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ラブコメ・恋愛

隣の部屋のイケメンはいつも女子をとっかえひっかえしている だから僕は、彼女が欲しい 


 パタン――。

 静かに閉じられるドアの奥に消える高校生二人。ひとりは男子の制服の今時の少しほっそりとした中性的なイケメン男子、もう一人は、女子の制服を着た同級生らしき美少女。


 もうかれこれ、かなりの女子を呼んでいることを知っている。

 俺は隣の部屋に住んでいるから。別に、ストーカーしているわけでもないが、こうも、女子を連れているときが多すぎると、1年も隣にいれば分かってくる。話し声もするわけだし。いったい、何人の女子を毒牙にかけているのか。

 こっちは、こんなにもお日照り様なのに。これが恋愛格差。弱者男性と強者男性の圧倒的な格差。みせつけられすぎている。一人ぐらい、俺のところに来てくれてもいいのに。



「だからな、頼む。おれも部屋に女子を呼んでいるんだアピールをしたいんだ」


「え、めんどくさ。そんなモテたいの。てか、女子の話している声でも録音して流しておけば。どっかネットで拾えるでしょ」


 俺の唯一の女子の知り合い「従妹」は、にべもなかった。従妹ぐらいしか頼れる女子のいない環境。

 別の高校の従妹にファミレスに来てもらって話を聞いてもらっています。以上、現場より。

 

「ファミレスがオッケーなら、俺の家でもオッケーだろう」


「いや。ご飯、こっちのほうが美味しいし」


 即断拒否。はい。飯代をおごるという交換条件で来てもらいました。もう、デリバリーのプロのお姉さんを呼んでしまおうか。レンタル彼女でもしようか。

 従妹は、目玉焼きハンバーグにライスとドリンクバーセットを頼んで、それを食べ終え、食後のコーヒーに砂糖を投入している。


「というか、なんで隣の名前も知らない高校生に対抗意識燃やしてるの。別に、同じ高校のクラスメイトを食われているわけじゃないんだし」


「喰うとか生々しい言葉使わないで。でもさ、やっぱり、お隣さんに、こいつ、いつも家に誰も呼ばない淋しいやつって思われてそうじゃん」


 男友達は呼ばない。だって、呼んだら学校に近いし、居座り勢が多くなりそうだし。


「顔面偏差値の差は埋められないよ。それで、隠し撮り写真ないの。わたしのとこの高校の制服なんでしょ。そんなイケメンいたかな。学年違うのかな」


「俺は、現代のマナーを持っているから、勝手に写真を撮ったりしない。知りたければ、今夜俺の部屋に――」


「うん、無理。だって、ゴキブリとかいそうだし」


「俺の部屋を、どんな状況だと思っているんだ」


「いろいろ処理しないと、やばい空間。ま、少し気になるし。ちょっとだけ見ておこうかな。いつぐらいに帰宅するの」


「部活があるのか、平日は遅めだな。休日は、お昼過ぎぐらい。よく女子高生と腕をくんで帰ってくる最低なクズだ」


「いらない情報を足さないでくれる。じゃあ、今日はまだ時間ありそうだし、デザート頼むね」


 くっ、それが狙いか。

 まぁ、いい。俺は女子に寛容なタイプだ。女子に優しいフェミニストだ。だが、女子が寄ってこない。間違っている。なんで、悪い男の方がモテるんだ。

 従妹は、おごりとあって、一番高そうなパフェを注文していた。こいつ人の財布だと思って、遠慮がなさすぎる。


「じゃあ、帰ってきそうなときに、こっそり見るか。前の公園にいれば分かりやすいよ」


「あー、いつも、ひとり、公園で」


「思索にふける散歩の休憩だ」


「う、うん。散歩は考えるときにいいみたいだね。キモい」


「おい、最後、なんて言った」


 ぼそりと、男子に言ってはいけない禁句があった気がしたが。


「あ、パフェ来た」




 

 俺は、自分のドリアだけだったのに、パフェを一人で完全に平らげた従妹と、近所の公園に来ていた。小さい公園だが、管理は行き届いているのか雑草とかは綺麗に刈られている。


「ブランコなんて、数十年ぶり」


「お前は今、何歳だよ」


「それぐらいの気分ってこと。スカートだと見えそうで嫌だね」


「誰もいないぞ、公園には」


「壁に耳あり、障子に目あり」


「障子は珍しいけどな、もう。まぁ、そろそろかえってくるだろう」


 そう言っていると、ちょうど件の男子高校生が、女子高生を連れて帰ってきた。

 くっ、なんてうらやましい。部活終わりに一緒に下校というやつか。てか、女子高生を送ってあげろよ、なんで男子の方が女子に送られているんだ。バイバイと手をふって、二人は別れていた。


「見ろ、あれが、お前の高校のヤリチ――」


「あーねー。イケメンだね」


 ブランコから従妹は立ち上がる。


「おい、知ってそうな感じだな。やつの名前は、なんだ。二股、三股をSNSに暴露して――」


「うん。問題なし。イケメンならば許される」


 何を言っているんだ。イケメン即斬という言葉を知らないのか。最近のルックス至上主義は、ここまで浸透しているのか。可愛いは正義だが。


「ちょっ、イケメン税の徴収を求む」


かのうくん、だね。大丈夫大丈夫、女子に大人気だから」


「ダメだ、こいつ、早くなんとかしないと」


「言いたいだけでしょ、それ。安心しなよ」


「ああ、つまり、イケメン過ぎて、女子をローテーションしているということか」


「何も言ってないんだけど。なんとかしないといけないのは、そっちなんだけど。はい、解散。自虐乙。さっさと、彼女を作りましょう。じゃね」


 従妹は、俺を放って、公園の外に歩いて行った。






 青天の霹靂は、いつも突然に。完全に快晴だったけど。雷は落ちると言うことだ。

 従妹は、例のイケメンに抱きついていた。場所は、学校の帰り道から横にずれた商店街。

 お前は、やってはいけないことをした。うちの可愛い従妹に。

 いや、全然、異性としては見ていないし、誰と付き合おうが知ったこっちゃないんだが。そいつだけはやめておけ。


「ん?ああ、お隣の――」


「わたしの従兄。どうしたの?」


 従妹、これ見よがしに、さらに、イケメンの腕に胸をおしつける。

 

「そ、その、二股は、よくないっていうか、そのー」


 うん、内弁慶だった。心臓に毛は生えていなかった。いや無理無理。イケメンに面と向かって、文句なんてね。恋愛は自由なわけだし。女性もそれでいいっていうなら、他人が何か言うのも。


「二股?なんの話」


 このイケメン。ただ一緒に遊んだだけで、付き合ってもいないし理論の使い手か。

 ずいぶん、ハスキーな声しやがって。声までかっこいいとか卑怯すぎる。


「その、えっと、いろんな女子を部屋に呼んだり……なんて……」


「あー、そっか。僕、女子だよ」


 ん、なんか、情報が錯綜したような軋みがあったような。

 僕、女子。

 あれ、そんな日本語あったかな。


「バーカ。こんなカッコいい男子いるわけないでしょ」


 なにを言っているんだ、俺の従妹は。

 まさか、このかっこいいイケメンは、妹と同性なのか。いや、たしかに、ボーイッシュ系の女子にも、見える。見えるな。え、まじ卍。


「そんなことないよ。お兄さんもかっこいいじゃない」


「え、目、大丈夫。いや、でも、かっこいいお姉ちゃんが手に入るなら、百周回って、アリ?いや、ないな」


 従妹は、考えてすぐに棄却した。


「おい、人を前に、ひどいことを言わないでくれるか」


「だって、わたしが同性婚する方が絶対、正義でしょ」


「僕、普通に、恋愛対象はノーマルなんだけど」


 困ったように、苦笑いするお隣さん。


「その、そういう話は、脇におくとして、えっと、でも男子の制服だよね」


 長年の疑問。「一年」だけど。


「ん、ああ、違うよ。これ、ユニセックス。女子もスラックス着てよくなったんだ。ジェンダーレスっていうの。ズボンの方が好きだから、そうしてるだけ」


 言われてみれば、少し男子のズボンと違うような気もしないような気もしないような――。

 それより、なんかめっちゃ良い香りがする。女子特有のような気もしないような。


「バカでしょ、わたしの従兄」


「まぁ、男が暮らしていると思わしていた方が安全だから。そういうふうに見せていたのもあるから」


「一人暮らしだもんね。あぶないよねー。気をつけてね。お隣さん、やばいから」


「おい、俺はやばくない」


「発情期だから。女子に飢えてる変態だから」


 とどまるところを知らない罵倒。従兄をなんだと思っているのか。ちょっと彼女が欲しくてデートがしたくて、いろいろABCを経験したいだけなのに。


「ぼくの知り合いで紹介できそうな子がいたらいいけど」


 え、なんだとっ。

 このイケメン女子、神か。

 

「いないね」


 おーい、あれだけ多数のおともだち女子がいそうなのに、全員脈なし判定ですか。

 あれ、控えめに、俺ってモテないロードで魔法使いなのか。


「だよねー」


 すかさず賛同をする従妹てき

 

「すこし、僕と練習してからにしようか」


「イケメンレッスン会場入会しますっ!!」


 あざまる水産。俺、イケメンになってから出直します。


「い、いつになれば、練習が終わるのでしょうか」


「いやいや、まだまだ、女性に紹介するには時間がかかるよ」


「恋愛、なんて険しい道のりなんだ」


「つぎは、そろそろ、ちょっと触れてみようか」


「触れ、触れ、フレフレ、振れ振れ・・・・・・」


「そこで露骨に胸を見ると好感度は下落するよ」


「師匠、着痩せするタイプだったんですね」


「ただ強調できる服なだけなんだけど、しょうがない。――これでよし」


「えっと、これは」


「軍手三〇枚かぶせた状態なら、少しぐらいはーー」


「師匠、一生、ついていきます」


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