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7 展示会

 壁画の傑作を見届けてからしばらく佐倉と会う機会を失ったまま会社での僕は展示会の準備で慌ただしくなった。営業部では部長の不祥事で慌ただしさに加えて指示系統の不備と急な取引先の引き継ぎでパニックに陥っていたのだ。結局部長は退職。解雇されたのだ。それに伴って僕の上司は出張三昧となった。いくら佐倉に関心を寄せていてもそのことに集中することは難しかった。恋愛感情がこれほどあっけなく自分の中で萎んでいくとは思わなかった。そんなものなのかもしれない。佐倉は人気者。会いたくても会える相手ではなかった。しかし、僕は展示会で脳天に落雷を食らったような衝撃に打たれた。佐倉の上司の登場だった。

 展示会の初日は盛況だった。新しく取引を始めたバイヤーなどの来社でいつもより賑やかだった。そんな新規取引先の中に佐倉がいた。

「おっ、蒲田、元気だった?」佐倉は相変わらずだった。佐倉が勤めている店が取引先になっていたとは知らなかったので驚いた。しかし本当の驚きは佐倉と一緒にいた女性だった。

「はじめまして。鈴木です」佐倉と一緒に現れた美女は営業部員の男たちを魅了した。僕も魅了された。姓は平凡だが見栄えは非凡。非凡どころか超一級品だった。

「蒲田ぁ、もしかしてうちのマネージャーに惚れたね」佐倉が僕の元にわざわざやって来た。

「すごい美人だな」と僕が言うと佐倉が「婚約者がいるけどね」と言った。

「婚約者!」僕は猛烈に残念がった。

「でも破棄したかも」と佐倉が言った。

「そうなのか」僕が聞くと佐倉は笑って頷いた。

「でも好きな人がいるみたいだぞ」佐倉は嫌なことを言った。

「なにぃ!どこのどんな奴だよ」と僕が聞くと佐倉は「マネージャーが惚れちゃった相手に今日会うんだよね」と答えた。佐倉は僕の顔を見て面白そうに笑った。まさかその相手が自分の上司だとはその時には気付かなかった。

「なんでお前が会うんだよ」

「女から直接好きとは言いづらかろう。だから私が間を取り持つのだよ。私は愛のキューピットだぞ」と言って喜んでいた。まったくおかしな女だ。しかし一度冷めた僕の恋愛感情は佐倉を求めて息を吹き返した。


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