第19話
また数日が経っていた
蓮は再び、担任の綾瀬先生から「科学準備室にプリントを集めて持ってきてくれないか」と頼まれた。日直でもないのに、なぜか俺ばかりに雑用を振られることに納得はいかなかったが、特に反抗する理由もない。
放課後、クラスのプリントをまとめて持ち、科学準備室の前に着いた。
そして、また前と同じように、綾瀬先生の怒鳴り声が聞こえてくる。
「おい、俺のマグカップ改造しただろ!!」
中から怒っている声が聞こえる。
「えー、めっちゃこれ良くない!?」
まただ。というか、マグカップを改造とは一体なんだ。蓮が不思議に思っていると、またもやガラッと扉が開いた。
そこから飛び出してきたのは、前回と同じ、白衣を着た黒髪おかっぱの女の子だった。
「おい!今度は逃がすか!」
綾瀬先生の声と共に、走り出した女の子。それを見た綾瀬先生は、扉の奥から顔だけ出して、蓮に言った。
「望月!あいつ捕まえてきてくれ!」
(なんで俺が)
そう思いつつも、蓮は反射的に走り出していた。手に持っていたプリントを綾瀬先生に渡し、彼女の逃げた方向に追いかける。
階段を降り、廊下を駆ける。前にいるのは見えるのに、距離がなかなか縮まらない。女の子の逃げ足が速すぎる。
蓮は弓道部で普段から鍛錬を積んでいるにもかかわらず、全く追いつけないことに悔しさを感じた。
しかし、前の女の子は足は早いが、体力は当たり前に蓮の方があったらしい。徐々に、その距離は詰まり始めた。
別棟につながる、外の渡り廊下。あともう少しで捕まえられそうとしたところで、女の子が前方にいた男子生徒二人組に叫んだ。
「陽!月!たすけて!」
その声に振り向いた男子生徒のうち、一人は蓮の前に立ちふさがり、もう一人は女の子を自分の後ろに庇うような形になっていた。
蓮の前に立った生徒は、落ち着いた声で尋ねた。
「不可に、なんの用ですか」
蓮は少し息を整えた後、状況を説明した。担任に頼まれ、逃走した生徒を捕まえに来たこと。
状況を理解してくれたのか、前に立っていた生徒は女の子の方を向き、言った。
「不可、綾瀬先生に謝りに行くぞ」
「えー、私、良かれと思ってやったのにー!」
不可と呼ばれた女の子は、不満そうに声を上げる。
庇っていた男子生徒が、蓮に向かって頭を下げた。
「先輩、不可が迷惑をかけてすまない」
その横で、不可と呼ばれた女の子と、陽と呼ばれた男子生徒が話し込んでいる。
「不可ちゃんつぎはなにしたのー?」と陽が問いかけると、
不可は「最強アイテム作ったんだよ!」と胸を張った。
陽がそれに「すげー!最近アイテム!?どんなの!?」と目を輝かせている。
その光景を、月と呼ばれた男子生徒は、やれやれとでも言うように深いため息をついていた。
「綾瀬先生のところに、俺らもついて行きます」
月はそう言い、蓮を含めた四人で、科学準備室に戻ることになった。




