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第五章 SNSでの拡散
タグが生まれるのに時間はかからなかった。#メリーさんの通知。
「届いたらスクショして拡散」「最後の一文が来たらブロック」──対処法が独り歩きし、都市伝説は自走を始める。
オカルト系まとめが記事を出し、ニュース番組が扱い、識者がコメントを添える。「チェーンメッセージの進化系に過ぎない」「心理的誘導が恐怖を増幅させる」
画面の向こうからは、理屈のいい声が次々と流れ込んでくる。でも、夜になるとスマホは震える。
美咲のもとにも、場所を刻むようにメッセージが届いた。
私、メリーさん。今、書店の前にいるの。
私、メリーさん。今、横断歩道にいるの。
彩花が辿ったのと同じ道筋。彼女は気づく──これは追跡ではない、なぞりだ。誰かの帰路を、別の誰かが上書きしている。