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第18話

あの山登りから数日が経っていた。

理事長であるルナの宣言した花見山登山は、急な出来事であったが、大きな混乱もなく終わり、学園は日常を取り戻していた。

だが、蓮の日常は、少しずつ変わっていっていた。

あれからひよりは、たまに家に食事に来る関係になっていた。まだ母はひよりに会っていないが来ていたと知るとなんだか嬉しそうにしているしかれんもだいぶ懐いているようで、次はいつひよりお姉ちゃんが来るのー?と聞いてくるほどだ。

(あいつが来るのは、もう日常の一部になってきている)

その状況に慣れ始めている自分に、戸惑いを覚えていた。

【回想】

それは、ひよりが望月家で夕食を共にした、いつかの夜の出来事だった。

「望月くん、今日も美味しかったよ。ありがとう」

ひよりはいつものように、眩しい笑顔で礼を言う。その言葉と、自分に向けられる素直な好意に未だに慣れないでいた。

そんな蓮をよそに、かれんが急に言い出した。

「なんか、もう家族みたいだね!」

蓮はその言葉に動揺した。家族……。

しかし、ひよりは「家族かぁ」と、少し嬉しそうに呟いて、優しく微笑んでいる。その表情から、蓮は思わず目が離せなかった。

さらに、かれんは爆弾を投下した。

「あっ!そうだ!家族だから、お互い名前で呼ぶのはどう?」

かれんは純粋な瞳で蓮とひよりを見つめる。これにはさすがにひよりも動揺したみたいで、「えっと……」と困っていた。

その困っている表情を見た瞬間、蓮はなぜか反射的に口を開いていた。

「ひよりさん」

蓮が声に出すと、ひよりは照れくさそうに「はい」と返事をした。

ひよりは意を決したように、蓮に向かって言った。

「えっと……蓮くん」

蓮がこくりと頷いた瞬間、かれんの表情はぱあっと明るくなった気がした。いや、なんかニヤついてないか、こいつ。蓮はかれんが何か企んでいる顔をしていることに気づいたが、特に咎めることはしなかった。かれんが喜ぶなら、と自分に言い聞かせた。

その後も、二人は名前で呼び合うことになっていた。

さらに後日、ひよりからの提案で「さんは要らない」ということになり、「ひより」と呼ぶのが、いつの間にか蓮にとって慣れてしまっていた。

【回想終わり】

(名前で呼ぶなんて、今まであまりしたことなかったのに)

蓮はため息をついた。ひよりという存在が、自分の世界を変えていってる気がした。

その日、蓮は日直だった。

放課後、蓮は担任の綾瀬から、クラスのノートを集めて科学準備室に持ってくるように言いつけられた。

みんなのノートを集め、科学準備室に向かい、扉を開けようとした、その時だった。

教室の中から綾瀬の声が聞こえてくる。

「まーた、お前は勝手に部室に変なの作りやがって!」

どうやら誰かを怒っているようだった。すると、女子生徒の声も聞こえる。

「いや!変なのじゃなくて、イレカワール君だよ!」

いつ入ろうかと少し悩んでいると、ガラッと目の前の扉が開いた。

そこには、俺よりもだいぶ身長が小さく、少し大きめな白衣を着た黒髪のおかっぱの女の子が立っていた。

「おい、逃げんな!」

そう綾瀬の声と共に、その女の子は俺の前を通り過ぎ、猛スピードで走り去っていった。

「たくっ、あいつ逃げ足だけは速いんだよな」

綾瀬先生が呟くと、やっと俺に気づいた。

「わりぃな。中の机に置いといてくれないか」

そう言われ、科学準備室に入ると、机にはコーヒーが少しだけ入ったマグカップや、科学の資料などが散らばり、どこか生活感がある空間だった。綾瀬先生の住処なのだろうか。

「ありがとうな」

綾瀬先生に礼を言われ、蓮は科学準備室を後にする。

それにしても、何だったんだろう、あの生徒は。と少し思ったが、すぐに興味は薄れていた。

この後、この人物により、また非日常のような出来事に巻き込まれるとは思いもしなかった。

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