4.徒歩の旅と冒険者たち
リース~メインベル(工業の街) その1
朝一番でお部屋の清算をして、食堂であたたかい食事をいただき、旅用の黒パンと干し肉とチーズと水を売ってもらった。あいさつしてから店を出た。
雲が多くて雨が降ったら困るなぁと思いながら、門兵に聞いたらこの辺はいつもこんな天気で、よく雨は降るけど、たくさん降ることは珍しいから帽子とマントでしのげばなんとかなるよと言われた。
年寄りはあんまり体を冷やしちゃいけないから、うっすら「結界」でしのぎましょう。
リースの街を出て、北に向かった。乗合馬車が通り過ぎた。道の端によって過ごした。
私にはあれを使うほどお金が無いから、歩くしかないわねえ。
「まあ、死ぬまでに着けばいいんだから、急ぐこともないしね」
とちょっと悔し紛れに言ってみる。
まだ街が近いので人が多いけど、そういえば、人がいなくなった街道で、なんで襲われたことが無いんだろう?
街道から外れたら襲われたけど、なんかありそうだなぁ。
よくわかんないけど街道から外れないよう気を付けて進むようにしよう。
夕方になってまだ早いけど、今日はここまでにして休もうかなと思ったのは、むさくるしい野郎ばかりの冒険者のパーティーが休息していたからだ。
となりにひょっこりお邪魔して安全キープしようかなと思った。
でもあまり近くにいると汗臭そうなので、少し離れたところでまあるく「結界」して、黒パンと水でふやかした干し肉をたべて、マントにくるまって寝た。
夜中に冒険者パーティーの幼い雰囲気のある男の子がこちらをのぞき込んでいた。
「なんですか?」
「静かだから心配になって。あと触ろうとしたらはじかれて」
男の子は戸惑っていた。「結界」に阻まれて触れなかったのだ。
「「結界」なんですか?それってすごくないですか?」
「そうかもしれないねえ。わたしは女中として40年過ごしたので、あまり利用価値はなかったなあ」
「えええええ~」
冒険者たちは
「俺たちにそんなスキルがあったら、ダンジョンだって」
とか、ワイワイ騒いでいた。若いっていいなぁ。
「「識別」スキルもあるよ」
と言ったら、びっくりしながらへんちくりんな道具を出してきた。
「これってなんだかわかりますか?ダンジョンから出て来たんですけど」
と言われて「識別」してみたら、「声を変える装置 安全」と出てきた。
そう伝えると、どうやって使うんだろう?と、あーじゃないこーじゃないとワイワイ騒いでいた。若いっていいなあ。
「あのー、おばさんね、眠いから寝るね」
「はーい」ワイワイ
といいお返事が返ってきた。若いっていいなぁ。いいのかなぁ。まあいいや。
朝目が覚めたら、冒険者坊主たちも起きてきてにこにこあいさつしに来た。いい子達やん。汗臭そうとか思ってごめんね。
途中まで同じ方向で、途中の分かれ道で西にそれてダンジョンに冒険に行くんだそうだ。
「気を付けるんだよ」とか言いながらしばらく歩く。
歩きながらそういえばと質問すると、街道に盗賊が出ないのは、冒険者ギルドの監視システムがあって、止められはしないけど異常が送信されて誰がやったかばれるんだそうだ。
名前がばれると、冒険者ギルド、商人ギルド双方に公開されて、ギルドカードの没収と取引停止処分がされるんだそうだ。なんかすごいシステムがあるみたいだねぇ。
「なるほどね。街道から離れなければ私のような年寄りでも安全に旅ができるんだね。あとは、動物とか魔物とかに気をつければいいんだね」
了解~。ありがと坊主達と感謝した。
しばらく歩いて分岐まで来たところで
「ご無事にいい旅を」とリーダーが笑顔で言ってきた。
「ありがとう。あなたたちも安全に素晴らしい冒険を」
とあいさつしたら、嬉しそうにみんな「はい」って言っていた。
いい子達だなあ。なんども言うようだけど、汗臭そうなんて思ってごめんね。