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SAMURAIブルーに恋をして  作者: 柏田華蓮
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40 キミの矛盾を(4)

「お世話になります!」

「「しゃっす」」


 夏合宿が始まった。


 まだ日が出て間もない朝5時。部員達はサッカー部の寮の前で軽くミーティングをしてから、専用のバスに乗り込んで出発した。

 私は眠くて重い瞼を擦りながら、臨時マネージャーって事で参加していた。冴えない頭を何とか動かして、朝のミーティングは影に隠れて見守り、部員とは別に丹羽先生が運転する車に乗って後を追う事になった。

 その道中は結構波乱があった……とだけ、伝えておこうと思う。


 本当は気を遣ってもらったのかもしれない。出発する前に数えた八十人余りの男子部員に、一緒のバスに乗るんだ、と男の子慣れをしていない私は怯んでいた。本来なら経費節約で一緒のバスに乗るところだけど、何せこの寮に来た理由も理由だし避けたい気持ちがあった。

 出発してから三時間ちょっと走ると、山間部に位置する今回使用する合宿所に無事到着した。


 合宿は一週間の予定になっていて、その後一日お休みを入れるとすぐに、他校との練習試合など遠征も予定されている。

 一日のスケジュールはかなりのハードだ。

 朝の六時に起床。

 合宿所の各割り当てられた箇所の掃除をしてから朝食。

 八時には軽くアップを済ませて、走り込みと筋力アップのトレーニングを数セット。

 昼食を食べて、パスとシュート練習。

 それから軽く休憩を入れて、戦略を立てたチーム戦。

 夕食を食べて、自由時間……の予定を繰り返していく。


 何とも分刻みなスケジュールをこの大人数が、それぞれこなしていくのかと思うと、尊敬の眼差しを彼らに向けたくなる。

 この環境に耕大くんが身を置いている現実に、本当にすごい覚悟なんだと実感させられる。


 部員達が合宿所の管理人さんたちに挨拶をしている傍ら、私は別の任務を与えられて、部屋の割り振りを広めの紙に大きく書き出す作業をしていた。

 出発前ギリギリになって、丹羽先生が三日間は他の部活との兼ね合いもあって、大部屋が使用出来ないとビックリ発言をしたからだ。


「早めに言ってくださいよ!」

「すまん、すっかり伝え忘れててさ! ハハハ」


 丹羽先生はごまかしていたけど、本当はたぶん違う。

 マネージャーさんたちの誰かに任せたのだろうけど、連絡が漏れて出来上がっていなかったんだと思う。

 試されてるなって、マネージャーさんたちの視線を朝に感じたから。


 早速の洗礼とでも言うか……、この後のスケジュールに穴を開けないように、話を聞いてからすぐに袖を捲くって作業に取り掛かった。

 四人で一部屋。黙々と名簿とチームランクが記入された表を照らし合わせながら、彼らの名前を丁寧に書いていく。

 ある意味、儀式で形式的な挨拶が済むと、荷物の整理をして、練習に取り掛かる手筈になっているから急がなきゃいけない。


 マネージャーさん達もサッカー部に所属となっているからか、挨拶の列に参加して私の作業には気付く事は無い。

 まぁ、臨時のマネージャーだから彼女達の補助でもある訳だし、気に触れないように出来るだけ目立たず、手の届かないところをフォローしていこうと思った。


 けど目立たないなんて、そんなこと考えて見れば不可能だと、想い至らなければいけなかったのかも知れない。





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