飛行能力
ゼクスは話を進行させる。
「今回のゲノマ・ゲームは、ペアを組んでのタッグ戦デス!」
別段、彼がそのペアを選ぶわけではない。しかしプレイヤーたちの組み合わせは、はなから決まっているも同然だ。風花は由美と組み、愛姫は出雲と組んだ。そして余った二人がペアを組む。粗方、誰もが予想していた展開だろう。
「第一回戦は、風花コンビと狂人コンビの試合デス! ステージに上がってクダサイ!」
ゼクスの指示に従い、風花、由美、城矢、泰地の四人は階段を上がった。勿論、試合を繰り広げる前に、風花にはやることがある。彼女は苺の香水を生み出し、準備を整えた。
「試合開始!」
拡声器を通して、ゼクスの声が響き渡った。直後、右手にナイフを生み出した泰地が前方に飛び出し、その背後から城矢が光線の援護射撃を始めた。由美は何枚かの盾を生み出し、それを遠隔操作することによって自分たちの身を守る。しかし、彼女のすぐ目の前には、泰地が迫っている。
次の瞬間、ステージ上には大きな金属音がこだました。
両者の間には、いつの間にか風花が潜り込んでいた。そして彼女の右手に携えられている剣は、その刀身で泰地のナイフを受け止めている。この男の斬撃を見切れる者は、極めて稀であると言えるだろう。風花を睨みつつ、泰地は口角を上げる。
「面白い。フェーズ2に達した由美だけが俺を楽しませてくれそうだと思っていたが、やはりお前も強いようだ」
何やら彼は、今この瞬間を全力で楽しんでいる様子だ。直後、何かを感じ取った風花は剣を振り上げ、ナイフをはねのけながら背後を振り向いた。それから彼女が剣を大きく振った先には、三体のディフェクトがいた。剣の刀身から放たれる円弧型のエネルギーは、その三体の身を襲いながら爆発する。しかし風花には、彼らだけに構っている暇などない。彼女の死角からは、再びナイフが迫っていた。彼女は咄嗟に首を曲げ、間一髪で斬撃をかわした。この瞬間、彼女は泰地の後ろに回り込み、彼の首に手刀を当てた。この一撃により、彼はバランスを崩しかけたが、直立前転によって体勢を持ち直す。それから彼はナイフを、風花は剣を俊敏に振り回し、小刻みな金属音を奏でるように戦っていった。傍目に見れば、そこに見えるのは二つの人影と刃物の残像だけだ。両者の戦いは、決して肉眼で追えるような代物ではない。
一方で、城矢の相手を務めるのは由美だ。彼女はエネルギーの球体を連射し、その挙動を自在に操っていく。その球体を次々と大剣で切り落としつつ、城矢は一気に間合いを詰める。そして彼女が眼前の少女を目掛けて大剣を振り下ろすや否や、両者の間には盾が飛び込んできた。その表面は、電流のようなものを帯びている。大剣は一瞬にして大破したが、その程度で取り乱す城矢ではない。
「足下がお留守よ!」
彼女は回し蹴りにより、由美の足下を崩した。それから間髪入れずに、彼女は足下の少女に向かって高火力の光線を放つ。当然、この瞬間に盾の位置を変える暇などなかった。由美は宙を舞い、場外の水に向かって落下していく。このままでは、風花一人があの二人の相手を引き受けることになるだろう。そこで由美は、己の身を包み込む形で鎧を生成した。その鎧を遠隔操作することにより、彼女はステージの上空へと飛び上がる。何やら彼女の力は、応用すれば飛行能力も兼ねているようだ。
「風花さんから教わったことを、試してみますね」
そう呟いた由美は先ず、ステージ上に立つ城矢に向かって炎を放った。続いて彼女は水色の液体を生み出し、それを炎に向かって発射する。これはかつて風花が使っていた――液体酸素と液体水素の化合物だ。
炎は勢いよく火力を増し、城矢の身を巻き込んで爆発した。




