第12話
教室の入り口で望月くんと鉢合わせになった後、学海ちゃんと小声で挨拶を交わした。
「またね、ひより」
「うん、またね」
学海ちゃんは軽やかに自分の席へと向かう。ひよりも自分の席に向かって歩き出したけれど、頭の中は先ほどの無言の遭遇でいっぱいだった。
(なんで何も話せなかったんだろう……)
どこか気まづくて望月くんの前に立つと急に言葉が出なくなってしまった。
席に向かうと、後ろの列に望月くんと水無瀬さんの席が並んでいるのが見えた。
自分の席に着こうとした時
水無瀬さんは既に席についていたけれど、ふと顔を上げてちらっと目が合った。
私がぺこりと軽く頭を下げると、水無瀬さんも優しくぺこりと頭を下げてくれた。水無瀬さんはすぐに自分のデスクに置かれた本を取り上げ、静かに読書を始めた。
私はそっと視線をずらし、斜め後ろ、窓際に座る望月くんを見た。
彼はただ窓の外の青空を見つめている。その横顔は相変わらずクールで、何を考えているのか全くわからなかった。
すぐに朝のホームルームが始まり、一日の授業が始まった。
数学の授業で、先生がプリントを配ると、前の席から順番にそれが回ってきた。
私にプリントを渡してくれたのは、その真前の席に座る女の子だった。
彼女の名前は花守萌さん。
その容姿はまるで漫画のキャラクターのような瓶底っぽいレンズのぐるぐるメガネをかけている。
プリントを受け取ろうと手を伸ばすと、ひよりは思わず息を飲んだ。
花守さんの指先は異常なまでに細く長く、爪の形まで整った美しい手をしている。さらに、黒髪を綺麗に編み込んだ三つ編みおさげは艶やかで綺麗に手入れされていた。
その整った容姿とはミスマッチすぎるぐるぐるメガネに、ひよりはさらに不思議な気持ちになった。
(どうしてあんなメガネをかけているんだろう?)
今日の授業が終わりホームルームを終えたひよりは意を決して学海ちゃんの席へ向かった。
「学海ちゃん!ね、一緒に帰らない?」
学海ちゃんは申し訳なさそうな顔で、ぱっと手を合わせた。
「ごめん、ひより。私、放課後は生徒会の仕事があって……」
「生徒会?」
ひよりは初めて学海ちゃんが生徒会に所属していることを知った。
「そうなんだ……」
少し落ち込んだけど、すぐにひよりは気持ちを切り替える。
「でも、すごいね!生徒会ってなんかかっこいいね!」
「えへへ、ありがとう」
学海ちゃんは少し照れながらも、嬉しそうだった。
学海ちゃんと別れ、ひよりは一人になってどうしようかと悩んだ。
(そうだ、せっかくだから学校を探検してみよう!)
ひよりは、まだほとんど知らない光が丘学園の校舎を歩き始めた。
体育館の奥からはバスケットボールの音が、別の棟からは吹奏楽部の楽器の音が聞こえてくる。賑やかな部活の雰囲気に、ひよりは少しワクワクした。
色々な部活があるんだな、とぼんやり思いながら校舎を一回りし、そろそろ帰ろうと昇降口へ向かう。
その途中の廊下で、ひよりは部活終わりの――
望月蓮と、遭遇した。




