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プロローグ

毎日気だるそうに、欠伸しながら家を出て、チャリかっ飛ばして学校に行って。

適当に勉強して、カッコつけるために部活もやってみたりなんかして。

たまに学校をサボって、色んな場所に遊びに行った。

嫌だという君を無理やり一緒にサボらせたことも何度もあった。

友達とつるんで、女ナンパして、遊びまくって。

当然、進路のことなんてまだ全然興味なくて、地元の高校にでも進学すればいいか、なんて簡単に考えていたあの頃。

進路、進路とうるさい教師や親が煩わしくていい加減うんざりしていた。

将来のことなんかちっとも気にならなくて、まあどうにかなるだろう程度にしか考えていなくて。

それでも君が隣にいることだけは、この先変わることのない確かなものだと思っていた。

俺の頭の中の未来予想図で君はずっと、俺の隣に描かれていたんだ。

この未来が変わることだけはないと信じていた。


君が消えてしまったあの日までは・・・




いつもと変わらぬ、人生の単なる通過点でしかなかったはずのあの日。

中学二年の寒い冬の日。

あの日もいつもと同じで、何事もなく終わりを迎えるはずだった。

君の『バイバイ、また明日ね』

その言葉を聞いて、俺の一日は終わるはずだった。

それなのに、その言葉を聞くことは二度と叶わない。


俺はとても大切なものを失った。

かけがえのない世界にたった一つの俺の宝物を。

俺の心に咲く大きな満開の桜の木を。


彼女はもう戻ってこない…




君がいなくなったあの日から、もう二年という月日が経ち、あと数か月もすれば三年が過ぎてしまう。

その時間を『もう』と判断すべきか、『まだ』と言うべきか、俺にはわからない。

だってどっちも正しく思えるから。

それでも、俺は未だに君のことが忘れられない。

あの頃と変わらず鮮明に、君の姿が思い描かれる。

声も仕草も、表情も温もりも、君が俺に触れる感触すら思い出される。

きっと忘れることなんて出来ないだろうってくらいに、とてもリアルに俺の体が記憶している。

だからかな、今でも君が隣で笑ってくれているんじゃないかって、よく思うんだ。

無意識に君の姿を探してしまうし、実際、よく考える。

なんで俺は君のいない世界で生き続けているんだろうって。

どうして俺は君の後を追わなかったんだろうって。

その思考は尽きることなく俺を襲ってくるんだ。

でもいつも、そこまで考えた後に思い出す。


ああ、そうか。

君が生きろと言ったからだって。

君が俺を生かしているんだ。

君が許してくれないから死ねないんだって。




大好きな君。

君のいない世界は、ひどく退屈でつまらなくて、色褪せて見えるよ。

君の声が聞こえない。

君の細く柔らかな腕が俺に触れてくれない。

君の笑顔が俺を迎えてくれない。

たったそれだけ。

それが欠けだけなのに、俺の世界は色を失った。

楽しかった毎日が幻だったかのように、一瞬で消えてしまった。


2年。

まだたったの2年しか経っていない。

それなのに、もう何十年も遠い昔の出来事みたいに俺には長く感じられる。




大好きな君。

こんなにも大切な君の存在に、俺は気付くのが遅すぎた。

今さらそんなことに気が付くなんて、俺はとんだマヌケ野郎だ。

君も心底そう思っていることだろう。


俺は君に謝らなければいけない。

あの頃の俺はガキで、バカみたいに遊んでばかりいた。

そのことが君を傷つけていると知っていた。

君が泣いていると知っていながら、俺は気付かないフリをした。

君のことが好きなの。

好きで、好きで、どうしようもないくらい君のことが大好きだったのに。

変に意地を張って、優しい君に甘えてばかりいた。

あの日、君を失ったあの時まで俺はそのことに気が付きもしなかった。

バカな男だと笑ってくれ。

指を指して、大口開けて笑ってくれ。

本当にダメな男だと思ってくれてかまわない。

思ってくれて構わないから・・・だからさ。

ねえ、俺を叱りに来てよ。

『やっぱり私がいなきゃダメだね』と、『しっかりしなさい』って怒鳴りに来てよ。

あの日冷たく暗い海の底で俺に会いに来てくれたみたいにさ。

また会いに来てよ。

君に会いたい。

冷たく冷えきってしまった俺の体を、心を温めに来てよ。

いつもそう願っているのに、君はちっとも会いに来てくれない。

瞼を閉じれば、そこには俺と君が二人で笑い合っている幸せな世界が広がっている。

夜寝る前にいつだって、俺は君のことを考えているんだよ。

だってそうすれば、君が夢の中に会いに来てくれるかもしれないだろ。

それとも君は、いつまでたってもバカな俺に愛想を尽かしてしまったのかな。

願わくばそうでないことを祈るよ。




大好きな君。

大切なものはいつだって失ってからしか気付かない。




大好きな君。

俺は君を愛している。

今も昔も、そしてこれからも…

頼むから俺を嫌いにならないで、おいて行かないで。

そして俺を想い続けて。

大好きな君がこんなにも愛しいんだ。

でも、君の愛してるは受け取らない。

君の『愛してる』なんていらない。

俺に『愛してる』と言う君は、ひどく憎らしい。

憎くて憎くて、狂ってしまいそうで堪らないよ。




大好きな君。

君への想いは尽きることなく続いている。

君への想いを、全て言葉で表すことなんてきっとできないだろう。

君への想いに釣り合うほどの言葉が、俺には見つけられないから。



大好きな君。

だから、この想いは胸にしまっておくことにするよ。

大事に大事にしまいこんで、俺があの世まで持って行こう。

いつか君に再会し、この腕で君を抱き締めることができるその日まで、大事に取っておくことにする。




大好きな君。

君が悲しむから、俺は決して自ら命を断つようなことは二度としないと誓ってみせよう。

でも君が、俺のことをあの頃と同じくまだ大切に想っていてくれるのならば、俺の自惚れじゃなくて微塵でも想ってくれてい

るなら、君にお願いがある。

どうか二人の再会の日が、そう遠くないことを君も神に祈ってくれ。

君が迎えに来てくれる日を心待ちにしているバカがここにいるって、忘れないで。




大好きなさくらへ

永遠に変わらぬ愛を込めて

宮田俊哉



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