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第六章 感染


 ある夜、有名配信者が企画を立てた。「通知が来るまで耐久ライブ」。

 視聴者十万人。カウントアップ。コメント欄は笑いと挑発で溢れる。

 一時間が過ぎたころ、配信者の顔が一瞬止まる。視線が画面外に滑る。

 通知音。画面に重なる半透明のウィンドウ。


私、メリーさん。今、あなたの街にいるの。


 遅延を挟んだコメント欄が一斉に騒ぎ、「後ろ」「カーテン」「右」と指示が飛ぶ。カメラがパンした先、窓ガラスに暗い輪郭がぬるりと形を取った。

 配信は大きく揺れ、音が割れ、砂嵐のような映像に変わる。復帰した数秒後、画面は真っ暗になった。

 アーカイブは残され、切り抜きは拡散し、夜更けのタイムラインに「笑い話」と「削除要請」と「連絡が取れない」のツイートが並んだ。

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