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第七章 都市伝説の定着
噂はルールを持ち始めた。
──通知を受けたら、一週間以内に消える。
──最後の一文は必ず「今、あなたの後ろにいるの」。
──通知は友人から友人へ、視線から視線へ、見た人へ移る。
反証も集まる。「来たけど平気」「ブロックしたら消えた」。けれど、ブロックしたはずの相手から、別アカウントで同じ文言が届く。
学校の保健室で、美咲は養護教諭に「SNSを休みなさい」と言われた。
休んだ夜、スマホは震えた。機内モードのまま、通知だけが浮かぶ。
私、メリーさん。今、あなたの家の前にいるの。
ドアチェーンに手を伸ばしながら、美咲は理解する。これは通信ではない。呼吸だ。外と内の境目に寄りかかって、こちらの鼓動を真似している。