第76話 深夜の来訪者
みなさまあけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
PCの故障などあり昨年は全く更新ができず申し訳ございませんでした。
春になり、孫堅軍との軍事演習を次は孫堅領で行うことになった。第一回の参加者は。俺、桃香、愛紗、鈴々、星、悠煌、朱里、藍里、水晶、風とした。本当は全員連れて行って水軍の扱いを覚えさせたいのだけど、さすがに領内の安全を最優先にした。桃香も本来なら連れていくべきじゃないのだろうけど、行くと本人が譲らなかった。
演習を行う地である抹陵へ夕方に到着すると、炎蓮や雪蓮たちが出迎えてくれた。
「久しぶりだな! 一刀君たちも元気にしてたか? あそこまで豪華じゃねえが、それなりの天幕はつくった。ゆっくり休んで明日からよろしく頼む。」
「2度めの演習が遅くなってごめんね~。前回は圧倒されちゃったけど、揚州の戦い方は騎馬軍だけじゃないってところ、見せてあげる!」
炎蓮と雪蓮にそう言われながら天幕を案内された。豪華で、ゆっくりと休むにはとても良さそうな場所だった。馬を休ませる場所もちゃんとあるし、さすがというほかない。
「ありがとう。明日からの演習がとても楽しみだったんだ。こちらこそよろしく。」
「久しぶりに皆さんと会えるし、炎蓮たちの武将とも、もっと交流できるからとても楽しみだったんだよね。無理言ってついてきちゃった。」
「領内は安全でしょうし、私や鈴々たちがいますので道中も危険は少ないですが、桃香様と一刀さんになにかあってからでは遅いのでできれば来ていただくはなかったですね……。」
桃香のつぶやきには愛紗がそう応じた。そうなんだよな……。2人がまとめて欠けたら大変なことになってしまう。
「武将たちの紹介は明日やろう。今晩はゆっくり休んでくれ。」
「ありがとう。お言葉に甘えてゆっくりさせてもらうよ。」
夕飯で出た魚料理もとてもおいしく、食後のお茶を飲みながら、そろそろ寝るか、などと考えていたら、外がざわついていることに気づいた。なにかあったのだろうか。
「一刀さん! 私たちとお話したいことがあるということで、蓮華さんがこちらに来ていらっしゃいます!」
愛紗からそんな話を聞かされ、食後のお茶を吹きかけた。蓮華がここに……? なんの用事だろうか。
「失礼のないように丁重にもてなそう。皆を集めて。」
「入れていただき、感謝する。既に会っている方もいるが、改めて自己紹介をさせてもらおう。私は孫権、字は仲謀。真名は蓮華という。以後よろしく頼む。」
そんな流れで全員と真名の交換をし、なんの目的で来たのかを聞くことにした。」
「で、いくら自分の領土だからといって武器も持たずにいらっしゃるのはいささか不用心ではありませんか? 何のためにいらっしゃったのですか?」
風がそう聞いた。そういえば武器はなにも持っていない。治安はそれなり以上にいいのだろうけど、確かに軽率な行為だ。
「相手に無理なお願いをするときに、武器を所持して向かう馬鹿がどこにいる?」
「無理な、お願い……?」
「ああ。はっきり言ってしまおう。冥稟からそちらの領土の様子はある程度聞いているが、ここはそこまで治安が良くない。まして、この軍事演習を行うことに懐疑的な将も少なからずいるんだ。好意的な将ももちろんいるし、私もその一人だが、全員が全員そうではない。万が一のことがあって、兵の一人も死なないように、万全の布陣をしいてほしい。
頼む……!」
蓮華はそう言って深々と頭を下げた。冥稟を送ったときには頭を下げずに礼を言われたけど、今は下げている。人がいるいないを分けているという点もあるのだろうけど、こういう感情じゃなく理性で動くタイプは本当にやりにくい。
そして自分たちの内部事情を多少とはいえ話してしまうというのもすごい。それだけ、この演習で何かが起きたときの危険性も理解しているのだろう。
「鈴々、今聞いた話は他言無用にするのだぞ? 絶対にだ。」
「さすがにわかってるのだ……。しかし、こんな話を鈴々たちにしていいのか?」
「構わない。何かがあってからでは遅い。問題が起きることは絶対に防がなければいけないのだ。我々だけで防ぎきれればそれが一番ではあるのだが、内部の事情を鑑みるに、それは難しい。君たちに直接頼むのはなんとも情けない話ではあるのだが、いまのところ方法はそれしかない。本当に申し訳ない。」
愛紗が鈴々に念を押したけど、さすがに鈴々もわかっていたらしい。そして蓮華は改めて同じ話をした。桃香や俺、将や軍師たちが死ぬことは防げるだろうけど、兵全員を守るのは確かに難しい。迂闊に殺されてしまうと外交問題というか、俺たちの民衆や兵から孫堅への怒りが蓄積される大問題につながりかねない。確かに危ない。
「忠告ありがとう。おかげで鈴々や星、悠煌に共有されてるから、万全の布陣を敷いておくよ。」
「一刀さん、私はどうなのですか?」
「愛紗は俺と一緒に本陣にいるわけだから、まあ大丈夫でしょ。」
「愛紗は相変わらずだな。本陣には危険は少ないだろうが、お主がいれば一刀さんと桃香様は大丈夫だろう。」
星がすこしからかうような口調でそう言った。本陣の守護は、女媧を除けば愛紗一人か……。愛紗ならば大丈夫だろう。
「我々に伝えたいことはこれで全部ですか?」
「ああ」
水晶の問いに蓮華はそう答えた。
「ならば、悠煌、星。蓮華さんを本陣まで送ってあげてください。武器もないのに何かあっては大変なことになってしまいます。」
「承知。」
「いや、さすがに一人で帰れる。大丈夫だ。」
一悶着あるかなと思いつつ外へ出ると、天幕から少し離れたところに祭さんと冥稟がいるのが見えた。マジか。
「散々認識はしておりますが、先が読めることほど恐ろしいことはありませんな。」
「な……。祭!? 冥稟!?」
星がおどけた様子でそう言い、唖然とした表情の蓮華の口を悠煌がふさいだ。
「すみません。大声を出すのはあまりよろしくないかと」
「そう、だな……。ありがとう。」
「いえ……。道中、お気をつけて。」
蓮華が俺たちのところへ来ることも、冥稟にとっては予測済みということなのか、怖すぎる。さて、あとはゆっくり休んで明日に備えよう。




