朝御飯ならよかったのに
前違うサイトにのせた初めての作品です。
国語の教科書に載ってる話よりも短い超短編です。
「いただきます」
誰に言っている訳では無いのだが、やはり習慣というもので、これを言わないと何か落ち着かない。
僕の目の前には、いつもと変わらない頑丈そうなこげ茶色の木製テーブルがあり、その上には、五分前に炊き上げられ、陶器の茶碗に入れられ、湯気のたっているご飯と、昨晩の残りの、同じく湯気のたっている野菜炒めと味噌汁がある。
僕は箸を右手に持ち、野菜炒めに手を伸ばした。
箸で野菜をつまみ、口に運んだ。
二、三度咀嚼すると、思い出したかのように左手にご飯の入った茶碗を持ち、口の中にかきこむ。
左手の茶碗を置き、そのまま手を右にずらし、味噌汁を手に取り、口元に近づけ、汁と一緒に細かい具も飲み込む。
この一連の動作を何回も休み休み繰り返し、きれいに全てたいらげた。
「ごちそうさま」
寝起きのぼやけた頭に血が巡ってきた。
僕はこれで今日も頑張れる気がしてくる。食は素晴らしい。
歯も磨いた。服も着替えた。顔も洗いなおして、カバンも持った。
さあ、今日も元気に学校へ向かおう。テレビの前に置いてある電波時計を見る。そして気づいた。
火曜日 PM 1:20 気温 23度
「ふう……遅刻だ」
じっくり食べ過ぎた。