことをお勧めしますわ」


 と2人に言われては断ることも出来ず、購入することになった。


「はい、お買い上げありがとうございます!また来て下さいね!」

 店員の素晴らしい笑顔が少し憎たらしく感じてしまった。


「はい、水晶玉の代金を差し引いた金額をこちらに入れておきましたので」

 と言われて水晶玉を受け取る。


 透明度はそこまででもないが小ぶりで持ちやすく、悪い品ではないことはわかる。

 が、未だに金額のショックからは抜け出せない。


「ああ、ありがとう……これじゃまだ武具は買えないな……」

水晶玉で8000もするのだ、まともな武具が7000で買えるわけがない。そもそも食費と宿代も必要なわけだし。


「なら、明日もこのパーティで狩りに出かけませんか?さっきネビルと相談して決めたのですけど」

「ええ、壁役、補助役、そして殲滅役の私がいるこのパーティはなかなかバランスがいいと思いましてね! それに私の『エクスプロージョン』の範囲内にいて、それを避けられるくらいの実力者なら申し分ありませんしね! ホントは結界で防ぐものだと思いましたが」

 

 あんなものが簡単な結界程度で防げるわけがない。俺を過大評価しているのか、ただ無茶ぶりをしたいだけなのか……多分後者だな。


「まだこの街に来て間もないし、他に知り合いもいないから非常に助かるが……いいのか? 他のクエストを受けたりもするんじゃないのか?」

 実際、セシルと初めて会った時は別のクエストをしている最中だったようだし。


「他のクエストも重要ですが、今はゴブリンを狩ることが最優先だと思うので。ギルドでさえ把握しきれていない謎の群れ。放っておいたらもしかしたら街にまで被害が出てしまうかもしれません。なので少しでも街の人の役に立ちたいのです」

 セシルはそう言う。なるほど、真面目なんだな、と思う。天然でよくわからなかったが、人のことを考えるセシルは本当に真面目に考えているということがよくわかった。


「まあ私に任せておけばゴブリンの群れなんてたやすく撃破できますしね! せいぜい壁として明日も役立ってくださいませ?」

 言い方はきついが、今日の戦いで少しはネビルにも認められたのだろうか。最初に会ったころの敵対されているような感じは受けなくなった。イヤミは言われるが。


「そうか、2人がいいなら俺も異論はない。明日もよろしく頼む」


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