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出会いと別れ1

もう3月だというのに冬の寒さは終わりを見せず、今日もまた雪を降らす。

舞い降りる雪が頬を撫で、髪を濡らす。

凍えた空気が肌を刺し、みるみる体温を奪っていく。

溶けた雪が氷となり、何度足元をすくわれたことだろう。

それでも俺は歩みを止めない。


君への手紙を持って今日もまた、この場所に立つ。



『ねえ、海の向こうには私たちの知らない世界が広がっていると思わない?』


『きっと、私にとって大切な誰かが、この広い海の向こうに待ってくれているんだよ』




ああ、そうさ。


君が言ったんだ。


だから待っているはずだよな。


この海の向こう側に。





「さくら」


何度君の名を紡んだだろう。


「さくら」


いくら呼んでも未だに返事が返ってくることはないけれど。


さくら、それでも俺は・・・。





今日も君に手紙を出します。








大好きな君。

俺の高校生活は今日で終わりを告げます。

卒業式だというのに天気はあいにくの雪です。

別れの日に降る雪というのはどうしても君を思い出してしまう。

今日という日は晴れであって欲しかった。



大好きな君。

正直に言うと俺は高校なんて行きたくなかった。

だって君がいないから。

教室にも廊下にもグラウンドにも、今まで当たり前に存在したはずの君の姿がもうどこを探してもないことを知っているから。

君のいない学校は嫌で嫌で仕方なかった。

でも君はこの高校に行きたいと言っていたよね。

進学校で制服が可愛いから絶対に入学してみせると笑いながら教えてくれた。

俺は君が行きたいと言った高校を見てみたいと思った。

君の代わりにこの高校に入って、君の夢を叶えたいって思ったんだ。


卒業する今になって思うよ。

君はいなかったけれど、この高校に通ってよかったと。

俺を理解してくれる友人ができた。

そして何より面白い奴らに出会ったよ。

偽り、隠し、繕いながらも想い続けるバカな奴らだ。

恋に臆病で、友情と偽り、その境界線を越えられずにいる。

確かに想いを伝えることって怖いよな。

だけど想いを伝える相手がいるってことが幸せなんだよ。

聞いてくれる人がいる、気持ちを受け取ってくれる人がいる。

それだけで幸せだろう。

俺はもどかしくて我慢ならなかったよ。

余計なお節介を焼いてしまうくらいにね。



大好きな君。

今日という日に君に伝えたいことはつきないけれど、残念ながらそろそろ家を出ないと卒業式に間に合いそうにない。

続きはまた手紙に書きます。

きっとすぐだから。

それまでどうか待っていて。




大好きなさくらへ

大切な出会いをくれた君に感謝を込めて

宮田俊哉



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