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流海の城  作者: 双鶴


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17話

奇襲の夜から五日が過ぎた。流海の水面は静けさを取り戻していたが、舟の城の内部では、制度の整備が急ピッチで進められていた。火は絶えず灯され、香は朝夕に焚かれ、交易の舟は白帆を掲げて出入りしていた。


沙夜は火の前に立ち、代表者会議を開いた。源蔵、お咲、澪、弥八、庄吉、藤兵衛が揃い、舟の中央に板が渡された。


「奇襲を退けたことで、我らの構えは示された」と沙夜は言った。「だが、構えは形にせねば続かぬ。記録と仕組みが要る。誰が見ても、何がどう動いているかが分かるように」


源蔵は水門の図を広げた。「開閉の記録は、三日ごとにまとめて舟の中央に掲示する。誰が縄を握り、何時に動かしたかを記す。水門は命の通路だ。記録は命の証になる」


藤兵衛は鉄板の配置図を示した。「防衛の舟は、夜間は水門の両側に固定する。火矢に備え、鉄板と防火布を張る。舟の動きは、鐘と火で知らせる」


澪は帆の色と配置を説明した。「交易の舟は白帆とする。出入りの際は香を焚き、帆の向きで目的を示す。北へは塩、東へは薬草、南へは布と記録。帆は言葉の代わりになる」


弥八は帳面を開き、交易の記録様式を提案した。「品目、量、交換先、出発時刻、帰着予定――すべてを記す。記録は信の土台になる。言葉だけでは、関係は続かぬ」


お咲は祈りの場の配置図を広げた。「火は舟の中央に灯す。香は朝夕に焚き、水は舟の底から汲む。祈りは形式ではなく、日々の営みの中にある。場を整えれば、心も整う」


庄吉は静かに言った。「制度は、守るためだけのものではない。動くためのものだ。記録があれば、動きに迷いがなくなる。それが、舟の民の力になる」


沙夜は火を見つめながら言った。「ならば、三つの協定を定めよう。水門の記録、交易の帆色、祈りの場。それぞれが、我らの意思を示すものとなる」


その夜、舟の城では全体会合が開かれた。火が灯され、板が渡され、民が集まった。沙夜は代表者会議の内容を報告し、三つの協定案を読み上げた。


「水門は、三日ごとに記録を掲示する。誰が動かし、何を通したかを明らかにする。交易の舟は白帆とし、香を焚いて出入りする。祈りの場は舟の中央に設け、火と水と香を絶やさぬ」


漁師の男が言った。「水門の記録があれば、漁の時間も組みやすくなる。潮に合わせて舟を出せる」


農民の女が言った。「交易の帆が見えれば、何が届くかが分かる。畑の準備も早められる」


薬師の若者が言った。「祈りの場が定まれば、病人の舟も落ち着く。香の香りが、心を鎮める」


船大工の老人が言った。「記録があれば、舟の修理も計画できる。動きが見えれば、備えも整う」


沙夜は民の声を聞き終え、火の前に立った。「ならば、〈白翔の城〉の協定として、三つの仕組みを定める。守るためではなく、動くために。示すためではなく、繋ぐために」


その夜、舟の中央に三枚の板が掲げられた。水門記録の様式、交易帆の規定、祈り場の配置図。それぞれが、舟の民の手で書かれ、火のそばに置かれた。


舟の城は、白翔の城として、制度を灯しながら、静かに夜を越えていった。


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