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誇りある者たち

 あれから一時間ほど経ち、由美(ゆみ)は目を覚ました。上体を起こした彼女が目にしたものは、鉄の檻に閉じ込められた愛姫(あき)出雲(いずも)の姿である。その横で囚われた二人を睨みつけているのは、城矢(じょうや)だ。おそらく、彼女が愛姫たちを幽閉したのだろう。由美を除いて、その場にいる全員があのトランス女性の活躍を見た。しかし当の城矢は、自分が由美を助けたことを明かさない。

「ステージに上がるわよ、眼鏡女。次の試合は、アタクシたちの対戦らしいわ」

 そう告げた彼女は階段を登り、ステージの上に立った。その後に続き、由美もステージに上がる。この試合に勝った方が、風花とぶつかり合うこととなる。ゼクスはステージの真横に浮遊し、ゲームを進行させる。

「試合開始!」

 彼がそう叫んだ直後、城矢は両手に機関銃を生み出した。同時に、由美は二枚の盾を生成する。二枚の盾は自由に動き回り、連射される銃弾から彼女の身を守っていった。フェーズ2に至った由美は、城矢に引けを取らない強さだ。

「今度は、私が攻撃を仕掛ける番ですね」

 その言葉には、確固たる自信が籠められていた。かつてアークから逃げ回っていた少女も、今や勇敢で闘志に満ちたゲノマである。彼女は何丁もの光線銃を生成し、それらを宙に漂わせた。数多の銃口から乱射される光線は、着実に眼前の対戦相手の身を退けていく。

「強くなったわね……眼鏡女」

 この時、城矢は笑っていた。これは決して、余裕から来る笑みではない。彼女の両足は震えていた。無論、それは恐怖から来る震えではない。


――武者震いだ。


 城矢は大剣を生み出し、それを俊敏に振り始めた。その刀身は光線を弾き返し、彼女の身を守っていく。しかしその瞬間にも、光線銃は光線を連射し続けている。そればかりか、弾かれた光線はいずれも妙な挙動で曲線を描き、再び城矢の身に襲い掛かってくるのだ。そんな彼女を睨みつつ、由美は高圧電流をまとった大剣を何本も生み出した。その全ては自在に飛び回り、標的の身に切り傷を刻んでいく。由美が手に入れたものは、自分の生み出した物質やエネルギーを遠隔操作する能力だ。その能力はまさに、ゲノマに備わった既定の力とのシナジー効果が高い。そんな力を手にすれば、大抵の者は慢心するだろう。しかし由美は、そんな状況下においても命懸けだ。

「城矢さん……貴方は強い人です。私が貴方を侮ったことは、一度だってありません。だから、本気でいかせてもらいます」

 その言葉に、嘘偽りはない。それを物語っていたのは、彼女の真剣な目つきだった。一方で、各段に成長した強敵に追い詰められている城矢もまた、常人ではない。

「それで結構よ! アタクシだってこの遺跡に閉じ込められるのは嫌だけど、手を抜かれるのはそれ以上に癪に障るわ!」

 例え自分の参加しているゲームが他者から強要されたものであっても、彼女はフェアな戦いを望んでいた。そんな彼女に感銘を受け、由美は言う。

「それでこそ、城矢さんです」

 両者ともに、見上げた精神を掲げた崇高な戦士だ。そんな二人の戦いを前に、観戦者たちは息を呑んだ。城矢は大剣を大きく振り、その刀身から円弧型のエネルギーを放つ。そのエネルギーは広がる波のように膨張し、周囲の眼前の光線銃を次々と爆破した。続いて彼女は大剣を構え、瞬時に間合いを詰めた。そして全身全霊を籠め、彼女は大剣を振り下ろす。由美は先ほど生み出した二枚の盾を遠隔操作し、その斬撃を受け止めた。しかし強力なエネルギーを帯びた刃は、盾のうちの一枚を粉砕した。残る一枚の盾も、火花を散らす大剣にその表面を削り取られている。

「アタクシの勝ちよ! 眼鏡女!」

 彼女が声を張り上げた直後、その場は眩い光に包まれた。


 二人の戦うステージは、激しい爆発に包まれた。

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