38 キミの矛盾を(2)
え……?
「え? じゃなくてさ。丹羽さんが知ってて俺が知らないって」
悔しいじゃん、と不貞腐れて顔を背けて言う彼に、可愛いと言う気持ちが浮かび上がる。
何なんだろう、これ。
思わず手を伸ばして、サラサラして腰のある髪を軽く撫でてしまっていた。
「……、」
「あ、ごめん」
「いや、別に良い」
やり取りをしながらも、撫で続けてしまいたくなる感触にうっとりしてしまう。
しばらく遠慮なく撫でていると、もぞもぞと耕大くんが動いて、膝に顎を置く姿勢で私を見上げた。
「…寝そう」
「え。ごめん、ちゃんと止める」
名残惜しくも手を引っ込めて、きちんと話さなければと姿勢を正す。
耕大くんは変わらずの姿勢だけど、視線は下に下がっていて本当に眠そうだった。
「気持ち良くて、でも」
聞きたくて……、
ふわふわとした口調に、いつものクールさを感じ無い耕大くんを覗きみると、微かに機嫌の良さを顔に浮かべていた。
初めて見る彼の表情とストレートな言葉に、心が温まるような恥ずかしい様なくすぐったい感覚に私の言葉が詰まる。
――惚れた方が負け――
だけど、彼が見せる一瞬一瞬の姿にいつも恋をしている。
ずるいな、と思うけれど彼の色んな顔を独占したい私こそ、自分勝手でずるいのだからおあいこかもしれない。
眠気に葛藤する彼を見ながら、あのね、と声にした。
「私ってさ、勉強はある程度出来るけど、自分事になると点でダメなの。全て話せるわけじゃないの」
「……?」
「小さい頃の記憶、掘り出すのに時間かかるから、小出しだよ?」
それを言うと、彼は顔を上げて
「教えて」
"私"を探るように目を凝らして短く頷いて答えた。
難産過ぎてだめだった。
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