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5.徒歩の旅と荷馬車

リース~メインベル(工業の街) その2

さらに北に進むけど、まだまだ先なのよね。あと6日くらいはかかりそうだなあ。歩くしかすることが無いけど、初めて見る景色はどこも珍しくて、何の草だろう。この木はこの花はと「識別」し続けてなかなか先に進まない。けど、結構薬草とかあってほくほくしちゃう。


まあ、お金になるんだし、街道から大きく外れなければ安全みたいだし、ヒモでつるして乾燥しながら歩きましょう。ってなんか見た目みずぼらしいかなぁ。まあいいか。


ぽつぽつ・・・雨だ。急いで干しながら歩いていた薬草をアイテムバックにしまう。

しばらくすると本降りになってきた。街道沿いの大きな樹の下に避難したが、すでに足元は水たまりだ。まぁ少し待てば止むかもしれないので待つかな。帽子とマントと「結界」で濡れないように気を付けましょう。


木に寄りかかりながらうとうとしていると、幌付きの荷馬車が止まった。

「困っているなら乗っていくか?」

と初老やせ型だけどがっしりした歯が一本しかない男が声をかけてくれた。ありがたいねぇ。


「どちらにお向かいですか?」

「メインベルに農作物を売りに行くんだ」


「ありがたく乗せていただきたいのですが、料金はいかほどに?」

「銀貨2枚くらいでどうだ」


銀貨2枚お渡ししてお願いすることにした。


荷台は野菜が満杯で、人の入る余地はなさそうだった。荷台の後ろのあおりのあたりに腰掛けるような感じかな。と思ったら、野菜をちょっと配置がえして、なんとか膝をかかえて座れる程度の場所ができた。すごいね。


「メイリと言います。お世話になります」

「エージーだ。後ろに乗るといいよ」


礼を言って乗り込んだが、離れているのでとくに話すこともなくしばらく進んだ。雨はやみそうもなかった。

そのうちがたがたする揺れより眠気のほうが強くてうとうとしてしまった。


ガタンと荷馬車が止まり目が覚めた。

エージーさんが下りて声をかけて来た。

「今日はこの辺で休もうと思う」


降りてみると、まわりに3パーティーくらいの冒険者が休憩していて賑やかだ。

尻と腰が痛い。うーんと伸びをして、腰がギクギクいててててってなったけど、まあ重症ではない。いつの間にか雨もやんでいて、水たまりも無かった。


明日にはメインベルに着くとのことで、さすが徒歩とはちがうなぁと幸運を感謝した。

すわりこんで黒パンと干し肉を水で戻したものをもそもそ食べていたら、エージーさんも来て、似たり寄ったりのものを食べていた。


エージーさんは、リースのはずれで農業をやっていて、リースの問屋だと安くたたかれちゃうから、メインベルの問屋に卸すんだって言っていた。メインベルは工業の街だから農地が無いわけではないけど、人口も多いし食料はいくらでも買ってもらえるんだとのことだ。


「問屋というのは商人ギルドの一部なんですか?」

「そうだけど、農作物はけっこう自由で、よその国に出さない限りどこに売買してもいいんだ」

へー、農業者の救済措置なのかなぁ。


農作物も街に入るときに通行料を払い、商人ギルドに登録料と年会費を払えば自由に売買できるらしい。わたしは商人ギルドの募集広告の利用と薬草の買取りをお願いするために登録したけど、あらためて便利なシステムだなと感心した。


まわりのにぎやかだった冒険者パーティーも、そろそろお眠なようで静かになってきた。


「そろそろ休むか。大人数がいるところは、比較的安全なのでちょっとうるさいかもしれないが、我慢してくれよ」

「そうですね。休みますか」

とマントをかぶってうっすら「結界」して荷馬車に寄りかかって寝ることにした。


荷馬車の中でよく寝てしまったので眠れないかもなぁと思いながら、気が付くと寝ていた。夜中何度か目が覚めて、冒険者たちが交代で見張りをしていたのを見て、ありがたいねぇと感謝し、頑張る若者えらいなぁとほっこりした。


うっすら夜が明けて、「結界」を大きめに張ってこそこそ街道をはずれて用をたした。

水をすこし出して顔を洗って、布で拭いていたら、エージーさんが起きてのびをしていた。


「おはようさん。さあ、めし食ったら出発しようか」

「おはようございます。そうですね」

昨日と同じ黒パンとふやかし干し肉をもそもそたべた。エージーさんは、ゆでたじゃがいもと干し肉みたいなのを食べていた。


旅のごはんはおいしくないねぇ。トイレも無いしねぇ。


がたがた荷馬車が進んでいく。昨日のように雨は降っていないけれど、いつでも降り出しそうな空だ。なんとか降らずに済んでいる。


がたがた荷台で揺れてるうちに、雨降ってアイテムバックにしまっていた薬草をひろげてひらひらしてみた。薬草をつなげているヒモを落とさないように腕にぐるぐる巻いて風にさらす。そんなことしていたら、のどが乾いても水が飲めないことが分かって、薬草をしまった。


乾いていると高値で買い取ってもらえるけど、乾いてなくても少し安いけど売れるからいいか。水袋の水をごくりと飲んだ。


「おーいそろそろメインベルに着くぞー」

すごいね。馬車って。6日歩くところを1日半くらいで着いちゃった。街道も整備されていてあんまり揺れなかったし。


荷馬車が止まり、降りてお礼を言って別れた。荷馬車の並ぶ場所と、徒歩の人では並ぶ場所が違うからだ。列に並び、商人ギルドカードを提示して、通行料を払ってメインベルに入った。


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