実体のある虚構 第3集 i need you does not you need i
スマートフォンのトレーディングカードゲームに没頭する男。
ダン!ダァァン!
「うるせぇんだよぉ!何時だと思ってんだよ!死ね、カス!」
「・・・やめなよ、仕返しされたら怖いよ」
「うるせぇから、うるせぇって言ってんだよ!」
ダン!ドォオオオン!
「死ね、カス野郎!」
野口「・・・。」
カチ
「・・・そないなこと、おまえへんやろ?」
「はぁ?君とはやっとられへんわぁ」
ギャハハハハハッハハハハハハッハハ!
「では、審査員に評価を聞いてみましょう!」
ポチ
「今度、7枚目シングルで初めて、センターで歌います。ぜひ、皆さん。応援をお願いします」
「この娘、そそっかしいから、ファンの皆さん、応援よろしくね!」
「じゃ、歌の準備、お願いしまぁ~す。」
ポチ
「・・・ですから、枕営業は存在しているんですよ。」
「もし、仮に、そうだったとしたら大問題ですよ?人権問題ですよ?」
「だからさっきからそう言っているじゃないですか!」
「いったんCMです。」
ポチ
「・・・このワインは。この芳醇な香り、本物の1902年ものですね。」
「さぁぁぁて、本物のワインを当てられるかぁ!89連勝がかかっているぅううう!」
皇「フロッピー?なんだよそれ。」
瀬能「ファ教のお得様リストです。取引履歴もありますよ。幹部から貰いました。」
皇「・・・お前、あくどいにも程があるだろ?それにそんなもん、持ってたって何に使うんだよ?」
瀬能「どうしましょうか。あははははははははははははははははははは」
ティラティラティティ♪ティラティラティティティティ♪ ティラティティティティティティララララララララ♪ティティ♪
ファ「さぁ今こそ、我らの正義を示す時です!」
ティティティティラララララララ♪ティティティ♪ティラララララララティティ♪
野口「・・・」
皇「・・・。」
瀬能「・・・。」
皇「ファ教のゲーム、流行っているんだな。あんな、おじさんまでやってるぜ?」
瀬能「おじさんは関係ないと思いますけど。流行っているのは確かです。スマートフォン版のトレーディングゲームも出ていますから。」
皇「へぇ。」
ティラティラティティ♪ティラティラティティティティ♪ ティラティティティティティティララララララララ♪ティティ♪
野口「・・・」
皇「・・・食ったら行こうぜ?」
瀬能「ああ、待って下さい!」
瀬能「瑠思亜、待って。待って下さい。」
皇「私、ああいうの嫌いなんだよ。・・・あの、おじさん。音が漏れているの、わざとか?」
瀬能「・・・今時、ちょっと、子供でも分かる。非常識ではあると思いますけど。」
皇「だろ?・・・牛丼屋だから、っていっちゃダメなんだろうけど、店員も注意しないからな。」
瀬能「トラブルになったら嫌ですし。・・・最悪、刺されちゃったりしますから。そういう事件、後を絶たないですし。」
皇「ああいう、輩には近づかない方がいいからな。胸糞悪ぃ。」
瀬能「だから出てきちゃったんですか?」
皇「ああ。まだ、ホストとかキャバクラのホステスの方が、躾がいいわ。」
瀬能「それもどうかと思いますけど。そういう方々は接客業ですし。」
皇「食い直し、食い直し。杏子、行くぞ。」
瀬能「あ、待って。待って下さい!」
大木「野口さん、これ、お願いします。」
野口「ああ?」
大木「これ。発注入って来たんですけど、明日までだって。納品。」
野口「間に合わないだろ?」
大木「間に合わせろって、部長が。」
野口「だから、間に合わないって。」
大木「それは部長に言って下さいよ。じゃ、俺、定時なんで上がります。」
野口「お前?お前、帰るの?」
大木「いや、だって、俺、関係ないじゃないですか?それ、野口さんの仕事だし。ま、それに俺じゃ手伝えないし。・・・それ出来るの、うちの会社じゃ野口さんだけでしょ?専属っていうか、専門なの。」
野口「・・・そりゃあ。そうだけど。」
大木「じゃ、お先に。受注書、渡しましたからね。」
野口「・・・」
店員「お客様。お客様。」
野口「え?」
ティティティティラララララララ♪ティティティ♪ティラララララララティティ♪
店員「すみません。スマートフォンから音が。他のお客様の迷惑になりますから、ボリュームを絞って欲しいんですけど。」
野口「は?」
店員「ですから、店内で、電話、ゲーム、音楽、そういったものは、ボリュームを絞るか、店外でお願いした」
野口「わかったよ!もう来ねぇよ!こんな店!」
ファ「今こそ、我らの正義を示す時です!」
客「なにあれ?逆ギレ?」
客「怖い!」「逆恨みされるぞ?」「帰ろ!帰ろ!」「あの、おじさん、なんなの?」「頭、おかしいんだよ」
野口「・・・」
野口「出ろ!出ろ!出ろ!レアカード出ろ!出ろ!出ろ!」
テレッテレンテテレンレッレ~♪
野口「またザコカードかよ?・・・こっちは1万円も課金してんだぞ?出せよ!クソザコがぁ!」
ファ「また一人、我が偽清教に信徒が増えました。」
野口「次こそはSSのレア、出てくれ!お願いします。出てくれ、出てくれ、出てくれぇええ!」
「・・・見切り品、大特価でございます!ぜひ、総菜コーナーに足をお運び下さい!」
「只今、寿司、半額でぇぇぇぇぇす!はい、どうぞ!はい、どうぞ!」
「デザートもここから30%オフとなります。是非、お買い求め下さい!デザート、30%オフでぇぇ!どうぞ、どうぞ!」
野口「・・・」
「食パン、総菜パン、ええ、それから、コッペパン全品半額です。食パン、総菜パン、コッペパン、全品半額です!」
野口「3600円コースで。」
ホステス「ええ。お酒は何になさいます?」
野口「・・・ウーロンハイの水割り。」
ホステス「他に?なにか頼まれます?」
野口「・・・それは、コースに含まれているの?」
ホステス「いえ。別です。」
野口「じゃあ、ウーロンハイだけで。」
ホステス「・・・ああ。ええ。ありがとうございます。」
部長「・・・あれ、野口の奴、なにやってんだ?」
ティティティ♪テティラティラ ララ ティラ♪ティラララ ララ♪ララ ララティ♪
笠井「ゲームじゃないですか?部長はゲームやらないんですか?」
部長「あんな小さいのでゲーム?目が疲れるだけだろ?・・・この前、孫に、スイッチ買ってやったばっかなんだよ?ゲームもいいけど、勉強もして欲しいけどね。俺は。」
笠井「部長。そういうのダメですよ。年寄りじゃないんだから。」
部長「え?そうなの?」
ティティ♪ティラティ ラ♪ ティララ ララティティティ♪
部長「笠井君もやってるの?その、なんとかってゲーム?」
笠井「僕はやっていないです。スマホでゲームするならこっちです。こっち。・・・海ばっかりですけど。」
部長「・・・海物語かぁ。最近、やってないなぁ。」
笠井「けっこう出ますよ?」
部長「カミさんに遊ぶなら小遣いの範囲で、釘さされてるからなぁ。」
ヒデミ「ねぇ。ちょっと、アイカ!アイカったら!」
ティラララ♪ ティラティラン ティティティ♪ ティラ
アイカ「?」
ヒデミ「ちょっと、ちょっと、ちょっと。」
ファ「私達は、正義の名の下に、戦う仲間なのです!恐れる事は何もありません!」
ティラ ティティティ♪ ティラララティラン ティティティ♪
アイカ「?・・・あの、すみません。ヒデミさんに呼ばれているんで、席、離れますね。」
客「・・・ええ。」
アイカ「あの、どうしたんですか?」
ヒデミ「どうした?じゃないわよ。あんたねぇ、客の目の前で、接客もしないで、なに、スマホいじくってんのよ?」
アイカ「あ!ああ。あああ。すみません。つい。」
ヒデミ「ついじゃないわよ、あんたねぇ。ママに見つかったら小言じゃ済まないわよ。あたしで良かったから。まだ。」
アイカ「すみません。・・・つまんない客だったんで。話も面白くないし、酒もつまみもろくに頼まないし。」
ヒデミ「つまんなくても相手するのが、仕事でしょ?あんた、給料、もらっているんでしょ?」
アイカ「・・・ああ。はい。」
ヒデミ「給料分、働きなさいよ?いいわね?」
アイカ「・・・すみません。」
ヒデミ「・・・あたしがヘルプに入るから、少しは、仕事しなさい?いいわね?」
アイカ「・・・ありがとうございます。」
客「・・・。」
アイカ「すみません。お待たせしました。何か、飲まれます?」
ヒデミ「あの、よろしくお願いします。あの、ヒデミです。どうぞ。」
客「ああ、どうも。」
アイカ「ヒデミさんはこの店のママ代理で、このお店の生き字引っていうか、」
ヒデミ「あのねぇ、人のこと、年が長いだけみたいに言わないでちょうだい。ねぇ?」
客「ははははっははっははっは。」
ヒデミ「お客さん、一杯、頂戴してもよろしいかしら?」
客「ええ?ええ。・・・どうぞ。」
アイカ「それじゃぁお酒が来たら、乾杯しましょう。」
ヒデミ「お客さんはアイカちゃんみたいな娘がタイプなの?それとも、あたしみたいな、年上のお姉さん?」
客「はぁ。はははっはははっははははは。アイカちゃんもカワイイけど、ヒデミさんも貫禄があって、いいねぇ。」
ヒデミ「いやだ?聞いた?貫禄ですって。・・・いやになっちゃう。ちょっとこの仕事、がんばってやってるだけなのに。ねぇ?」
ヒデミ「・・・ありがとうございましたぁぁぁぁあ。ほら、あんたも。」
アイカ「あ、はい。ありがとうございましたぁ。」
ヒデミ「ああやって、少し、気持ちよくさせれば、なんだって、お金になるの。わかった?」
アイカ「・・・ヒデミさん。ありがとうございます。」
ヒデミ「あのねぇ。ママがいない時に、売り上げが落ちたら、あたしがママに言われるの。アイカもちゃんとしてくれないと、困るの、あたしなんだからねぇ?いい?」
アイカ「ほんと、ありがとうございます、ヒデミさん。」
店員「いらっしゃいませ」
店員(また、来た。)
店員(音漏れおじさんが来たわよ)
パネル「商品をタッチパネルから選んで下さい」
店員(また、いつもの卵かけご飯定食よ。)
店員(いつも同じ席、同じメニューよね。おまけに、スマートフォンの音を出して)
店員(耳、悪いのかしら?なんで音、消さないの?)
店員(音漏れおじさんだから。)
店員(・・・尿漏れみたいに言わないでよ!)
店員(注意して逆上されても嫌だし。)
店員「お待たせしました。卵かけご飯定食でございます。」
店員(早く食べて帰ってくれないかしら。)
ティラ♪ ティティテン ティ ンティティ♪ ティランティランララ ララ ティラ♪
野口「・・・」
ファ「私達は、私達の正義の為に戦うのです!さあ、共に歩むのです!」
野口「・・・」
店員(毎日、毎日、うるさいわね。よく来るわ。)
店員(行くところがないのよ。)
店員「消費期限でいいんですか?」
店員「そう。消費期限が今日の奴は全部、下げちゃって。」
店員「わかりました。」
店員「カップラーメンもですか?」
店員「全部、全部。」
店員「これ、全部、廃棄ですか?」
店員「そう。廃棄。」
店員「もったいないですね。」
店員「パクったらダメだからね。」
店員「誰も取らないですよ?」
店員「廃棄なのに貰っちゃダメなんですか?」
店員「これ、お店の買い取りだから。店長が食べるんだよ。」
店員「店長が?」
店員「欲しかったら店長の許可とって。」
店員「あ、じゃあ、店長がいいって言わば、もらっちゃっていいんですか?」
店員「そうだね。」
店員「おにぎり、パン、スイーツ。ほんと、勿体ないですよね。」
店員「これ、こんなに廃棄って、どう考えても店長の発注ミスでしょ?」
店員「・・・はははははは。」
店員「もう少し考えて店長も発注しないと。ま、バイトの俺が言うのも変だけど。お店の心配しちゃうよ。」
店員「いらっしゃいませ。あ、私、レジ、いきます。」
店員「よろ~」
店員「コンビニって、親会社の言いなりだから。」
店員「・・・うまく店がまわればまわったで、休みもないし、売り上げ悪ければ、こっちの所為だし。もう、親会社ばっかり儲かる仕組みですよ。」
店員「やり方はヤクザと一緒だからな。」
店員「・・・考えて店、出さないと、大損するよ。」
店員「バイトだけで回るようにしないと。店長、夜のシフトですよ?あの年齢で?私、自分があの歳で、深夜オールで働けないですよ?」
店員「それはオーナーだから仕方ないんじゃない。自分で始めたんだから。辞められないでしょ?」
店員「・・・私も、この店、なくなったら困りますし。学校、行っている間だけでも。」
店員「みんなそうだよ。」
アイカ「額賀さん、このゲーム、知ってます?」
額賀「僕は、スマホでゲームはやらない性分なんだ。」
アイカ「額賀さん。ノリが悪ぃぃぃい。」
額賀「ほら、スマホでゲームなんかやりだしたら、ずっとやっちゃうだろ?だから最初からしないようにしているんだ。」
アイカ「凄い。さすが額賀さん。」
ヒデミ「アイカったらお客の前で、ゲームしているのよ?」
額賀「え?それはマズイよ、アイカちゃん。キャバクラって言ったら、一番の接客業じゃないか?」
ヒデミ「そうなの。それにこの娘、けっこうお呼びがかかる娘だから、ある程度、礼儀を教えておかないと、他の娘の為にもよくないのよ。」
アイカ「だから、ヒデミさん。その件は謝ったじゃないですか?」
ヒデミ「謝って済む話じゃないから、こうやって、言っているんじゃないの?ママに知れたら大目玉よ。」
額賀「そうだよ、アイカちゃん。キヌヨママは怖いから。」
ヒデミ「怖いってもんじゃないわよ?地獄よ、地獄。・・・アイカは、ママの怖さを知らないから。」
アイカ「ママってそんなに怖いんですか?」
額賀「・・・まぁ。そうだね。ほら、うちのオーナーに気に入られている位だから。」
アイカ「へぇ。」
ヒデミ「ゲームもほどほどにしなさいよ?・・・ママは若い娘には甘いのよ。稼ぎ頭だから。」
額賀「ヒデミさんが一番の稼ぎ頭でしょ?」
ヒデミ「あたしはもう、裏方よ。裏方。あたしとママは裏方。若い娘にがんばってもらって、お店の売り上げを伸ばしてもらわないと。だから今日だって、大枚はたいて、額賀さんの所に連れてきてあげているのよ?感謝しなさいよ?」
アイカ「わかってますって。ヒデミさん様々ですもの。」
ヒデミ「・・・まったく。本当に、わかっているのかしら。ねぇ。」
額賀「まぁまぁ。今日はその辺で。・・・お仕事帰りでしょうから、くつろいで帰って下さい。」
アイカ「ナンバーワンの額賀さんの顔を見られただけで、今日はラッキーです。」
ヒデミ「あんたねぇ。額賀さんがあたしの顔を立てて、こうやって、付いてくれているの。あたしにも感謝しなさいよ?いい?」
ポチポチ
「今度の政治改革では裏金問題を一掃していきます」
「やれない事を言うな!」「国民をだますな!」
「あなた方もそうでしょ!我々だけの話にすり替えないでいただきたい!」
ポチ
「でも、おかしいでしょ?その、オレオレ詐欺だっけ?」
「特殊詐欺ですね。」
「あ、そのオレオレ詐欺。トクリュウ。
「特殊流動型犯罪」
「違います。匿名、流動系の犯罪グループです。」
「ほら、ミヤネさん。ちゃんと勉強しないと。」
「ですからね。そのトクリュウ。犯罪を行うくせに、コンビニとか牛丼店では、ちゃんとお金、払うんですよ。おかしいでしょ?犯罪者なのに?」
「昨今の、若者の、価値観ですよね。強盗とか詐欺は行うくせに、自分達が世話になっているコンビニ、牛丼店には、しっかりお金を払うっていう。律儀というか、当たり前なんじゃないですかね。あるのが。犯罪を犯す場所ではなく、彼らにとって、生活の一部だから、そういった店を襲うという発想がないのかも知れません。」
「反対に、コンビニを襲うのは高齢者ですよ。やはり、犯罪に至っても若者と価値観が違うのかも知れませんね。」
「そういうものなんですね。じゃ、天気予報。ホウライさん!」
ポチポチ
「ええ。この角を曲がると、中央銀座商店街に繋がっていきます。さて、この商店街では、美味しい物に巡り合うでしょうか。楽しみです。」
カチ
「偽清教トレーディングカードゲーム、今なら、8連ガチャ、無料!」
「俺達でファ様を助けようぜ!」「ファ様の為ならこの命、惜しくない!」「言い過ぎぃぃぃぃいい!」「ナハハハハハ!」
ポチ
「・・・保護猫と最後のお別れとなりました。猫もなかなか離れようとしません。」
「ほら、新しい飼い主さんだぞ?」
「まったく離れようとしません。初めて出会って、4か月になります。その絆は、とても深いのかも知れません。」
野口「3万円だ。3万円。3万も注ぎ込んだんだ!次こそはSSのレアカードを引き当てろよ。SSだ。レアだ。頼むぞ!いいか!」
テッテレ~♪テレテレテテ テレッテレ~ テテテッテテテテテテテ テテン♪
野口「ああああああああああああああああああああ!・・・また、ザコかよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!ふざけんな、このクソ野郎が!」
ファ「また、新しい仲間が増えました。共に正義の為に戦いましょう!」
野口「なんでだよ?どうして出ないんだよ?幾らこれに注ぎ込んだと思ってんだよ!死ねよ、ザコが!クソ、クソ、クソ!」
「ホイコーロー弁当、半額です!ポイント、10倍です!ホイコーロー弁当、半額!ポイント、10倍!閉店まで20分ですよ、お急ぎ下さい!」
「ブリの照り焼き、ノドグロの煮つけ、30%オフです。鮮魚コーナーも、只今、セールです!お急ぎ下さい!」
「おい、カップ麺の箱、どこ置いた?」「ケースは棚の前です」「醤油も出しておけ!いいな!」「水、切れちゃいました!」「もう閉店だからそっちはいいや。あるもの、出せ!」
「ホイコーロー弁当、あと、3つですよ!半額です!半額!」
野口「・・・」
タムラマロ「あ、どうも。はじめまして。タムラマロです。」
ヒデヨシ「あ、ヒデヨシです。」
ヨシミツ「・・・ヨシミツです。」
ヒデヨシ「ミツヒデさんから、連絡はまだですかね?」
タムラマロ「・・・。まだ、みたいです。」
ヒデヨシ「集合場所、ここで合ってますよね?」
タムラマロ「駅前牛丼屋集合だから、合っているよ?」
ヒデヨシ「あの、すみません。僕、こういうの、初めてで。」
タムラマロ「あ、そうなの?・・・俺、何回かやっているから。」
ヒデイエ「・・・」
ティラ♪ ティティティティティン ティン♪ ティラララララ ラララ ティラン♪
タムラマロ「まあ、ここまで来ちゃったら、もう、腹くくるしかないよ?」
ヒデヨシ「・・・あの、そこら辺は大丈夫なんですけど。・・・お金だけちゃんと貰えるのかなって?」
ファ「さあ、正義の鉄槌を下すのです!」
タムラマロ「そこ?」
ヒデヨシ「はい。・・・金が手に入れば、別に、他の事はどうでもよくて。ええ。」
タムラマロ「俺はぁ、この手のバイトで、百万、稼いだよ。」
ヒデヨシ「え?百万も。」
タムラマロ「ああ。・・・こういうのも信頼っていうの?安心して任せられる奴が必要じゃん?・・・客から品を受け取るのも、信頼だからね。」
ヒデヨシ「・・・凄いっすね。俺も百万稼ぎたいなぁ。」
ティティティティティ ティララララン♪ ララララ♪ ティティティティティ♪
ヒデヨシ「あの。ヨシミツさんも、この仕事、長いんスか?」
ヨシミツ「・・・」
ヒデヨシ「・・・。」
ヨシミツ「・・・」
ヒデヨシ「・・・あの」
ヨシミツ「え?・・・ああ。聞いてなかった。なに?なんだって?」
ヒデヨシ「こういう闇バイト、いっぱいやっているンか?」
ヨシミツ「ああ。俺、ウケセンなんだよね。」
ヒデヨシ「ウケセン?」
ヨシミツ「ああ。受け子、専門。」
タムラマロ「・・・一番、リスクが高いから、バイト代が一番高いんだよ。」
ヒデヨシ「へぇ。そうなんスか。へぇ。」
ヒデヨシ「あの、捕まった事、あるんスか?」
ヨシミツ「・・・」
ヒデヨシ「あの、ヨシミツさん?」
ヨシミツ「・・・あ?なんか言った?・・・悪いね。ゲームやってて。」
ヒデヨシ「あ、そうなんスか。」
ヨシミツ「で、なに?」
ヒデヨシ「捕まった事、あるんスか?」
ヨシミツ「ああ。・・・俺はまだないけど。・・・ああ。俺、最悪、一人で逃げるから。」
ヒデヨシ「え?」
タムラマロ「は?」
ヨシミツ「え?なに?」
ヒデヨシ「え?」
タムラマロ「一人で逃げるの?」
ヨシミツ「え?それ、当然でしょ?みんなで逃げたら捕まるっしょ?・・・個別突破。俺、足には自信あるんで。だから受け専なの。」
ヒデヨシ「なるほど。そうなんですね。」
ヨシミツ「だから、下手こいたら、俺、逃げるから。」
ヒデヨシ「あの。すみません。逃げる時は教えて下さいよ。」
タムラマロ「あ、そうだよ。」
ヨシミツ「いやいやいやいや。教えちゃったら、俺、逃げられないじゃない?逃げる時は一人。リスク管理っしょ?」
ヒデヨシ「・・・ミツヒデさん。電話、遅いッスね。」
ファ「偽清教は皆に説いてきました。正義なき正義は正義ではない、と。私達は真なる正義の名の下に、悪しき心を打ち砕くのです!その為には、皆の力が必要なのです。さぁ、共に戦いましょう!」
野口「・・・どれだけ注ぎ込めば気が済むんだよ?ああ?金を使っても使っても何も変わらねぇじゃねぇか!おい!」
ティララララ♪ ティラ ティティティティ♪ ララランティラ ティラララ ラン♪
アイカ「私を必要としてくれるのは、ファ様だけ。ファ様を助けなければ。・・・私はファ様の為に戦います。もっともっと強くなって、ファ様を守り抜きます!」
ティララン ティティティ♪ ララランティ ティラララン♪ ララララララ♪
笠井「野口さん。これ、新しい受注書。ここに置いておくよ?」
野口「あ、待って、待って、笠井さん。」
笠井「はあ。・・・なに?」
野口「だから、これ、終わらないんだよ。終わらないのに注文が来ても、捌ききれないんだって。」
笠井「それは知らないけど。・・・営業に言ってよ?そういう事は。」
野口「はぁ?じゃあ、誰だよ?その営業は?」
笠井「だから僕は知らないって。とにかく、これ。受注書?いい?」
野口「・・・」
笠井「あのさぁ、文句があるなら、直接、社長なり部長なり、そういう人に言ってよ?僕に言われても困るから。」
野口「・・・クソ」
笠井「今のは聞かなかった事にしておくけど。そういうの、査定に響くよ?あんた、いい歳なんだから。わかるでしょ?そういうの。」
野口「・・・」
店員「お客さん、いい加減に、音!消して!迷惑なんだよ!」
野口「・・・」
客「なにあれ?」「また、いる?」「この前もいたおじさんじゃない?」「なんでいるの?」「この前も注意されてたのに?」「言葉、わからないのかしら?」「関わらない方がいいよ」「怖い」
アイカ「出た!Aランクキャラ!・・・やっと出た!十万円、課金した甲斐があったわ!」
ファ「頼もしい仲間が加わりました。あなたのおかげです。私達は、皆の力で、皆の正義で、共に戦ってゆくのです!さあ、歩みを止めてはいけません!」
アイカ「まだ、三万分あるから、ガチャ、回しちゃおうっかな。」
カチ
「・・・子供が親に内緒で、スマートフォンのゲームに50万円、課金してしまったそうです。」
「それって、親も分からなかったの?いや、分かるでしょ、親なんだから。」
「子供が隠れてゲームしていて、クレジットカードから課金してしまったら、親だって、分かりませんよ?請求書が来て、初めて、気づく事もあるそうです。」
「でも、これ、正規の手順をふんで決済したんでしょ?クレジットカード会社もゲーム会社も落ち度、ないですよね?」
「そこが問題なんですよ?正規の手順を踏ませてしまった、という問題です。」
「これ、支払うしかないですよ?」
「痛い授業料ですけど、仕方がないですよね。」
「弁護士の先生、これ、会社と相談して、どうにか、支払う額を安く済ます方法とか、あるんですか?」
「交渉しだいですよね?」
「相手は子供ですよ?」
「クレジットカードの名義は親のものですから、子供が使った、という明確な証拠はないので、子供とか親とか、そこは関係ありません。そうですね。事情を説明して、会社側が納得してもらえれば、多少は、減額が可能ではないか、と私は考えます。」
「だそうです。」
「そうなりますよね。」
「学校のプールで、栓を閉めずに、出し続けて、水道代、100万円近く請求されたケースも過去、ありましたが、それも、実際、水が動いた訳で、市の水道局と相談して、でも、あの時は、そんなに減額してもらえなかったんじゃなかったでしたっけ?」
「そうですよね。そのケースと今回も似ていると思います。」
「似ているか?」
「イタズラじゃないけど、不慮の事故みたいな、もんですからね。」
「でも、実際、ねぇ。物は動いている訳だから。安くしろ?って言われても、困るよね?」
「そこは、やっぱり、交渉というか、誤って、どこまで許してもらえるか、っていう話だと思うんですよね。ケースバイケースって言ってしまえば、そこまでですが。」
「では、いったんコマーシャルです。」
ポチ
「これでこう、デッキを組みます。カードごとに属性とパラメータがありますから。そこを注意して下さい。」
「偽清教の騎士団、ライトナンバーズとレフトメンバーズ、これ、どっちが強いとか、あるんですか?」
「主に、光属性と闇属性と言われていますが、主義主張の偏りというか、パラメータがあって、そこの違いがありますね。ライトナンバーズは保守派で、レフトメンバーズは革新派となっています。そのパラメータを活かして、敵と戦ったり、説得したり、場面場面で駆け引きが重要になります。」
「なるほど。では、後半は、アニメのコーナーです。今回、ファ様が、あられもない姿になってしまう、ピンチだそうですよ!」
「えええ!ファ様が!これは見なくては!」
「ファ様がエッチな事、する訳ないじゃないですか!」
「いや、わかりませんよ!ああ見えて、ファ様はドジっこだから!さて、では、アニメコーナーどうぞ!」
「♪キラリひか~る、すいへ~いせ~ん♪ 大空、高く、舞い上が~る、きぃずぅなぁああああ!ダ・ダ・ダン♪ダ・ダダダダアダダアダダダ♪」
瀬能「これです。」
皇「杏子、インストールしたのか?」
瀬能「入れるだけ、入れてみました。でも、まるっきり遊べません。これ、お金つかって、カードを強くしないと、まるっきり、意味がないんですよ。」
皇「うまい事、考えるな。」
瀬能「これも商売ですからね。少しくらい、無課金でも遊べるかと思いましたが、無理でした。そういう仕組みらしいです。」
皇「・・・・まぁ。そこは諦めろよ。」
瀬能「ほら、eスポーツ系の大会で、けっこう優勝賞金が高いから、どんなのかと思っていたら、とんだ茶番ですよ。」
皇「だから、ほら。ある程度、金かけてカードを強くして、あとは、そのゲーム次第なんだろ?カードの駆け引きとかさ。」
瀬能「それが、強いカードじゃないと、優位に、戦いを運べないんですよ。その強いカードはお金を払わないと買えないし。」
皇「ダメだこりゃ、諦めろ。」
瀬能「ですから、これに関しては諦めました。ネットで、ファ様のSSカードだけは出回っているんで、絵だけはもう見たから、もう、自分の中では、終わっています。」
皇「ファ様、稼ぐな。」
瀬能「このゲームに関しては、すべからずファ様です。ファ様が頂点です。ファ様を持っていないと勝負になりません。騎士団なんてザコですよ。ファ様がいれば、親の総取りです。」
皇「なんだそりゃ?」
瀬能「このゲームを作った奴がバカなんじゃないですか?」
皇「強くなった所で、ゲームの中の話だぜ?それ以上、どうにもならないしな。強くなるにも金がかかるんじゃ。」
瀬能「ファ様の信者は、ファ様の為に、強くなるしかないんです。貢いで貢いで貢ぎまくるんです。」
野口「ファ様の為に、強くなるしかないんだ。貢いで貢いで貢ぎまくるしかないんだ。」
アイカ「ファ様の為に、強くなるしかないのよ。貢いで貢いで貢ぎまくるしかないのよ。」
ファ「さぁ、私と一緒に、正義をしめす時がきたのです!さあ、立ち上がりなさい!私と共に!正義の名の下に!」
皇「でも、最後は金だろ?」
瀬能「ファ様と一緒に戦うのが目的ですよ。ただ、ファ様を助けるのに容易にお金がかかるだけで。・・・死ぬほどに。」
皇「そうか。それじゃ仕方がないな。」
瀬能「そうですね。仕方がありません。」
※本作品は全編会話劇です。ご了承下さい