実体のある虚構 第7集 intelligence money, break heart 後編
マニやん「タダメシが消えた!」
トレイジア「ただ消えただけじゃない。私達の有り金を持って消えたのよ。」
アリシア「えぇ?お金、取られたの?」
マニやん「あの野郎ぅぉぉぉぉ、ひっ捕まえてボロ雑巾にしてやるぅ!」
瀬能「・・・・どうしたんですか?皆さん。朝から元気ですねぇ?」
アリシア「セノキョン、タダメシさんが私達のお金を持って、消えちゃったらしいの。」
瀬能「食われた?」
トレイジア「なにに?」
マニやん「どうせ、有り金もって、カジノに行ったんだろ? 倍にして返すとか、たぶん、そんな腹じゃねぇのか?」
トレイジア「行先はそうね。・・・マニやんの言う通り、カジノよ、きっと。」
アリシア「カジノならいいけど。・・・・またどこかで行き倒れてたら心配じゃない?」
瀬能「これから、ボッコボコにして行き倒れにするんですよ?」
マニやん「その通りだ。お前達、行くぞ! カジノだ!」
アリシア「もう! 待ってよぉぉぉぉぉぉ」
案内所「一応は捜索はしますが、ここは遊技場ですので、一日何万人とお客さんがいらっしゃいます。迷子やいなくなった人の捜索は、かなり難しいと思いますよ?」
ナオミチ「警察とか、そういうのはこの町にはないのか?」
案内所「ありますけど、そういった捜索に関してはかなり限定的で、お役に立てるか分かりません。たぶん、私と同じことを言うと思います。」
ナオミチ「ここで話をしていても埒が明かないんだろ? だったら警察に行って、行方不明の捜索をしてもらうだけだ。」
案内所「警察と、他にも、冒険者ギルドで行方不明の捜索願を出すという手段もあります。その場合は、自分で、報酬を出さないといけなくなりますが。」
ナオミチ「クエストとして依頼を出すって事だな。」
アリシア「あの、どうされたんですか?」
ナオミチ「あ、どうも。・・・・実は、連れがいなくなってしまいまして。それで、捜索願を出そうと思いまして。」
アリシア「あ、あなたもですか?」
マニやん「ここは人がよくいなくなるな?」
案内所「そちら様も、ご同行者様が行方不明に?」
アリシア「ええ。・・・たぶん、このゴールドバーグの中にはいると思うんですが、とにかく人が多いし、広いし、探すのが大変で。それで、こちらで捜索願を出しておこうと思いまして。」
ナオミチ「それは私と同じです。私の連れもたぶんこの町にいるとは思うのですが。やはり広くて一人で探すのは骨が折れます。」
マニやん「おまけに、こっちは金まで持ち逃げされたからな。」
案内所「持ち逃げ? 持ち逃げですか? それは事件じゃないですか」
瀬能「人が消えたのも事件ですけどね。」
ナオミチ「それはあなたのおっしゃる通りですね。 確かにカジノで人の往来が盛んで、事件や事故が多いのは承知の上だが、人に関心がなさすぎる。それは問題ですよ?」
案内所「はぁ、それはごもっともな意見であるのは承知しておりますが。ですが、ゴールドバーグでは対応いたしきれないのも事実。なかには故意にいなくなる人もいますから、それと、行方不明と同じに捉えてしまうと、人探しだけで手いっぱいになってしまうんですよ。そこはご理解いただきたいと思いますが。」
アリシア「それはそっちの都合でしょう?こっちは人がいなくなっているんだから。」
トレイジア「出た、アリシアの正論パンチ。」
瀬能「アリシアさんの言う事は正しいですけど、ここは、人の欲望が渦巻くゴールドバーグ。正論だけでは、まかり通りませんよ。」
案内所「あの、その、いなくなった方の名前や特徴をここにご記入下さい。警備員が巡回して、探しますので。・・・・ただ、1万人以上いる行方不明者のリストに一人、加わるだけの話になってしまいますが。」
トレイジア「1万人も行方不明者がいるの?」
瀬能「それがこの町の実情なんでしょう。」
ナオミチ「・・・・仕方がない。それでも構わない。探す手立てがないんだ。よろしく頼むよ。」
案内所「かしこまりました。」
ナオミチ「君達も運が悪かったね。お金まで持っていかれてしまうとは。私より状況が悪そうだ。」
アリシア「あなた、お名前は?」
ナオミチ「ナオミチだ。職業は騎士。朝おきたら連れがいなくなっていた。昨日の様子から、失った分の金を取り戻すため、カジノに出かけたんじゃないか。心当たりはそれくらいだ。」
アリシア「あ、私達はパーティなの。私がリーダーのアリシア。そして、トレイジア、マニやん、そしてセノキョンよ。」
瀬能「あの、セノキョンです。よろしくお願いします。」
マニやん「お前なぁ、少し顔がいい男みると、すぐ、これだよ。」
ナオミチ「それで、君達のメンバーがお金を盗んで、いや、失敬、もってカジノに消えてしまったのか?」
トレイジア「盗んだで正解よ。最初から盗む気だったのよ。」
マニやん「そこまで根性が腐ってるとは思っていなかったけどな。甘かったぜ。」
アリシア「いなくなってしまったのは、タダメシさん。」
ナオミチ「タダメシ?」
マニやん「タダでメシを食わしてやったからタダメシだ。本名は、あれ?確か、何か、言ってたよな?」
瀬能「マニやんが半殺しにしちゃったから、話を聞けなかったんですよ。」
マニやん「えぇ?私の所為か? ふざけんなよぉ。」
トレイジア「名前なんかどうでもいいのよ。捕まえて財産を取り返さないと私達の今後の活動に支障が出るわ。また、面白くないクエストをこなして日銭を稼がなくちゃじゃない。」
アリシア「手分けして探しましょう。」
ナオミチ「ああ、それじゃあ僕も、その、タダメシ君とやらを見つけたら、連絡を入れるようにするよ。」
アリシア「本当ですか?助かります。」
ナオミチ「これも冒険者同士のよしみだ。」
タダメシ「赤、赤、赤、赤こい、赤、赤、赤こい、こい、こい、こい、こい、こいぃぃぃぃぃぃぃぃい、ああああああああああああああああああああああああああああああああ
なんで?なんで、来ないんだよ! どうして、どうしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ・・・・・・・・あああ、次こそ勝たなくちゃ何もかも無くなる。せっかく手に入れた金も、もう尽きる・・・・・・・・
次も赤だ。次こそ赤がくるぞ! 赤だ、赤だ、赤だ。」
ディーラー「ベット、よろしいですか? では、参ります。」
コロコロコロコロコロコロ・・・・・・・・
タダメシ「赤だ、赤だ、赤だ、赤こい、赤こい、赤赤赤赤赤・・・・・これで、赤がこなくちゃ俺は破産だぁ。終わりだ。赤こい、赤こい、赤赤赤赤赤赤赤赤赤・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁ。
くそ、次こそは、次こそは、次は黒だ。黒。・・・・黒に全部、ベッド・・・・・」
フロア係「お客様・・・・」
タダメシ「・・・・・」
フロア係「お客様・・・・」
タダメシ「あぁぁ?」
フロア係「お客様、お席をお譲りいただけないでしょうか。もうお客様にはチップをお持ちではございません。」
タダメシ「待てよ? 俺はまだこれで終わりじゃねぇんだ。これから勝つんだ。金がないならどうにかする、だから、もう一回、賭けさせろよ!次は勝つんだよ、勝つんだ!」
フロア係「わかりました、お客様。では、お客様に特別なゲーム場へご案内いたします」
タダメシ「はっ? だから、俺はまだ勝負するんだ! ここから離れないぞ!次こそ、次こそ勝つんだ、絶対勝つんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
フロア係「少々手荒いご案内になると思いますが、ご容赦ください。」
タダメシ「待て、放せよ!やめろ!おい、俺は客だぞ! 俺はここにどれだけ金を使ったと思ってんだ?おい、やめろ!」
フロア係「・・・あなたは絵に描いたようなクズでございます。他のお客様にご迷惑なので、ご退席、ちょうだいいただいております。」
タダメシ「待て、待て、やめろ!」
フロア係「いくら金を使おうが、今、金を持ってなかったら、お前はクズなんだよ?わかるか、クズ野郎? 金を持っている奴だけがお客様なんだ・・・・」
タダメシ「金?金なら当てがある。・・・・仲間が金を持ってる、だから、待ってくれ、金は用意する! だから俺に、勝負させてくれ! そして勝つんだ!勝つんだ、俺はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ」
フロア係「ああ、他のクズも同じ事を言う。だが、金を持って来た奴なんかいない。何故なら、お前が金を勝手に持って来たからだ。お前が仲間だと思っている奴は、お前の事を仲間とは思っていない。・・・・お前はただのコソ泥だからだ。」
タダメシ「やめろ、待て、放せ! 放してくれぇぇぇぇっぇ、嫌だ、俺はまだ戦えるんだ! 金さえあれば、金さえあればぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
マニやん「おい、いたぞ!あれ、タダメシだ!」
トレイジア「えっ? どこよ?」
マニやん「ほら、あそこ、ずっとこの先!柱んとこ!」
アリシア「柱ってどこよ?柱がいっぱいあって分かんないわよ?」
マニやん「ああああああああ、ああああああああ、付いて来い!お前等!」
瀬能「待って下さいよぉぉぉぉ」
マニやん「あれ?・・・・くそ? いないぞ?」
瀬能「見間違えじゃないんですか? マニやんは性格も悪いけど目も悪いし・・・・・・・」
バシッ
瀬能「いたぃ! 今、ぶった、ぶたれました!」
マニやん・瀬能「オヤジにもぶたれたことないのにぃぃぃぃぃ」
マニやん「うるさいわ! なんだ性格が悪いって?」
アリシア「・・・・・・」
トレイジア「ホントにいたの?タダメシ?」
マニやん「ああ、確かに見た。従業員みたいな奴に引きずられてこっちに行ったハズだったんだ。」
瀬能「この先、何もないじゃないですか?」
トレイジア「あ、待って、階段がある。・・・・どこまで降りているのかしら、この階段。」
マニやん「こんな所にいても、タダメシは見つからねぇ。行ってみるぞ?」
アリシア「マニやん、リーダーは私?いい?」
マニやん「リーダーはまた後でな。じゃ、行くぞ!」
トレイジア「マニやん、待ちなさいよ!」
アリシア「え?なんで今、無視したの? 私、リーダーでしょ?リーダーの話、聞きなさいよ?」
瀬能「・・・・仕方がないですよ、アリシアさん。影が薄いもの。」
アリシア「・・・・・。人が気にしていることをぉぉぉぉぉ、待ちなさいよぉぉぉぉぉぉぉぉぉお!」
黛「じゃあ、気張らずに、この台本、読みながらでいいから、やってみよっか?」
女「はい。」
黛「困った時はカンペ出すから。それじゃ、配信いくよ、はい、3.2.・・・・・」
女「はじめまして。今日から、ルーレットティーラーを行います、若菜です。よろしくお願いします。」
黛「簡単な自己紹介!」
若菜「ああ、簡単に私の自己紹介をさせていただきます。趣味は海外旅行で、行った先で、おいしい物を食べることが好きです。今まで、10か国ぐらい回りました。前はバックパッカーをやっていたんですが、この頃は怖くて辞めました。・・・バックパッカー同士で、荷物を盗まれたりもしたし、誘拐されたりそういう話も聞くんで、なるべく治安の良い所で観光したいんですが、やっぱり、それなりにその国の面白い所を見に行こうとすると、事件に巻き込まれてしまうので、よっぽどその国を勉強していないと、危ないですね。何度も危ない目に遭いました。」
黛「・・・へぇ」
若菜「アジアの難民と間違われて連れて行かれそうになったこともありましたし。ホント怖いです。治安って大事なんだなぁって思いました。」
若菜「・・・・」
黛「・・・・」
若菜「・・・・」
黛「若菜ちゃん!次、次、次、読んで!」
若菜「あ、はい。はい。・・・・では、ああ、好きなタイプ? 私、いろんな人種の人とお付き合いした経験があるんですが、一回、アメリカ系の黒人の人とお付き合いした事があって。そうです。英語で。日本語も含めてカタコトで。ええ。ええ。基地系の人で。私は白人の人より黒人の人の方が、良かったですね。ギュって締まってる感じがして。体が。・・・体臭ですか?体臭はもう、人種が違うので仕方がないと思います。それはやっぱりありますよ。日本人が無臭過ぎると思います。ムワってくる感じの臭いなんですよね。動物の臭いに近いっていうか。人間も動物なんですけどね。・・・体の、体同士の密着感、がっちり筋肉でホールドされたいって方は黒人がおすすめですね。」
黛「若菜ちゃん? なに、言ってんの?そういう事じゃないよ? 若菜ちゃんの性癖を話すコーナーじゃないよ?」
若菜「え?あ、あ、すいません。ああ。てっきり。・・・・つづいて、私の好きなもの。食べ物?食べ物?・・・・ああ、ご飯です。ライスボールです。ご飯があれば世界中、どこでも、生きていけます。
じゃ早速、ゲーム、やっていきましょうか?はい、じゃんじゃん賭けて下さい。はい、早く、早く、早く、チップを賭けて下さい。」
黛「雑!雑! 雑だよ、若菜ちゃん。もっと、優しく。優しくしないと。」
若菜「すいません。すいません。ああ、雑でしたか? 私も雑だなぁとは思いました。こういう雑なのは性格なんで申し訳ありません。
では、皆さん。チップをベッドして下さい。」
黛「はい、ここで賭けている間、雑談!」
若菜「雑談?ああ。では、皆さんがどこに賭けるのか悩んでいるあいだに、少し、雑談を。ええ。そうですね。ううぅううううん。・・・シャウエッセンはボイルして食べると一番美味しいですね。」
黛「しゃべる事ないなら無理してしゃべらなくていいよ?」
若菜「すみません。しゃべる事なにもなくて。昨日、彼氏とケンカしまして。彼氏が私と寝たいって言ってきたんですけど、私、生理だって答えたんです。そうしたら彼氏が生理でも構わないって言うんで。お前が、その後の掃除を全部するならシテやっても構わないっていったら、だったらプロに頼むわ、なんて言って出て行ってしまって。私も腹が立って、ナプキンをパンツから出してその場で投げつけてやったんです。ああ、もう、言う間でもなく喧嘩ですよ。あっはっはっはっは。」
黛「よく分からない話、しないで。」
若菜「すみません。では、ベッド、終了でよろしいですか?若干、黒に多く賭けられているようですが。じゃ、では、ルーレットを回していきます。・・・・・はい、ボールを入れます。
なにがでるかな、なにがでるかな、とぅとぅとっとぅ、トゥルトゥル、バァァァァァァァァン、はい、赤です。」
黛「余計な歌を、歌わない!」
若菜「あ、すみません。サイコロとかルーレットだと、ついつい小堺の気分になっちゃって。はい。赤の3番。赤の3番。赤の3番です。」
黛「市場じゃないから、そんなに、競りみたいに、やらなくていいから。」
若菜「ああ。何度もすいません。ああ、でも、初めてルーレット回してみました。面白いですね。ねぇ? 急に起動が変わって、赤に止まっちゃいましたけど、こういうの、いつも、普通なんですか?初めてなんでよく分からないんですけど?」
黛「余計なこと、言わなくていいから。」
若菜「・・・・ああ、余計な事、言っちゃいました?生理中の喧嘩は駄目ですよね?男も女も?えっ? そっちの話じゃない?ルーレットの話?」
黛「ボールだから、急に止まることもあるよ」
若菜「ええ。はいはい。ボールだから急に止まることあるよ。」
黛「下手!下手だよ、若菜ちゃん。もっと感情込めて言って!棒だよ、棒!」
若菜「あたしぃはぁぁっぁぁぁぁ、ボールどうぅわかぁからぁぁぁぁ、急に止まる事もぉぉぉ、ありまっすぅぅぅぅぅううう!」
黛「そういう事じゃないよ?そういう感情じゃないから。」
若菜「すいません。ホント初めてなもんで。何から何まですみません。日本からのお客さんが多くて、私も安心します。日本の皆さん、見てますかぁぁぁぁぁぁぁ?いっぱいいっぱい、お金を賭けて、楽しんで下さい。生配信ですから、もう何回か、ルーレット回しますからねぇ。ほんと楽しいです、私。」
黛「ははははははは。ははははははははは。ははは。」
沖「消えた?」
スタッフ「ええ。朝、起床時間に起きてこないで見にきたら、姿がありませんでした。荷物は置きっぱなしで。」
沖「ろくな格好してないだろうに。・・・・よく逃げ出すわねぇ。」
スタッフ「ええ。・・・ご家族には?どう?」
沖「そうねぇ。・・・・じゃあ、家族には私から連絡を入れるわ。高橋照美の捜索は、そちらにお願いすわね。探せる人、いたら、手伝ってもらって。」
スタッフ「ああ。はい。了解しました。」
沖「黒岩さん。一緒にいて気が付かなかった?」
黒岩「すみません。私、・・・・気が付かなかったです。」
沖「ごめんなさいね。変な事、聞いちゃって。」
黒岩「ええ。あのぉ、こんな事、言って申し訳ないんですけど、そんなに興味もなかったんで。・・・同室だから挨拶くらいはしますけど、話はしないし。」
沖「最初から逃げる感じだった?」
黒岩「ああ、そうですね。そんな感じはありました。最初からよそよそしいっていうか、中に入ってこようとする姿勢が見受けられませんでしたね。私が言うのもなんですが。」
沖「まあ、こういう更生施設に入って来たとしても、自分だけは違うって思っているから仕方はないのかもね。」
黒岩「私もそう思います。当初、私もそうでしたから。まず、自分が中毒患者という事を認めないと、話は始まりませんからね。」
沖「黒岩さんも成長したわねぇ。いやぁ、凄い。凄い。・・・・潔癖症、クリーン環境依存症の黒岩さんが、成長したわねぇ。」
黒岩「他人と同じ部屋で同じ空気を吸っているだけで、もう、信じられないくらいイライラして病的で、感情のコントロールが出来ませんでしたが、その感情を、少しずつコントールできるようになってきました。」
沖「ま、最終的には黒岩さんは、無人島で住む事が目標だもんね。私はその方が、黒岩さんにもご家族にも、一番いい解決法だと思うわよ。」
黒岩「ありがとうございます。沖さんだけですよ、そういって、理解してくれるのわ。」
沖「黒岩さんみたいな人は、他人と一緒に生きていけない。これは絶対。だって、人を殺したって、自分以外の全員、地球上の全ての人間を殺さないと、あなたの安息はないのよ?そうでしょ?もう、潔癖なんだから。異常な潔癖だから。」
黒岩「そうなんです。そうなんです。まったくその通りなんです。沖さんだけ。分かってくれているのは。」
沖「無人島なら、妥協点よ。あなたも最低限、暮らしていける社会性を保てるし、家族も心配しないで済むし。自分の汚れが落ちるのも嫌だから、全身の毛、産毛まで剃ってたけど、少しは、落ち着いたの?」
黒岩「こうやって他人と同じ部屋で同居できるくらいまでは、精神のコントロールが可能です。お互い様っていう気持ちが、わずかですが、持てるようになりました。」
沖「上出来じゃない。どうする? 同居人の捜索、行ってみる?」
黒岩「沖さん。私は捜索するのに協力は惜しみませんが、実際のところ、見つかります?もう、どっか、遠くに行ってしまったんじゃないですか?」
沖「逃げるのも自由だし、構わないんだけど、どうするつもりかしらね?お金もないのに。ま、黒岩さん。ありがとうね。邪魔したわ。」
黒岩「いえいえ。」
黛「日本のお客さんが、増えてるねぇ。やっぱり、日本人のディーラーのおかげかなぁ。」
ジュジュ「まだまだ日本人のディーラーは足りませんよ。24時間、365日、生配信を行うには、足りなすぎます。」
黛「・・・ジュジュちゃん。野心家だねぇ。とりあえず、一区切りしたんだし休もうよぉ。」
ジュジュ「・・・一回、大沢さんに聞いてみますね?」
黛「いいよ、いいよ、大沢さん通さなくても。俺が現場責任者なんだから。現場の空気で。がんばったんだからさ。少し、休暇、取ろう?」
コーネリアス「・・・・・」”どうだろう、君達で、あの悪魔を買い取ってくれはしないだろうか?”
ジュジュ「リアルタイムで通訳なんて、いよいよ人間なんていらなくなりますね?」
黛「すごいな」
コーネリアス”ああ、信頼の中国製だ。”
黛「社長、そこ、笑うところですか?」
コーネリアス”?? 何も冗談を言ったつもりはないぞ? ジャパニーズは頭がおかしいのか?”
ジュジュ「ああ、コーネリアスさん。ご説明すると、日本人は中国製品は壊れやすく粗悪なものが多いから、そこを彼は皮肉で言ったんです。中国が世界のマーケットで流通していることを日本人は知らないんです。」
コーネリアス”そういう事か。わかった。彼は愚かな日本人という事だな。”
黛「ジュジュちゃん、それちょっと、ちがくない?」
ジュジュ「黛さん。翻訳ツールですから、教科書的な翻訳しか出来ないんですよ。知らないっていうのを馬鹿って翻訳してしまうんですよ。」
黛「それ、俺、けっこう傷つくんだけどなぁ。」
ジュジュ「コーネリアスさん。さっきおっしゃっていた、悪魔。悪魔とは何の事ですか?」
コーネリアス”私が開発設計した、カジノのプログラム。いや、カジノシステムそのものだよ。あれは悪魔だ。人間を際限なく、泥沼に引きずり込む悪魔だ。”
黛「?・・・・なにってんだ、社長?」
コーネリアス”愚かな人間である、日本人の君には理解できまい。私の苦悩が。”
黛「あのぉ、さっきから、ちょいちょい、酷いこと言ってますよね?俺に向かって。」
ジュジュ「コーネリアスさん。それはどういう意味ですか?その理由を教えて下さい。・・・・黛さん。こういう風に、翻訳機械が理解できる、分かりやすい文法で喋らないと、上手く翻訳してくれませんよ?」
黛「えぇぇ?そうなの?」
コーネリアス”私は見ての通り老いぼれだ。いい頃合に仕事を引退したいと思っている。全英カジノ協会で、理事も務めてきた。だが、年齢には勝てない。私が引退を考えていた時、日本のマフィアを紹介された。君達のボスだ。将来、日本でカジノが行われるようになった時、優位な立場を確立したいと言っていた。正直な男だと私は感心した。”
黛「英語のテストみたいな日本語だな。」
ジュジュ「そう言ってるじゃないですか?」
コーネリアス”そして私は君達のボスと手を組むことにした。これが私の最後のビジネスだと確信している。そして、このカジノのシステム、全てを買ってくれないだろうか?君達に全てを渡そう。私のすべてを。”
ジュジュ「コーネリアスさんのご提案は理解できましたが、私と、彼では、今ここで判断することは出来ません。話を持ち帰り、私達のボスに相談させて下さい。」
コーネリアス”君の言う事が正しい。良い答えを期待している。”
黛「あの、社長?さっき言っていた、悪魔っていうのはどういう意味なんですか?」
コーネリアス”私はカジノに誇りを持っている。カジノビジネスで成功してきたからだ。そして、全英カジノ協会の理事も務めた。私はカジノに多大な貢献をしてきた。そう自負している。そして、時代がインターネットでのカジノを求めた。私はその仕組みづくりに命を懸けた。インターネットカジノの基礎を作ったといって過言ではない。私の作ったシステムは、他の会社の見本となった。私こそがベーシックなのだ。”
黛「ベーシックねぇ」
コーネリアス”私はこのシステムに名前を付けた。GOGだ。皆が私の作ったGOGを真似した。それは光栄な事だ。だが、いつからかGOGが暴走をはじめた。気が付いた時にはもう私はGOGを止める事が出来なくなっていた。そう、現在のカジノシステムは正常に運営されている様に見えるが、GOGは暴走を続けているままなのだ。”
黛「え? あの、ちょっと・・・・」
ジュジュ「暴走している? コンピュータのシステムがですか?」
コーネリアス”そうだ。”
黛「そんな欠陥品を俺らに売りつけようとしていたんですか?」
コーネリアス”そうだ。”
黛「そんなさわやかな顔で言われても・・・・困りますよ?」
ジュジュ「コーネリアスさん、どうして、システムは暴走しているんですか?止める方法は本当にないんですか?」
コーネリアス”走り出したシステムは誰にも止める事が出来ない。暴走機関車と一緒だ。・・・・なぜならGOGは、善良な人々から金を巻き上げ、我々に富をもたらしてくれる、優秀な神だからだ。最初は、なんて素晴らしいカジノシステムを構築したと思った。これ以上、素晴らしいシステムは他にないと思っていた。だが、気が付いたんだ。GOGは、人々から金を吸い上げるだけ吸い上げる。吸い上げられなかったら捨てる。残ったものは何か、廃人だけだ。カジノに溺れた人間の廃棄物だけが残った。”
ジュジュ「・・・・・。」
コーネリアス”我々全英カジノ協会は、カジノと人間の適切な距離をもって運営してきた。得た金は福祉と王室の為に使われた。それが紳士たるギャンブルへの姿勢だ。だが、GOGには英国紳士、淑女の何たるかがまるで分かっていない。我々は常にジェントルマンでなければならない。GOGはそれが理解できない。GOGはどんどん、どんどん、肥大化していった。今も膨れ上がり続けている。奴は際限なく、人間の欲望を喰らう悪魔だ。GOGはいつの間にか、自分の事を私と混同するようになった。”
ジュジュ「・・・・それこそ、それは、あの、どういう事なんですか?」
黛「コンピュータが意識をもったってこと?」
コーネリアス”そうだ。信じられないが、GOGは自分の事を、私、コーネリアスだと錯覚し、そして、私だと思い込むようになった。奴は、自らをアダルバベーダと名乗り、カジノシステムのみならず、それに繋がる全ての情報、権限を掌握してしまった。そう神にでもなったつもりでいるのだろう。私には、悪魔にしか見えないがね。”
ジュジュ「アダルバベーダ・・・・」
黛「ああぁぁぁぁぁぁ、こりゃ、でも、どっちでも、ここで判断できる話じゃねぇなぁ。」
ジュジュ「それでコーネリアスさん。暴走はしているとはいえ、カジノの運営は正常に行えているんでしょう?」
コーネリアス”それは間違いない。あれほど優秀なシステムは他にはない。人間を喰らう以外はな。”
ジュジュ「分かりました。この件は、必ずオオサキに相談します。」
コーネリアス”そうしてくれ。賢い日本女性と、愚かな日本人の男。”
黛「いちいち傷つくなぁ」
瀬能「単刀直入に伺いますが、GOGとは何者なんですか?」
ヤマナミ「彼女は悪魔そのものだよ」
瀬能「悪魔ねぇ、悪魔と言われても抽象的過ぎて。」
ヤマナミ「ああ。人間の欲望をさらけ出させて、剥き出しにして、喰らい尽くす悪魔だ。・・・魂を喰らい尽くされ、残されるのは屍だけだ。生きた屍。生きる力も希望も何もかも奪われる。」
瀬能「とんでもない奴ですね。」
コーネリアス”GOGは狡猾だ。いくら人間が注意を払っていたとしても、心理学、認知運動学、精神病理学などを使い、理論的に、戦術を組み立て、我々人間を支配する。一度、奴に目をつけられたら逃げる事は出来ない。”
黛「お釈迦様かよ」
瀬能「そんな悪魔と戦う術はあるのですか?」
ヤマナミ「・・・・・ない、事もない。」
ジュジュ「私達がGOGを手懐ける手段はあるんですか?」
コーネリアス”GOGは既に独立した思考を持った、言わば全知全能の神だ。カジノにおける、あらゆる人間の行動を監視し、金の流れ、人の流れを読み、おまけに、世界中の経済取引までトレースして、政治、金融、物価、投資。人の心を読んで、巧みに、人を魅了し、人を動かす。・・・・・知恵のある日本女性である君。ここまで聞いて、何か、思い当たるものはないかね?”
ヤマナミ「セノキョン、よくよく考えてみろ?幾ら金の集まるゴールドバーグを仕切っているとはいえ、所詮奴は、統計学を元にしたロボットに過ぎない。・・・・全員を相手にしていると思うか?」
瀬能「・・・・・あははははははは。なるほど。」
コーネリアス”GOGに私は、心理学や認知行動学の要素をプログラムに組み込んだ。一見、人を操っているようにみえるが、その実、”
ジュジュ「金」
コーネリアス”そういう事だ。彼女の根本にあるものは、金の動きだけだ。世界中の市場経済をトレースしているのも、金融の動きが変われば、カジノに流れてくる金の動きが変わるからだ。借金をしようとしても銀行が貸さなければ金は動かない。銀行を動かすものは市場経済。彼女は、世の中を金でしか見ていない。”
ジュジュ「GOGと仲良くなるには、金の動きを知るという事ですね。」
瀬能「欲望に火をつける悪魔は、大勢の人間の欲望を吸う。言い換えれば、大勢の人間しか相手に出来ない。しかも、中央値。・・・・中央値から外れた人間は、相手にされない。あははははははははははははは。そう、私の様な人間に弱いという事です。イレギュラーに。」
ヤマナミ「言っておくが、それは、GOG本人に会えた場合の話だ。彼女だって自分の弱点には気づいている。馬鹿じゃない。そこに辿り着くまで、鉄壁の布陣がひかれている事だろうよ。ただの冒険者じゃ、彼女に会うまでに殺されてしまう。」
コーネリアス”私はもう疲れたのだ。あの悪魔と決別したいのだ。”
ヤマナミ「GOGと一戦構えるとなると、それ相応の戦力が必要だぞ? 下手な国の軍隊より強力だ。」
瀬能「別に私はGOGを殺そうとか、思っていませんよ。それに、殺す理由もありませんし。人の欲望を喰らう、その噂の悪魔の御尊顔を見てみたいだけです。」
ヤマナミ「セノキョン。お前は本当に物好きだな。・・・・お前にこれを餞別にくれてやろう。」
瀬能「? ・・・なんですか、この怪しいファーマシーは?」
ヤマナミ「下剤だ。」
瀬能「下剤?・・・はぁ。」
ヤマナミ「こいつは凄いぞ?知り合いの錬金術師から試作品を預かったんだが、3か月間、お通じが来なかったものが、この薬を一錠、飲んだだけで、その場で、便秘が治ったと言う。」
瀬能「それは、ただの毒では?」
ヤマナミ「今は色々と売れるように試作をしているんだそうだ。その一つ。・・・・飲んだ後は、その報告をしなければならないので、結果を報告してくれ。」
瀬能「・・・まぁ。そうですね。もらっておきます。何かの役に立つかも知れませんし。」
瀬能「たぶん、この階段が、ラストセーブポイントです。」
マニやん「嫌な臭いがプンプンしてくるな。・・・ラストダンジョンか。」
アリシア「みんなで、タダメシさんを助けにいくのね!」
トレイジア「いや、違うでしょ?」
マニやん「お前、何いってんだ? 私達の財布を取り戻しにいくんだよ?」
アリシア「え? タダメシさんの方が大切でしょ?」
マニやん「お前さっきから何、言ってんだ? タダメシに価値なんかねぇよ。」
トレイジア「・・・・タダメシは囮。タダメシを泳がせれば、勝手に、カジノの最暗部まで案内してくれる。タダメシは馬のニンジンと一緒なのよ。」
アリシア「え? ちょっと、それって、人としてどうかと思うけど?」
マニやん「アイツはペット以下だからいいんだよ。エサとして仕事しただけでも上等だろう?」
瀬能「だからアリシアさんは昭和のアニメヒロインとか朝ドラヒロインとか言われちゃうんですよ? ・・・考え方も古いし、顔も古いって。」
アリシア「顔が古いってなによ? 顔が古いって!」
マニやん「ま、ここから先は、世界最大のカジノ、ゴールドバーグの暗部だ。潜ったら最後、出てこられる保証はねぇぜ? リーダーさんよぉ?」
アリシア「わかったわよ、腹をくくればいいんでしょ?腹をくくればぁ?」
トレイジア「行くわよ! タダメシを追跡して、お金を取り戻す。」
瀬能「・・・もしかしたら、たまたま、落ちているお金がポケットに入っちゃうかも知れませんね?」
マニやん「ああ、たまたたまな。」
トレイジア「そう、たまたま。」
アリシア「あんた達、最初からそのつもりでぇ?」
マニやん「行くぞ!野郎ども!」
マニやん「正面突破だ! 雑魚には構うな! 下へ下へ降りろ!」
傭兵「また、馬鹿な冒険者が金目的で仕掛けてきたぜ?」
傭兵「殺せ!殺せ! 殺せば、俺達の報酬が上がるぞ!殺せ!」
ガギィィィィィィッィィィィィィィィィイン
ズガガァァァァァァァン ズガガァッァァァッァァァァァッァァッァァァァン
トレイジア「いちいち相手にするな、押し込まれたらこっちの負けよ!」
瀬能「あははははははははははははははははははは! お前達はここで地べたを舐めて死ぬのです! 即死魔法!」
傭兵「ギャオアオアオアオアァッァァッァァァッァァッァァッァァァッァァッァァッァ」
瀬能「あはははははははははは 他愛もない、他愛もない!」
マニやん「お前、ほんと、性格悪いよな・・・・」
瀬能「なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! マニやん、ここで勝負をしてもいいんですよ?私の即死魔法で殺してあげても?」
マニやん「ははぁぁっぁぁっぁぁぁっぁぁっぁぁ? お前みたいな性格ブス魔法使い、いつでも三枚におろしてやるぜ?」
ガァァァァァァァァァン
傭兵「ギャァァァァッァァァァッァ!」
トレイジア「あんた達ねぇ、仲が良いの構わないけど、じゃれ合うのはダンジョンを脱出してからにしなさいよ!」
瀬能「はいはい、何でもかんでも平均点のトレイジアさん。お顔は平均点ですが、お胸は平均点以上ですね。・・・・マニやん、勝負はお預けですよ!」
トレイジア「顔が平均点って何よ!」
マニやん「お前こそ!首洗ってまっとけ、セノキョン!・・・・どうせ男の趣味も平均点だろう?トレイジアは?」
トレイジア「男の趣味が平均点ってどういう意味よぉっぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉおぉ?」
瀬能「さぁ、さぁ、魔獣ちゃん、秘拳、パンダ拳の餌食になりなさい! ゴ~ロゴロ、ゴ~ロゴロ、ゴロゴロ」
魔獣「?」
アリシア「疾風三連斬、五段斬り!」
魔獣「グァオォァオァオァオァオァオァオァオァオァオァオァオオァオァオ!」
マニやん「お前・・・・3回なのか5回なのか、はっきりしろよ!その技の名前?」
アリシア「カッコイイから、言ってるだけよ!」
傭兵「死ねぇぇ!」
傭兵「囲い込んで、捻り潰せぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇっぇ!」
傭兵「火炎魔法ぅぅぅぉぉぉっぉぉっぉっぉぉぉぉおぉお!」傭兵「氷結魔法ぁぁぁぁっぁっぁっぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉっぉぉっぉぉぉぉお!」
マニやん「防戦になるな! 守りに入ったら、負けるぞ!」
アリシア「そんな事、言ったって、敵の数が多過ぎる!キリがないわ!」
トレイジア「火炎爆弾! いまよ、先に急ぐわよ! 続いて!」
アリシア「待ってぇぇぇぇ!置いていかないでぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
瀬能「秘拳、チンアナゴ拳! 皆さん、ここは私が守ります。先に行って下さい!」
ガチン
瀬能「ア、イタっ」
マニやん「お前も行くんだよ、バカ!」
兵士「お前はここで戦うんだ」
タダメシ「やめろ! はなせ! はなせ!」
兵士「お前はここで、賭けの対象となるんだ。賭ける方じゃない、賭けられる方だ。」
タダメシ「おい、どういう事だ!」
兵士「ここは闇闘技場。お前の様な人間のクズが送り込まれてくる場所だ。」
タダメシ「と、闘技場?・・・闘技場?はぁ?」
兵士「喜べ、人間のクズ。お前はここで何かと戦う。戦って勝てば、お前に、勝者の報酬が与えられる。」
タダメシ「報酬・・・?金が、金がもらえるのか?」
兵士「そうだ。勝てば報酬が与えられる。その為に、お前には、お客様から莫大な金が賭けられるのだ。お前は、その賭けられた金に見合う働きをしなければならない。命を懸けてな。」
タダメシ「勝てば、、、勝てばいいんだな?勝てば?」
兵士「そうだ。勝てばな。」
タダメシ「負けたら、・・・・もし、負けたらどうなるんだ?」
兵士「そんな簡単な事を聞いてどうする? ここには敗者はいないんだよ。」
タダメシ「どういう意味だ?」
兵士「その無い頭でようく考える事だな。」
タダメシ「・・・・ふざけるな! とにかく、俺を放せ!金をよこせ!」
兵士「・・・お前。ほんとに頭、空っぽか?」
タダメシ「お前!よく分からないが、俺を侮辱しているな? それだけは分かるぞ? ・・・・うまく言えないけど、すごぉく、馬鹿にしているだろ?俺を!」
兵士「あああ。・・・・お前はこれから、魔獣と戦う。戦って勝ったら金が貰える?いいか?」
タダメシ「そこは分かった。勝てば金が貰えるんだな?」
兵士「そうだ。戦って負ければ、死ぬ。」
タダメシ「・・・誰が?」
兵士「お前だよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」
タダメシ「ふっざけんなよぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉっぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお」
兵士「ふざけてねぇよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
タダメシ「・・・負けたら死ぬのか? 死ぬのか、俺は。」
兵士「はぁ・・・はぁ・・・・はぁ。ようやく理解したか、人間のクズめ。ついでに、頭の中も空っぽの奴め。」
タダメシ「だが、だが、勝てばいいだけの話。勝てば、金が手に入る。そうだろ? ふはははははははははは ふはははははははははははは」
兵士「・・・コイツ、本当のクズだ。ギャンブルで頭の中を焼かれてやがる!手がつけられねぇ・・・・。」
傭兵「逃げたぞ!追え!追え!」
傭兵「捕まえて殺せ! 全員、殺せ!」
アタルバベーダ「何やら、騒がしいようだが?」
側近「は。・・・どうやら、ネズミが潜り込んだと報告がございます。」
アタルバベーダ「ネズミ? ほぉ。妾の宮で、ネズミが出たと申すのか? これは傑作よのぉ。」
側近「誠に申し訳ございません。」
アタルバベーダ「よいよい。ネズミも命懸けよのぉ。・・・妾の宮に入り込むとは。よいか、早々に始末せい。ネズミの血で、妾の宮を汚すのではないぞ?よいか?・・・・もし、汚れた場合、お前の首が飛ぶとしれ。よいな?」
側近「はっ! いますぐ!」
アタルバベーダ「妾にあだなす者はネズミたりとも容赦はせんぞ! よいか!見つけ次第殺せ!」
側近「は!」
アタルバベーダ「そうだ。良い事を思いついたぞ?・・・・余興だ。そのネズミで、賭けを行う。今から、ネズミが生きていられる時間を賭ける。さぁ賭けろ、賭けろ、ネズミの余命を賭けろ!なんだ?あ?・・・・・賭けが成立しないだと?ネズミは直ぐに殺されるから?賭けにならない、だと?・・・・・くっっくっくっく。だから余興と言ったのだ。賭けろ、賭けろ、もしかしたら大穴が出るかもしれんぞ?くっくっくっくっくっく」
マニやん「おい、なんなんだよ、あれ! 闘技場か!」
トレイジア「止まらないでぇ!」
アリシア「なにあれ? 大きな女の人の像が、立ってるけど?」
瀬能「あれが噂に名高い、ゴールドバーグの創始者、ゴッド・オブ・ゴールド。GOG、その人です。」
アリシア「女? 女だったの?」
マニやん「なんちゅぅぅぅぅかぁ、何十メートルあるのか分からないけど、でっかい自分の像を建てるなんて、趣味、悪いよな。」
瀬能「マニやんとどっこいどっこいじゃないですか?」
マニやん「なんだとぉ!」
トレイジア「自分の、巨大な像を立てるって、権力者がよくやる事よ。像は権力の象徴だもの。大きければ大きいだけ、自分の権力を示せるんだから。」
マニやん「それにしてもデカいな。どれだけ自己顕示欲が強いんだよ?」
瀬能「皆さん、見て下さい。あれ。・・・あれ!」
アリシア「あれ、ってなに?あれって。」
瀬能「闘技場です。闘技場の中。あれ、タダメシじゃないですか?」
トレイジア「あ、ほんとだ。タダメシだ。」
マニやん「あいつ、魔獣と戦ってんのか?」
トレイジア「戦っているというより、遊ばれているっていうか、じゃれられているっていうか、半殺しよね。かわいそうに。」
瀬能「ネコがヘビとかネズミをああやって、半殺しにして、遊んでますよね。ネコにしてみればただ遊んでるだけ。」
アリシア「・・・魔獣に遊ばれているってこと?」
マニやん「あれだけの魔獣だ。殺意があったら一瞬で息の根を止めているだろ?そうしてないのは、あいつを玩具だと思っているからだ。玩具の間は殺されない。半殺しだ。飽きるまで、ああやって半殺しの目に遭う。」
トレイジア「ズタボロじゃない。ああなっちゃ、早く、とどめを刺されて楽になった方がいいんじゃない?」
瀬能「しょうがないですよ、玩具なんですから。」
アリシア「生き地獄ね。生き地獄。」
瀬能「ナンマイダ、ナンマイダ、短い間でしたが、タダメシ。成仏して下さい。」
アリシア「まだ死んでないから。」
トレイジア「じゃ、どうするの?」
マニやん「私に良い案がある。」
アリシア「・・・聞きたくない。聞きたくない。」
マニやん「まあ聞け、昭和アニメ。・・・私達はこのまま戦っても、先に進んでも、後に戻っても、どのみち袋小路だ。圧倒的に、敵の数が多過ぎる。」
アリシア「昭和アニメってなによ?せめてヒロイン顔とかいいなさいよ?」
トレイジア「敵の数が多いっていうのは敵の本拠地だから、当然じゃない。そのつもりで斬り込んできたんだから。」
マニやん「それにしたって、犬死はごめんだ。ここに闘技場があるって事は、ここが敵の本丸と考えていい。金目のものも取れずにただ死ぬだけなんて、私は、まっぴらごめんだ。」
瀬能「それは一理あります。」
マニやん「だろ? 闘技場っていうのはな、言っちゃえば、見世物小屋なんだよ。人間でもいいし、動物でもいいし、戦わせて、それを見せる、見世物小屋なんだよ。いいか、よく聞け。闘技場は、戦うショーを見せる為に、裏側は効率的に出来ている。見世物の交換や運搬を素早く行わなければならない。チンタラやってたら客が帰っちまうからな。」
アリシア「それで?」
マニやん「ここに搬入用のエレベーターがある。」
アリシア「エレベーターなんてあるの?」
マニやん「エレベーターかどうかは知らねぇけど、上に繋がっている通路があるはずだ。剣闘士やら魔獣を搬入する専用のだがな。」
アリシア「じゃ、そこに入れば、上に逃げられるのね。」
トレイジア「地上に逃げられればこっちの勝ちね。」
瀬能「そう上手くいきますかねぇ」
マニやん「お前、うるさいんだよ。他にいい案、あるのか?お前、ねぇだろ?」
瀬能「ひどい。すぐ人をそうやって、アホ扱いする。マニやんの言う通り、まったく考えがありませんけど。」
マニやん「お前、ほんとひっぱたくぞ?」
瀬能「いつもひっぱたいてるくせに。」
マニやん「それでだ。作戦は、こうだ。あそこにいる、エサ。あいつを文字通り、エサに使う。囮だ。囮。私達は、ここから一気に、闘技場の中に乱入する。あの意気がっている魔獣を焚き付け、暴れまわらせ、その隙に、搬入エレベーターでトンズラだ。」
アリシア「マニやんは悪い事はすぐ浮かぶのね。」
トレイジア「今、それしか作戦はないな。残りの装備を考えても、一気に逃げるしか方法がない。」
アリシア「やりますか?」
瀬能「じゃあ私が景気づけに、四尺玉花火をぶち上げましょうか?」
アリシア「いいねぇ」
マニやん「お前、バカか?」
アリシア「花火、綺麗でいいじゃない?どうせ逃げ場がないんでしょ? だったら、ぱぁ~っと打ち上げて、景気よく行きましょ!」
瀬能「はい、四尺玉でぇす。」
トレイジア「爆弾じゃない!」
マニやん「お前、こんな所で、こんなもんに火ぃつけてみろ! 大爆発起こすぞ!」
瀬能「いいじゃないですか、どうせ、死ぬんだし。」
マニやん「死なねぇよ、バカ!」
瀬能「はい、着火!」
マニやん「お前、なにやってんだよぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおお!」
トレイジア「逃げるわよ! とにかく闘技場の中に走ってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
アリシア「うわぁぁぁっぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁ、お母さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁっぁん!」
瀬能「30秒程度しかありませんよ! 走る走る走る!」
マニやん「お前、あとで、覚えておけよ!生きてたら絶対、ぶっ殺してやるからなぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁぁぁぁぁ!」
瀬能「マニやん、そんな事言いながら走っていたら舌、噛みますよ?」
マニやん「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ」
兵士「いたぞ!」
傭兵「殺せ! 殺せ!」
兵士「始末しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
25 ・ 24 ・ 23 ・ ・・・・・・・ 8 ・ 5 ・ 2 ・ ・ ・・・・・・・ ゼロ チチチチチチチ チチチ チィ
マニやん「お前等、耳、塞げぇぇぇぇぇぇぇぇぇ、目ぇ閉じて、指で押せぇぇぇぇぇ、目玉と鼓膜がやられるぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
アリシア「そんな器用な事、できないよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉ」
瀬能「あははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは」
カ
スゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥー
ドドドドドドどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉオドドドドドドドドドドドドおおおドドドドドドドドドドオドドドオドドドドドドドドドオドドドドドドドドドドドドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオドォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォオンンンン!
ガガラガラガラガラガラガラガラガラガシャァァァッァァッァァッァァッァァァッァン!!!!
ドッカァァッァァァッァァッァァッァァァッァッァァァァァアアアアァァァッァァッァッァァッァァァン!!!!!
ガラガラ バタン!
マニやん「ゲホ ゴホォォ お前等、生きてるか? ガハァ」
アリシア「なんとか、ゲホゲホ 生きてるぅわぁ」
トレイジア「ああ、もう。闘技場の下に飛び込んだおかげで、命拾いしたわぁ。あああああ、もう、嫌! もう!生きてるのが不思議よぉぉぉぉぉぉぉ!」
マニやん「あのバカはどうした?あのバカは?」
瀬能「はぁぁぁぁぁぁぁぁい、生きてますよ?」
マニやん「どうしてお前は生きてるんだよ? ああ、もう。瓦礫の山だよ。闘技場もクソもねぇよ。」
アリシア「ああ。あの女の人の像も、顔が半分、すっ飛んでる。・・・・凄い破壊力だったのね。」
トレイジア「当たり前でしょ?花火って爆弾なんだから。火薬が入ってるのよ、あの中。」
アリシア「・・・・逃げましょ? とにかく逃げましょ? 逃げるのが先決よ!」
マニやん「そうだな。当初の予定と関係なくなっちまったが、逃げるぞ、いいか、この奥だ、この奥の搬入エレベーターで逃げるぞ! 行くぞ!」
兵士「アタルバベーダ様、ご無事ですか?」
兵士「火を消せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
兵士「生きている者は、消火と救護に当たれぇぇぇぇぇぇっぇ、急げぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇぇぇっぇぇぇ!」
兵士「部隊を組んで、鎮圧を急げ!」
アタルバベーダ「よくも、よくも、妾の、妾の宮をぉぉぉっぉぉぉぉ。許せん。許さんぞ、ネズミの分際でぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇぇ! よく聞け、妾の兵どもよ! いますぐにこの宮を破壊した重罪人を殺すのだ! よいか、必ず殺せぇぇぇぇぇぇぇぇっぇ! 形が残らなくなるまで殺すのだぁぁぁぁぁぁぁ! 闘技場の全ての魔獣を開放しろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおお!」
兵士「アタルバベーダ様、魔獣を開放してしまったら、我々も対処が出来ません! ぎゃぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ」
アタルバベーダ「妾に命令するなっ! 命令を出すのは妾だ! お前達は妾の命を聞いていればよいのだ! いけぇぇぇぇぇぇっぇ、殺せぇぇぇぇぇぇぇっぇ!」
兵士「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁっぁぁっぁぁぁっぁっぁぁぁ」
兵士「うぎゃややうあやっぁゃゃゃぁよぁゃゅあゃ」
マニやん「やっぱり思った通り、搬入用のエレベーターがある。上のカジノに繋がっているみたいだ。急げ、乗れ!」
トレイジア「ああ、もう、ほんと、さっきは死ぬかと思ったんだから。セノキョン、いい加減にしなさいよねぇ?」
アリシア「爆弾って、爆発する前、音がなくなるのね。・・・初めて知ったわ。」
トレイジア「そうよ。爆発すると、最初に、衝撃波がくるもの。中学生で習わなかった、光の次に早いのは音だって。」
瀬能「あのぉ、皆さん、誰か、こちらに向かって、歩いてきますよ・・・・・・タダメシです。」
アリシア「タダメシさん! 生きてたのね!」
マニやん「よぉ、財布泥棒。お前、生きてたのか、あの爆発騒ぎで。・・・・・騒ぎを起こしたのはこっちの所為だけど」
タダメシ「ええ。姐さん達のおかげで、あの、魔獣もすっ飛んでいきました。はははははは。俺は運がいい。」
トレイジア「あなた、腕も足も、反対の方に曲がっているけど、大丈夫なの?頭だって、穴、あいてるし。」
タダメシ「こうやって姐さん達と話が出来ているんだから、死んでいないんでしょう。死んでいなければ問題ありません。俺は、賭けに勝ったんです。」
マニやん「随分、悪運がいいなぁ、お前・・・・」
アリシア「タダメシさん・・・・持って行った私達のお金。お金だけ返して、ね?」
タダメシ「はははは ははは はは・・・・・姐さん。残念ですが、金はありません。もう摩ってなくなってしまいました。」
アリシア「コノヤロウ!」
タダメシ「姐さん。・・・俺は、裏カジノの賭けに勝ったんだ。俺に多額の金が賭けられている。その報酬金が入ってくる。ああ、借りた金は返してやるよ?何倍も何十倍、何百倍にしてなぁぁぁぁぁ くははははははははははっはははははは!」
マニやん「・・・最初からキレてる奴だとは思っていたが、こいつは相当だぜ?」
瀬能「そうですか?」
マニやん「お前も相当だけどな?」
タダメシ「姐さん。俺の事を助けにきてくれたんだろう? 嬉しいよ。 姐さん。 さぁ、俺を助けてくれよぉぉぉぉ、くはははははははははははは くははははははははははははは」
アリシア「・・・うわぁ、気持ち悪いぃ。」
タダメシ「逃げな」
グシャ
アリシア「タダメシさんが、タダメシさんが・・・・・」
魔獣「グゴォォォォォォォォォォ! グォォアォアォアォアォァオァオァオァオァオァオァオオオオオ!」
トレイジア「あいつ、生きてたのか!」
瀬能「おのれぇぇぇぇタダメシのかたきぃぃぃ、秘拳、ナメクジ拳!・・・・・うわぁ、ちょっと首、首、ひっぱらないで下さい!」
マニやん「逃げるぞ、バカ!」
トレイジア「あの威力の爆弾で、死なないのか、こいつは? あんな至近距離で爆発したんだぞ?」
アリシア「なに、あいつ! 火ぃ吹きながら、吹雪、吐いてる!」
マニやん「もうあんなのに構うな、搬入口から逃げればこっちのもんだ!」
瀬能「ばぁ~か!ばぁか! 命拾いしましたね、このクソザコ魔獣ちゃん! 今度会ったらフライドチキンにしてあげます!」
魔獣「ガガガガガァァァァァァァァァァ! ガホォフォァオフォアァオァオァオァオァオゴアオアオァオァオァオァオア!」
ズヅゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン ズドゥゥゥゥゥゥガゥアゥアゥアゥアン
瀬能「怒ってる、怒ってる!」
マニやん「お前、余計な事、すんなよ!」
アリシア「追いかけてくるわよぉぉぉぉぉぉぉっぉぉ!」
マニやん「走れ、走れ、走れ!」
アリシア「もう待ってよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
兵士「逃げろ! もうここはダメだ、もたない!」
傭兵「落ちるぞ! 上壁が落ちるぞ! ガヤヤヤヤヤヤヤヤッヤヤッヤアアアアアアア!」
アタルバベーダ「なにをしている! 妾の兵なら、なんとかしろぉぉぉぉぉぉぉぉ! なんてことなの、なんてことなの、なんてことなのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
側近「アタルバベーダ様、お逃げ ギャァッァァァァァァァァァァッァァァァ!」
アタルバベーダ「妾の宮が。黄金の宮がぁ・・・・・・・・・ああああ ああ あ」
黛「え? GOGが落ちた? え?え?どういう事? 俺、なにもしてないけど?」
ジュジュ「原因不明のトラブルです。ああ、もう、生配信中なのに、全線、ブラックアウトです。」
黛「え?え? そういう場合、どうなるの?」
ジュジュ「・・・どうする事もできません。お手上げです。」
黛「あ、ああ、そうなの。 じゃ、休憩?」
ジュジュ「黛さん、いったい何を言っ・・・・・ええ。そうです。休憩を取りましょう。若菜さん。」
若菜「・・・・はい?」
ジュジュ「機材トラブルです。一旦、状況がわかるまで休憩です。」
若菜「あ、そうですか。」
黛「おつかれちゃぁぉあぁぁぁぁん」
若菜「あの、どれ位で状況が分かるんですか?」
ジュジュ「うん。なんとも言えないです。今、システム部に連絡、取ってみますから。」
若菜「もし、時間がかかるようだったら、家に帰りたいんですけど?」
黛「あ、ああ、いいんじゃない?」
若菜「・・・・あの、今日の分も、お給料は出るんですよねぇ?そちらのトラブルなんだから、お金、出してもらわないと。」
黛「あああ、ああ。ああ、もちろんだよ。こっちの所為だからね。うん。じゃあ、・・・若菜ちゃん。また、よろしくね。よろしくね。」
若菜「お疲れ様でしたぁぁ。」
ジュジュ「・・・・システムはバックアップがあるので、すぐ復旧は可能ですが、問題は原因ですよ、黛さん。」
黛「・・・そんな深刻な問題なの?」
ジュジュ「コーネリアス社長が言っていたじゃないですか。このカジノシステムは暴走しているって。・・・・もう、人間の手に負えるものではないのかも知れませんね。」
黛「コンピュータなんてさぁ、ファミコンと一緒じゃん?コンセント抜いて、刺せば、元に戻るんじゃねぇの? ジュジュちゃん、そんな深刻に考えなくても。」
ジュジュ「大沢さんに報告してきます。場合によっては、この案件はここで撤退した方が無難かも知れませんね?・・・・自分達で管理できないものはいずれ手を咬まれますよ。」
黛「そんなもんかねぇ。」
ジュジュ「あの、日本人ディーラーは逃げ出さないように捕まえておいて下さい。システムは使えなくても、人間は役に立ちますから。・・・・いずれね。」
黛「ああ、ああ。あ、うん。・・・あのさぁ、最近、ジュジュちゃん。大沢さんに似てきてない?ううぅん、怖いよ?もっとほら、顔が可愛い・・・・んだからさぁ?」
ジュジュ「・・・顔がいいのは、生まれつきです。」
黛「ああ、そうなんだ。今のはお世辞だからね。真に受けないでね。」
トレイジア「もう少しで地上よ!」
アリシア「うわぁぁぁ、なんとかぁ、逃げ切れ・・・・」
瀬能「追ってきますよ!魔獣ちゃんが!」
マニやん「お前、人に乗っかってないで自分で走れよぉぉぉぉぉぉ!」
魔獣「ギャワァァァァァァァァァァァァァァァァ! グギャァァァァァァァァァァァッァァ」
ズボォォボボボボォォォォォォォォォォォ!
トレイジア「出た!地上よ!」
マニやん「そのままカジノフロアへ突っ込め、奴は狭い所なら、身動きが取れないはずだぁぁぁぁぁぁぁ!」
ズガンァァッァァッァッァァァッァン ズドォォォォァオァァァァァオァオァオァオァオアン!
客「なんだ、あれはぁぁぁ、魔獣ぅぅぅっぅぅぅぅ!」
客「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ」
客「逃げろ!逃げろ!」
フロア係「警備兵を呼べぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ! 逃げろぉぉぉぉっぉぉぉぉ」
客「うわぁぁぁぁぁぁぁっぁぁっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
ズバァァァァァァァァァ! ブォォォォォォォォォォォォォオオオオオオ! ブォォォォォォォォォォ! ゴォォォォォォォォォォオオオオオオオオオオオ!
客「ギャァァァァァァァッァァァァァァ」
客「キャー!」
客「グワァァァァァァ」「あああああああああああああ」
客「なんであんな魔獣がカジノに出てくるんだ!」
フロア係「闘技場から逃げ出したのか? それにしても、巨大過ぎる! あんな化け物、飼っていたというのか?」
客「逃げろぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
瀬能「暴れまわってますねぇ」
マニやん「いい加減、降りろ!バカ!」
瀬能「いて」
トレイジア「・・・それでどうする?このままトンズラする?」
マニやん「トンズラするか?」
アリシア「ちょっと、それは、どうかと思うよ? カジノをこんなに破壊しちゃって、それで逃げるなんて、人としてどうかと思うけど?」
瀬能「アリシアさんは昭和アニメだから、正論、かましますね。」
マニやん「お前の気持ちも分かるけど、私達じゃ正直、この状況、どうすることも出来ないぜ?」
アリシア「せめてあの魔獣、あれを瀕死くらいには出来ないかな?」
トレイジア「どうするって言ったってねぇ?」
瀬能「あと、四尺玉が1個、ヘビ花火が12個、あと、ロケット花火が・・・・」
トレイジア「中学生の花火遊びか!」
アリシア「・・・・中学生が四尺玉の花火は、打ち上げられへんやろうぉぉぉ?」
トレイジア「突然の大木ひびき、こだま!」
マニやん「こいつをアレに食わせて、中から破裂させれば、まだ、チャンスはあるかもな? このままアレを野放しにしても被害が出るだけだ。」
瀬能「なんですか、急に、主人公みたいな事、言い出して。あ、わかった。フラグですね。私がここを守るからお前達は行け!ってやつ?」
マニやん「さっきお前がやったやつか?」
アリシア「でも、そうするしかしょうがないでしょうね。・・・あれを暴れさせておけば被害が出る一方だし。」
アタルバベーダ「見つけたぞ! ゴキブリ共めぇぇぇぇ! 妾の宮を、妾の宮を、汚れた血で汚しおってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
アリシア「・・・誰?」
マニやん「・・・・・?さぁ?」
トレイジア「! あれよ、あれ、闘技場の巨大像! 巨大像のアレよ!」
瀬能「・・・ゴッド・オブ・ゴールド。アタルバベーダ・・・・」
トレイジア「本人? 本人?」
アリシア「めちゃくちゃ怒ってるんだけど?」
アタルバベーダ「小娘どぉぉぉぉっぉぉもおおおぉぉぉぉぉぉぉ、殺してやる、殺してやる、殺してやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」
ビュルルルルルルルルル ビュルルルルルルルルルルルル! ビュルルルルルルルルルルウルル!
マニやん「なんだ、なんだ!体が動かないぞ? うわぁ!」
トレイジア「くそ! 身動きが取れなぁいぃぃぃぃぃぃ」
アタルバベーダ「妾のサイコキネシスで、お前達の動きは封じた。そのまま、捻り潰してくれるぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、ああああああああああああ、死ねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっぇぇ」
アリシア「キャァァァァァァァァァァ つぶ、潰されるぅぅぅぅ!アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!」
マニやん「トレイジア、魔法だ! 魔法!」
トレイジア「火炎魔法! あ!」
アタルバベーダ「そんな線香花火程度、造作でもないわぁぁぁぁぁぁぁ!」
マニやん「くっそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉ、このまま死んでたまるかかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
瀬能「線香花火で物足りないなら、ヘビ花火はいかがです?」
ポイ ポイポイポイ! ポイ!
アタルバベーダ「?」
マニやん「セノキョン、出し惜しみするな! 全部、火ぃつけろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
瀬能「欲しがりさんですねぇ。」
ポイッ! ポイポイ! ポイッ!
シュ カカカカ! ブリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュユウウウユゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ! ブッチブリュユリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュリュュョゥョウゥッュュュュュュウュウュウゥウュゥゥユュュウウウウュゥゥゥゥゥゥゥ!
アダルバベーダ「な、なんだ、この、この、大便みたいなものはぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁ?」
瀬能「だから、ヘビ花火です。知らないんですか?」
トレイジア「金縛りが解けた! いくわよ!」
瀬能「ついでだから、ロケット花火もプレゼントしておきます。 良い子は人に向かって発射しゃダメですよ?」
マニやん「逃げるぞ!」
シュワーン! シュシュシュスァーン! シュユン! シュユゥゥゥゥゥゥン!
アタルバベーダ「やめろ! 危ない! 至近距離から撃つな! あぶない!あぶない!やめてっぇぇぇぇぇぇぇぇ!」
瀬能「あ、そうだ。アタルバベーダさん。これも、差し上げます。とっても重たいからしっかり持っていて下さいよ?」
アタルバベーダ「え? え? え? なにこの大きな玉?」
マニやん「急げ!セノキョン、逃げるぞ!」
トレイジア「前みて走れ! 後ろを振り返るな!」
アリシア「なぁぁぁぁっぁんでぇ、こうなるのぉぉぉぉぉぉぉっぉぉぉ?」
瀬能「あはははははははははははははははははははは あははははははははははははははははははははははは」
マニやん「おい待て、セノキョン! 置いていくな!」
トレイジア「ああ、もう、なんで逃げ足だけ早いのよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
アリシア「待って、待ってよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ」
魔獣「グガァァァァァァァァッァァァァッァァァッァ グゴォゴォgォォゴゴゴゴゴゴォォ ??? グギョゴォォォゴゴゴォォ」
アタルバベーダ「なんじゃ、妾は、お前の飼いぬ」
アンムゥ
魔獣「グガァァァァァァァァァァッァァッァァァッァァッァァァッァァ! グゴォォゴォォゴォォォゴォォォォォォォォゴギャァァァァァ」
タダメシ「よう、ギャンブルの神様、奇遇だな。おかしな所であったなぁ? 魔獣の腹ん中で有名人に会うとは、俺も運がいい。」
アタルバベーダ「誰だ! 妾は首だけの奴に知り合いはおらん!」
タダメシ「そういうなよ? 一緒に地獄へ行こうぜ? くははははははは ああ、ギャンブルの天国かもな」
アタルバベーダ「妾は 妾は わ」
カッ
ドーン ドドドドーン バァァァァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァッァァァッァァァァッァン
シュレッダー「え? 町が消えた?」
ギルド職員「ああ。ゴールドバーグの町が消えたと、今、報告が入った。お前も、そっちの方に行く冒険者がいたら、迂回するように。近づかないように、案内しろ、いいな。」
シュレッダー「ええ。ああ、はい。分かりました。でも、消えたって?どういう事なの?」
ギルド職員「いや、まだ詳細は分からん。謎の、巨大爆発が起きたとしか。・・・・遠くから、綺麗な花火が見えたそうだ。」
シュレッダー「花火? どういうこと?」
ギルド職員「だから情報がないんだ。わからん。俺達は上から入って来たトピックを、冒険者達に案内するのが仕事だ。事件だか事故だか、分からないが、詳細は地元の警察組織が調べると思う。もちろん、我々冒険者ギルドも、警察組織から依頼があれば調査に協力する。」
シュレッダー「・・・詳細不明ってことね。」
ギルド職員「そういう事だ。」
シュレッダー「こんな真昼間に花火上げるバカがいるんだね?」
ギルド職員「そういう事じゃないだろ?」
マニやん「ケホォ ゲホ あああ、なんで、一日に二回も、花火を間近で見なくちゃいけねぇぇぇっぇんだよぉぉぉぉぉぉ、おい、お前等、生きてるか!」
トレイジア「うぅぅぅぅん、なんとかぁぁ ゲホホホ ゲホォ」
アリシア「あああああ、私は生きてる! 私は生きてるわぁぁぁぁぁぁ! あれ、セノキョンは? セノキョンは?」
マニやん「あ、あいつは。・・・・あいつは星になったんだ。私達を守って。星になったんだ。成仏しろよ」
瀬能「そうやっていつも私を殺すの、やめて下さい! 生きてますよ、ずっと、健康ですよ!」
アリシア「・・・財布は返ってこないわ、魔獣に襲われるわ、散々よ。・・・カジノに押し入ったのに、お金の一つも取れずに、なによ、これぇぇぇぇぇぇ。」
トレイジア「赤字も赤字、大赤字だな。」
マニやん「元々の目的が、”龍巫女の首飾り”だったよな。もう、・・・・いらないわ。」
アリシア「そうね。もう、いらないわ。別にどうでもよくなったし。」
瀬能「明日辺り、ニュースになると思いますよ。世界最大、最高のカジノを瓦礫の山に変えたったって。歴史的大罪人です。・・・・・マニやんが。」
マニやん「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ! なんで私がぁぁぁ?」
瀬能「だって主人公でしょ! 主人公っぽかったじゃないですか! 私達に命令してぇ!」
アリシア「・・・そうよ。マニやんが全部、やったのよ。」
マニやん「はぁぁぁ?お前まで!」
アリシア「エンガチョ、エンガチョ、マニやんエンガチョ! はい、縁きぃぃぃぃぃぃぃぃぃっ~た。」
マニやん「うるさいよ!」
トレイジア「じゃ、マニやん。あと、よろしく、私は行くから。じゃな!」
マニやん「おい!」
アリシア「元気でね、マニやん」
マニやん「待てよ! おぉぉぉぉぉぉい!」
瀬能「マニやんって人望なんいんですね。」
マニやん「お前にだけは言われたくねぇ! 待てよ、待てよ! 待てよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
コーネリアス”アタルバベーダが死んだのか? そうか? 死んだのか・・・・・・あははは ははははははは ははははははは はっははっははははははははは! 神は私を見捨てなかった。悪魔は死んだのだ。人の心を操り、良心を奪う鬼畜な悪魔は死んだんだ。ははははは ははははっはははははははははは”
ジュジュ「そうであればいいんですけど。コーネリアスさん。
あなたは理解していません。あの悪魔を。」
コーネリアス”どういう事だ?”
ジュジュ「既に、あなたのお仲間。カジノ協会の理事達はGOGを複製し、更に、改良し、世に解き放っているのです。改良なのか改悪なのか、それは歴史が決める事です。あなたのGOGは何らかの事故で、消滅してしまいましたが、もうすぐバックアップが起動する事でしょう。そのGOGは、過去の事例を参照し、改善策を導き出すはずです。より、凶悪な悪魔になってね。コーネリアスさん。あなたは、これからも、悪夢に苛まされ続けるのです。・・・残念ながらね。」
コーネリアス”・・・そんな。そんな、馬鹿な事って。ああ、神よ。神よ。”
ジュジュ「我々は、悪魔を買う事にしましたよ。これからも愚かな”日本人”の為に死ぬまで働いて下さい。・・・社長。」
コーネリアス”アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!”
トレイジア「一文無しじゃろくな冒険が出来やしない。」
アリシア「だから、”龍涎香”を見つけて、それを売ったお金で、装備を整えて、また冒険するんでしょ?」
マニやん「本当にこんな作戦、うまくいくのかよ?」
トレイジア「仕方がないでしょ?”龍巫女の首飾り”も無いんだし、セノキョンが貰った、下剤に頼るしかないじゃない。」
マニやん「ドラゴンに下剤が効くのかよ?」
ドラゴン「グゴォォォォォォォォォォォォ ズゴォォォォォォォォォォォォォ! ンゴ?」
アリシア「ドラゴン、一匹、発見!」
トレイジア「了解、了解、おい、セノキョン、準備はいいか!」
瀬能「はい、いつでもオーケーです あなたの町のスーパーオーケーです」
アリシア「じゃ、みんないくわよ! ドラゴンの口を開けさせる作戦、開始ぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
マニやん「おい! ドラゴン、口をあけろ!」
トレイジア「ドラゴンちゃぁぁっぁん、お口を開けてねぇぇぇぇぇぇ ほぉぉぉぉぉら、ほら!」
ドラゴン「ギャラァァァ?」
アリシア「あ、こっち、見た! ほら、口あけろ!」
ドラゴン「グギャァァァァァァァァァァァッァァァァッァァァッァァッァ!」
マニやん「口、開けたぞ!」
アリシア「今よ、セノキョン!」
瀬能「ほら、ドラゴン! 強力な下剤です! はい、あぁぁぁぁん? あぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁっぁ~ん!」
ポ~ッイ!
ドラゴン「ンン゛? グgァァァァァァァ ギャァァガガガガァァァァァァッァ」
マニやん「本当にこんな下剤、効くんだろうなぁ?」
瀬能「知りませんけど、強力だって聞きました。3か月便秘の人が一瞬で治るって。」
トレイジア「それ、死ぬでしょ?」
アリシア「あれ? ドラゴンの様子がおかしいわよ。顔が、顔が青い。」
トレイジア「ドラゴンに顔色なんてないでしょ?」
アリシア「ほら、急に動かなくなった。冷や汗かいてるし。・・・・・下剤が効いたのかな。」
ドラゴン「グギャァァァァッァ ズガファッァァァァァァァァァ!」
ズボズボズボズボォォォォォォォォォズボォォゾオゾズアウズァオァオァオzァオァオゾアォァオァオァオアオアオオアオズボォァオォアオァオァオオア!!!
マニやん「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァァッァァァァァァァァ」
トレイジア「してる、してる。・・・・ドラゴンの排泄、初めてみた。」
アリシア「ドラゴン、苦しそうよ? ははっは 大丈夫かな、このドラゴン?」
トレイジア「おかしなクスリ、飲まされたんだ。・・・・もうダメだろうなぁ。体中の水分っていう水分、もっていかれるだろうなぁ。かわいそうに。」
瀬能「マニやん、大丈夫ですか? いきなり排泄物の下に潜り込まなくても、排泄物は逃げませんよ?」
マニやん「おい! 早く、助けろ! いいから助けろ! 誰がすき好んでウンコの下敷きになる奴がいるんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
トレイジア「マニやん、こっちくんな! そのままウンコの中で、”龍涎香”探せよ? ウンコまみれ次いでだからいいだろ!」
アリシア「・・・マニやん、エンガチョ。エンガチョ!」
マニやん「うるせぇぇぇぇぇぇぇぇ、お前等みんな道連れだぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ」
アリシア「ギャァァッァァァァ」
トレイジア「うわぁぁぁぁ 引っ張るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああ」
マニやん「うはははははははは ざまぁみろ、お前等もクソ塗れだ! うははははははははははははは」
アリシア「くさぁぁぁぁぁぁい、ドラゴンのウンチ、くさぁぁぁぁぁっぁぁあい」
トレイジア「ああ、もう、これ、臭い、取れないだろぉぉぉ! ふざけんな、マニやん!」
アリシア・トレイジア・マニやん「あ!」
瀬能「ドラゴン、飛んで逃げちゃいましたね。・・・・下痢、大丈夫かなぁ。」
マニやん「おい、お前は、そこで何、呑気な面、してんんだ?」
アリシア「セノキョンは綺麗なオベベだねぇ?」
トレイジア「おい、お前も”龍涎香”探すの、手伝え!」
瀬能「嫌ですよ。どうして、ドラゴンの糞便の中に、入らなくちゃいけないんですか? 変態ですか? 皆さん、相当の変態ですよ?」
マニやん「うるせぇぇぇぇぇ! お前もウンコ塗れにしてやるぅぅぅぅう!」
ニュースキャスター「えぇえ、次のニュースです。数日前から行方不明の捜索が出されていた会社員、高橋照美さんですが、依存症更生施設の所有する土地から遺体で発見されました。同じく、同施設利用の男性が、高橋照美さん殺害と、遺体遺棄の容疑で逮捕された模様です。容疑者は、極度の潔癖症状を有しており、他者と同じ空気を吸う事すら拒絶反応が出る、精神疾患だそうで、容疑者と同室であった高橋照美さんを、同じ空間に存在していることが許せず殺したと、供述しているとの事です。また、容疑者は、世界中の人間を殺す事で、安息の日々が訪れるとも話しているとの事です。」
※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい。