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流海の城  作者: 双鶴


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22話

南の水門に、再び火のない舟が現れた。帆は高く、三つ鱗の印が風に揺れていた。小田ではない。北条本家の舟だった。水門の外に並ぶ舟は十五艘。火矢を積み、弓を張り、櫂の動きは揃っていた。


沙夜は火の前に立ち、代表者会議を招集した。源蔵、藤兵衛、澪、弥八、お咲、庄吉、妙蓮が揃った。


「北条が動いた」と沙夜は言った。「小田を通じて圧力をかけていたが、今は直接来ている。水門を越える構えだ」


源蔵は縄の構造図を広げた。「三重の縄でも、十五艘には持たぬ。水門は守れぬ。だが、動きを遅らせることはできる。火と鐘で知らせ、舟を動かす」


藤兵衛は鉄板の配置図を示した。「防火布は張る。鉄の縁も増やす。火矢が来ても、舟は沈まぬ。だが、数には勝てぬ。守るだけでは、持たぬ」


澪は帆の向きを見ながら言った。「風は北東。逃げるには向いている。だが、交易の帆は畳まねばならぬ。動きは、守りに切り替える」


弥八は記録板を閉じた。「三勢力には報を送る。佐竹は干渉せぬと言った。江戸は条件付きの承認。大掾は祈りを重んじる。だが、誰も助けには来ぬ」


お咲は薬籠を抱えたまま言った。「病人の舟は動かす。祈りの場は縮める。火は灯すが、香は控える。動きに合わせて、場を整える」


庄吉は静かに言った。「守ることはできぬ。ならば、残すことだ。記録を布に包み、火を舟に移す。水門が破られても、意思は残る」


妙蓮は香を焚きながら言った。「祈りは、場ではなく、行いに宿る。舟が動けば、祈りも動く。火を絶やさぬことが、答えになる」


沙夜は火を見つめ、言葉を紡いだ。「〈白翔の城〉は、構えを持つ。だが、構えは崩れる。火を守るために、舟を動かす。水門を越えられても、灯りは消さぬ」


その夜、舟の城では全体会合が開かれた。火が灯され、板が渡され、民が集まった。沙夜は語った。


「北条が来た。水門は破られる。舟の城は崩れる。だが、火は消さぬ。記録を包み、帆を畳み、舟を動かす。三つの拠点は、舟に分ける。防衛、交易、祈り――それぞれを、次の地へ運ぶ」


源蔵は縄を解き、藤兵衛は鉄板を舟の底に張った。澪は帆を整え、弥八は記録を布に包んだ。お咲は薬籠を分け、庄吉は舟の順を決め、妙蓮は香を焚いた。


舟は十艘。南へ向かう。水門を越え、風に乗る。〈白翔の城〉は、火を灯したまま、静かに崩れ始めた。


北条の舟が水門に迫る頃、流海の水面には誰も残っていなかった。火は舟にあり、記録は布に包まれ、祈りは香に宿っていた。


舟の城は、白翔の城として、構えを崩しながら、意思を運び、夜を越えていった。


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