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ゲノマ・ゲーム  作者: やばくない奴
アークとの戦い
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タキオン

 突如、ゼクスの左肩は小さな爆発を起こした。彼が驚いたのも束の間、その身の節々が爆炎に呑まれ始める。

「これは一体、なんデス……? まさか、風花(ふうか)サンもフェーズ2に……!」

 彼がそう思ったのも無理はない。彼から見た風花は、その手から何も放っていないのだ。一方で、蓮(れん)は彼と異なる仮説を立てている。

「違う……あれはフェーズ2の力ではない。しかし、一体何が……」

 確かに、風花の目は発光しなかった。一方で、今までフェーズ2に至った者たちは皆、その瞬間を迎えた際に両目を発光させていたのだ。風花はよろめきながらも立ち上がり、ゼクスを睨みつける。

「さっきのは、タキオンを含ませた荷電粒子砲だ。したがって、移動中の粒子の周囲では時間が逆行する。つまりボクたちの観測している時間においては、粒子は移動という過程を辿らずにキミの体に命中したようなものなんだ」

「な、何を言っているのデス?」

「例えば、車が目的地に移動するまでに五分かかると仮定する。その車が移動中に、五分だけ時間を逆行したとしよう。その車は傍から見れば、一瞬で目的地に着いたのと同じだ」

 少なくとも、理論上の矛盾は見られない説明だった。しかし彼女の用いた手段は、並々ならぬ技量を要するものだ。

「そんな器用なことをしたのデスか……ユーは!」

「さあ、戦いを続けようか」

「良いデショウ……あまりミーを、侮らない方が良いデスヨ!」

 ゼクスは斥力を操り、風花の身を上昇させた。それから彼は光線を乱射し、相手の身を傷つけていく。薄れゆく意識の中、風花もタキオンを含めた荷電粒子砲で応戦していた。両者共々満身創痍であり、虫の息だ。

「ボクは空中に固定されて動けない。キミはボクの攻撃をかわすことが出来ない。どちらが先にくたばるか……根競べだ」

「ハハハ……アハハハハ! 面白いことを言いマスネェ! 認めてさしあげマショウ! ユーは確かに強いデス! それでも、ミーには及びマセンヨ!」

「いつまで強がりを言っていられるか、見ものだね! ゼクス!」

 一発、また一発と、風花は光線を浴びていく。その節度、ゼクスの身も爆発に呑まれていく。眼前で繰り広げられる壮絶な死闘に、蓮の目は釘付けになっている。

「頑張れ……風花! 君なら……君なら、ゼクスに勝てるはずだ!」

 この時、彼は本心から風花の勝利を祈っていた。彼の目の前で戦っている二人は、ほぼ互角の実力を誇っている。幾度となく燃え広がる爆炎は、さながら花火のようだった。風花も、ゼクスも、己の命を限界まで削って戦っている。


 やがて風花は吐血し、宙で気絶した。ゼクスの異能が解除され、彼女は砂漠の地面に叩きつけられる。ゼクスは重傷を負った体を引きずりつつ、再び己の右手に大剣を生み出した。失血により酷く疲弊した彼は、息を荒げながら風花に接近していく。

「フフフ……どうやら、ミーの勝ちみたいデスネェ……」

 このままでは、風花が絶命するのも時間の問題だろう。その光景を前にして、蓮は声を張り上げる。

「風花!」

 この瞬間、彼は時間を止めようとしていた。彼の目の前に人影がよぎったのは、まさにそんな時だった。その人物は俊敏にゼクスの間合いに潜り込み、それから太刀を大きく振った。この斬撃により、ゼクスは腹から血を噴き出しながら崩れ落ちた。おぼろげな意識の中、彼はゆっくりと眼前の人物の顔を覗き込む。

「千尋(ちひろ)……?」

 彼は驚いた。つい先程に気絶したはずの千尋が、いつの間にか目を覚ましていたのだ。

「ゼクス……アナタは乱心しすぎた。今のアークに、アナタは要らない」

 そう呟いた彼女は太刀を銃に変形させ、スライドを引いた。そして彼女がトリガーを引くや否や、その場には無慈悲な銃声が響き渡る。ゼクスは意識を失い、血溜まりに顔を埋めながら死亡した。

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