第22話
「おい、入れ替わったってどういうことだよ!」
少し怒り気味に、というよりはあまりの事態に余裕をなくした蓮が不可に詰め寄る。しかし、ひよりの声で怒鳴っても迫力が出ず、どこか可愛らしさが勝ってしまっていた。
「そのまま見ての通りよ。魂の座標を入れ替えたの」
全く悪びれる様子のない不可に対し、ひよりは自分の大きな体を持て余しながら、あわあわと二人の様子を見守ることしかできない。
「まぁまぁ大丈夫よ! この不可ちゃんにかかれば戻るのも一瞬よ!」
不可は胸を張り、ドヤ顔で言い放った。
「よくあるじゃない? 入れ替わりネタで戻るまでに時間がかかって、その間にアクシデントが……なんて展開。でも残念ながら、天才な私にかかれば戻る装置も一緒に搭載済みよ!」
「……はぁ、そうかよ」
蓮が深いため息をつき、ひよりは「よかったぁ……」と目に見えて安堵の表情を浮かべた。
「じゃあ、とっとと戻せ」
蓮に促され、二人は再び狭い機械の箱の中へと入る。
「わかりましたよー。実験は無事成功したし、先輩たちありがとね! じゃ、戻しちゃいますよー!」
不可が軽快な動作で「戻る」と書かれたボタンらしきものを押し込んだ。
……。
しかし、何も起こらない。バチバチという電気の音も、あの浮遊感もやってこなかった。
「あれ? なんで?」
不可があわあわとボタンを連打し始める。だが、機械はうんともすんとも言わない。痺れを切らした蓮が、箱の中から声を荒らげた。
「おい、大丈夫なんだろうな!?」
「いや……大丈夫、じゃないかも……」
不可の恐る恐る放った一言に、「はぁ!?」と蓮が箱から飛び出した。ひよりの方もパニック寸前で、蓮の大きな体を揺らして狼狽している。
「えっと……とりあえず、放課後までには絶対直しておくから……!」
不可が冷や汗を流しながら言い訳を始めたその時、無慈悲にも昼休みの終わりを告げるチャイムが校内に鳴り響いた。
「授業が始まる! とりあえず教室に戻らないとダメですよ、先輩たち!」
「ちょっと、待て! このまま行けるわけ――」
不可は強引に二人を教室から追い出しにかかる。ひよりが「えっ、不可ちゃんは授業どうするの? 先生に怒られるよ!」と心配して声をかけるが、不可は不敵に笑った。
「もう先手は打ってあるから大丈夫よ!」
ガラッ! と勢いよく教室の扉を閉められ、二人は廊下に放り出された。
静まり返った廊下で、二人は無言で見つめ合う。
「……どうしよう、蓮くん」
「……あぁ。だが、ここにいても始まらない。バレないようにやり過ごすしかないだろう」
二人は意を決して、自分たちの教室へと向かって歩き出した。




