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ゲノマ・ゲーム  作者: やばくない奴
ゲーム開始
15/84

囚人

 数日後の夜、とある離島の監獄にて、凄惨な殺し合いが勃発した。ゲノマと化した者たちに交ざり、何体ものディフェクトがその場に発生していた。中には、ディフェクトを倒すために協力する死刑囚たちもいた。しかし彼らを含み、多くの者たちは次々と一人の青年に瞬殺されてしまう。その青年は目つきが悪く、そこに数多の感情は宿っていない。彼は殺人の先にあるものを、何一つ求めてはいないのだ。


 無数のディフェクトと囚人たちが刺殺され、銃殺され、轢殺され、斬殺されていく中、アークから送り込まれた研究員たちは身構えた。このままでは、彼らも戦いの巻き添えを食うだろう。そんな彼らに気づいた青年は、こう言い放つ。

「俺が時間を稼ぐ。お前らは逃げろ」

 どういう風の吹き回しか、彼は研究員の命を守ろうとしていた。

「あ、ありがとうございます!」

「助かります!」

「かたじけない! しかし、何故、我々のために……」

 彼らが困惑するのも無理はない。眼前の青年は死刑囚の一人であり、なおかつこの殺し合いを楽しんでいる身だ。そんな彼が他者を守ろうとするのは、驚くに値することだ。無論、彼には彼なりの思惑がある。

「簡単な話だ。お前らなら、強い人間を生み出せる。俺と戦える人間を」

 何やら、彼は闘争を好む性分らしい。彼は光線を連射し、眼前から迫りくる囚人の群れを蹴散らしていった。研究員たちはその隙にリモコンを取り出し、その場に各々のエアロモートを呼び寄せる。そして彼らは、夜の闇の中へと消えていった。



 *



 その翌朝、とある街角の広場にて、城矢(じょうや)環奈(かんな)由美(ゆみ)を目の前にしていた。彼女は臨戦態勢の構えを取り、二人の敵対者を睨みつけている。

「さあ、二人がかりでかかってきなさい! ここなら忘却の遺跡と違って、ギャラリーもいるもの!」

 どうやら彼女は、観衆に見守られながら戦うのが好きらしい。一方で、彼女のような考えを持つ戦士は、そう珍しくはないらしい。

「あんたは、ストリートファイトを観衆向けのエンタメだと思ってるクチかぁ。面白いじゃん。そういう心構え、あーしは好きだよ」

 普段からストリートファイトに没頭しているだけのことはあり、環奈はこの手の対戦相手の存在に慣れ親しんでいた。由美は再び特殊な銃を作り、それを彼女に投げ渡す。


 直後、その場にいる全員が一斉に動きだし、戦闘が始まった。


 環奈と由美は高く跳躍し、エネルギーをまとった剣を振り下ろした。その刀身は、更に一回り大きな大剣によって受け止められる。そして城矢は、とてつもない腕力によって二人を薙ぎ払った。同時に、彼女の大剣の先端からは、凄まじい火力の光線が放たれる。

「なんて……強さ……」

 由美は咄嗟に防壁を作り、己と環奈の身を守った。そんな彼女を睨みつけ、城矢は言う。

「アナタ、少し弱くなったんじゃなくて? 平和な世界で逃げ回っていた分のブランクは、そう簡単には埋められないわよ!」

 アークから逃げ回ってきた由美には、確かにブランクがある。しかし不幸中の幸いか、そんな彼女には環奈という味方がいる。

「私一人では、勝てないでしょうね。だけど私には、環奈さんがいます!」

「ゲノマ同士の戦いに、一般人がついてこれると思っているのかしら? ずいぶんなお笑い草じゃないの!」

「あまり環奈さんを侮らない方が良いですよ」

 そんな舌戦の最中にも、戦いは続いている。由美と環奈は力を合わせ、ようやく城矢と渡り合っている有り様だ。


 その時である。

「楽しそうな祭りだな」

 突如、物陰から声が聞こえてきた。三人が振り向くや否や、その眼前からは高火力の光線が迫りくる。大きな爆発に巻き込まれ、彼女たちは宙を舞った。そして砂煙の中から現れたのは、髪を金に染めた「あの青年」の姿であった。

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