8.検討
メインベルの街 その3
羊皮紙の撤去命令の問題は、いくつか基準を満たしていない設備を整えて、その設計図とか書類を整えて提出すればよいようなのだが、無視し続けた結果撤去命令となったようだ。
ただし、基準を満たしていないいくつかの設備は、それぞれかなり高額になりそうだという予想は立つ。明日、工場に行ってみてからの判断だろうなぁ。
今日はもうすることもないし、少し休憩してから街をぶらぶらしてもいいけど。
どたっとベットにあおむけになった。すこし休もう。
すこしのつもりが夕方になってしまった。もそもそ起きだし、食堂に行って風呂に入って部屋に戻って手持ちの紙に羊皮紙の内容を書き写して、寝ようとしてもなかなか眠れなかった。
翌朝、食堂でスープだけもらって工場に向かった。
工場は街のはずれにあり、重たい音がしていた。大きな容器でなにかを混ぜ込んで、羊皮紙に書いてあった製品を作っているようだ。
お客さんもちらほら来ていて、繁盛しているみたいだ。
「こんにちは。メイリと申しますが、スウミーさんはいらっしゃいますか?」
と聞いたら、裏からスウミーさんが出てきてくれて奥に案内された。
「さっそくですが、工場の会計記録のようなものってありますか?収支と資産の状況によっては、できることとできないことがはっきりしますので」
財務資料をいろいろと見せてくれた。なるほど。スウミーさんはちゃんと管理できてるんだなと思ったのと、やはり経営状況はあまりよくないようだった。
スウミーさんが管理している亡くなったボウさんの資産を持ち出して、なんとかやりくりしているようだ。
ようは損失ってことだなぁ。
「ヒロカさんにお話しうかがえますか?」
「聞いてきますね」
しばらくして、いやそうにスウミーさんに引っ張られてヒロカさんがやってきた。
「はじめまして。メイリと申します。いろいろ教えていただきたいのですが・・・」
「どうも」
ヒロカさんはそっぽを向きながら挨拶してきた。スウミーさんが申し訳なさそうにしていた。
辛抱しながらいろいろ聞いていったら、製品を作ることは好きみたいで、より良いものを作るんだと目をきらきらさせる。けど、それを売るのも、配達するのも、工場の管理をするのもおれの仕事ではないという。
「店頭販売は私が、配達は従業員がひとりいるのでそちらがやります」
スウミーが申し訳なさそうに言った。
工場の管理は亡くなったボウさんがやっていたので、今はだれもわからないとのことだ。
「これからメインベル工業会に行ってお話しうかがってきます。ヒロカさんも行きませんか?」
「なんでだよ。そんなの俺の仕事じゃねえよ」
スウミーさんと目が合ってしまった。
「わたしが一緒にうかがいます」小さな声でスウミーさんが答えた。
工場を出ると、ふーっと大きくため息が出た。
「すいません。すいません」スウミーさんがあやまって来る。
「うーん。謝らなくてもいいと思いますけど。これってかなり大変ですねぇ。
まあ、メインベル工業会にとりあえず行ってみますが、まずは、わたしひとりで行ってきますよ」
「・・・すいません」
スウミーは下を向いたままだった。
今日はお客様のわんこが亡くなってしまい、お客様の気が済むまで話しをしてもらっていたので、更新が遅くなりました。