風吹く丘
稚拙な文章で恥ずかしいのですが、読んで少しで楽しんで頂けたなら幸いです。
その丘にはいつも強い風が吹いていた。
空には風の道があり風霊がつねに丘を駆け抜けるため、樹木は根付かず、草だけがただ必死に大地にしがみつき強風に耐えているばかりだった。
その丘を決まった時刻に歩く人影があった。
マントを羽織フードを深く被り飛ばされまいとそれらを堅く握りしめ、強風吹きすさぶ中を通りすぎていくのだ。
その姿を丘の風霊は高い空の上からいつも見ていた。
風霊は何よりも強く速く高く時には低く駆け抜けるのが好きだった。そのため丘には木々だけでなく、獣すら寄り付かなくなり背の低い草だげか生えるのみとなってしまった。
風霊はそんなことは気に止めることなく駆け抜けて行く。
だが、ある時から丘を通り行く者がいた。
どんなに強い風が吹こうとも毎日のように丘を通り行くのだ。だんだん風霊は、その者が気になりだした。一体どのような人物なのだろう、何故、獣も通わぬこの地を行きすぎるのだろうかと…
せめて顔だけでも確かめたいと近くを駆け抜けてみるが、風が巻き起こり、顔を見るどころかよりいっそう身を縮めフードとマントを押さえるばかりだ。
もっとゆっくり優しく吹き抜けようとするが上手くいかなかった。
風霊とは常に駆け続け、決して止まる事なく巡る存在だ。
あと少しだけ、あと少しだけと風霊は歩みを遅らせながら、毎回その者が通る度、周りを巡りつつその顔を見ようと試み続けた。
それに伴い丘に吹く風は日々少しづつその激しさを弱めて行った。
さあ、もう少しだと今日も風霊は、人影に近づいて行った。
風の弱まった丘を歩くその人はフワリを起こった風に頭を上げた、その拍子にフードの中に隠された顔が現た。
ついに風霊はその顔を見る事が出来て嬉しさのあまり覗き込むと、フードの下には十代半ばであろう子どもの顔があった。
風霊は、子どもと目が合った気がした。
ああ、やっと君の顔が見れたよと微笑んで、うっかり駆けることを忘れた風霊は霧散していった。
そして、その日以来その丘では二度と風が吹く事はなかった。
子どもが時折、丘の上で何かを探すかの様に立ち止まる姿を見かけるようになった。
読んで下さり有り難うございます。
もし、おかしな所を見つけたら指摘して頂けるとありがたいです。