今宵も彼女は世界を紫に染める2話
三 役所(クナイいつ出るんだよ)
「あなた転生者ですよね」
後ろの席に座っている自分より若く、少し暗い印象を与えられる紺色のワンピースに、頭には簪が挿してあり黒髪ショートヘアで、胸は…何でもないです!、15歳程の女の子だろうか背が低い。
女子に声をかけられた。という嬉しさと、中身が本当は男だという事がバレてしまうという怖さで複雑な気持ちになった。
…だが、転生してすぐ身バレするわけにはいかない。
「いえ?ちっ違いますけど?」
自分でもわかる絶対ばれたわw
「そうですか?」
え?もしかしてばれてない?もしかしたらあるぞ俺にも演技の才…
「さっき俺って言いませんでした?」
そう言って俺が座っている長椅子の背もたれに、右手首を手の平が天井を向くように置いた。そしたら180㎡程のホログラムが浮かび上がり彼女が「再生」と言った直後、「俺って」「俺?」「いや、私エルフに見えます?」と、受付のお姉さんと俺との会話が流れた。
く、聞かれていたか…ってか盗聴!いや、そんなドヤ顔されても犯罪ですよあなた。でもそれ使ってみたい。
「あなたそれ盗聴ですよね」
「いいえ、証拠を見せただけです」
どうやら言葉の意味が分かってないらしい。
「それよりもあなたですよね?この声」
冷たい目をされながらそう言われた。
「はい…そうですけど、俺って言っただけでどうして転生者だとわかったんですか」
そう渋々言った。
「…とんだ変態さんですね。でも、本当だったんですね…」
彼女はそう溜息をつくように言った。
おい、聞け!でも何が【本当だった】んだ?。
だったということはまるで俺がこっちに転生してくる前に俺がここに来る事を知っていたような言い方じゃないか。でもなんで転生者と聞いて驚いたりしないのだろう。
あと、変態さんは心が痛い、俺が転生前男と知られてしまった以上仕方ないが。
「何がですか?」
【本当】の事を聞いてみたが…
「いえ、こちらの話です」
そう易々とは話してくれないらしい
「紫音霞様、霞様、受付まで来てください」
「はっ、はい!」
急に呼ばれたのでびっくりしたが、席を立ち受付に向かった。
そしたら後ろから…
「話があるので外で待っています」
何の話だろうか。確かになぜ俺が転生してくる前に俺がここに来ることを知っていたのか、それは聞きたい。
「わ、わかりました」
彼女はそう言い役所の外に向かった。
四 運命の出会い(運命ってつくだけでなんかロマンチックに見えるのは俺だけか)
「すいません遅れました」
「いえ、お気になさらずでは、そろそろお昼なのでご飯食べに行ってそこで話しません?変タ、何でもないです」
右手首を見ながらそう言った。おい、時間もわかるのかよ、本当に万能だなそれ。ますます使いたくなってきた。だが、「変タ」は見逃せないぞ。
「今何と?」
「いえ、お気になさらず」
いえ、お気になります!
そう言って彼女は市場の連なる大通りを歩きだした。え?二人で行って大丈夫なの?親に怒られない?あ、そう思えば俺、転生して18歳だったわ。(※無職)
「そういえば名前は何て言うんですか?」
何も話す事がなかったので聞くと
「8YS シロ・ラーゼです。ローゼでいいです」
8YS?家名なのか?ロボットぽい家名だな。いや、待てよ家名と名前が逆という事も…まぁ異世界だからな~何でもありなんだろうけど。
「わかった。ローゼ」
「あなたの名前は…聞くまでもないですね。変態さんですよね」
「いや、ちげぇよ!霞だよ!」
そう言うと彼女は立ち止まり…
「まず、あなた男ですよね。転生前は」
「はい、そうです…」
「まず、その口調を直してください、私はあなたのその口調のせいで変質者だと周りから見られているのですよ。」
周りを見ると多数の視線がこちらに向けられていた。
「すいません」
「あと、他の人からみたらすぐに男とバレますよ。次に、転生するからと言って女子になろうと思う意思がわかりません。」
そう言われると何も言い返せない。確かにこの容姿で前の世界の口調では変質者だと思われるだろう。クール…クール…女…女…
てか、イケメンに転生すればよかった…
五 ロー麺屋
その後、4分ほど彼女の後ろを俯きながら歩いて…
「ここです」
転生した路地裏がもう少しで左側に見える所まで来て彼女はそう言った。外観はレトロなレンガの家、と言ったところだろうか看板には、〔ロ~麺 漢〕って厳つ!そう思えば役所で受付の看板を見た時はそのまま読み流していたが文字は読めるのか。あと、ロー麺て、まさかな…
とにかく中に入ってみた。
「ガラガラ、チャリンチャリン」
横に押す形の扉を開くと、扉を押す音と共に風鈴のような懐かしい音がした。
「らっしゃい!空いてる席にどうぞ!」
入るとU字型にカウンターになっていて、中は外見の洋風とは同様ではなく、居酒屋という感じが強い。奥の方の厨房から威勢のいい声がしたが、その姿は見えなかった。僕たち以外に客は3人程だろうか。
とりあえず彼女が目の前の席に座ったので俺も彼女の左の席に座った。
「軽々しく隣に座らないでください、変態さん」
心にナイフが刺さった様な感覚になった。誰かこのナイフを!俺を励まして抜いてくれ!
「はい…」
やはりクール美女に転生したのがバレたから何も言い返せない
又ナイフを刺されると嫌なので、即座にもう一つ左の席へと移動した。
「…で、何を頼むのですか変態さんは」
彼女はこちらを見向きもせずにメニュー表を渡してきた。
一応文字は読めるのだが…どういう料理が出てくるのだろうか、表には『魔ロー麺』『甘ロー麵』『辛ロー麵』と、3種類のロー麵?が書いてあった。
『甘ロー麵』と『辛ロー麵』は、大体予想つくが『魔ロー麺』とは何だろうか、俺の腹が絶対にそれだけは食うな、と告げてきたような気がした。
「安心しろ食わねえよ」
そう小声で言うと右隣から…
「すみません!」
「へい!ちょいとお待ちを」
そう聞こえた後に奥の厨房から鉢巻をし,お冷を持った厳つい男が現れた。
「どうぞ」
「「ありがとうございます」」
「では、ご注文を」
「魔ロー麺二杯ください」
フラグ回収早っ!
「わかりま…」
「おい、ローゼ俺は食わねぇぞ!?」
イキリ立ちながらそう言った。少し店員さんとお客さんが引いたような気がしたがそれは気にしない。
「何を言っているのですか?二杯とも私が食べるのですよ?、さっき何を頼むか聞いたじゃないですか変態さん」
「そ、そうかごめん」
ゆっくりと座りながらそう言った。
どうやったらその体に魔ロー麺二杯も入るんだよ。まぁ俺はこの世界のローメンも、そのローメンを入れる食器の大きさもわからないが。
「早く頼んでください、店主さんがかわいそうです」
酷い(泣)
「じゃあ、辛ロー麺、一杯お願いします」
甘いのはあまり好きではない
「わかり…ました。少々お待ちください」
店員さんが伝票を書きながらそう言い厨房の方に戻っていった。
「そろそろ外したらどうなんですか、その目隠し…少しマナーが悪いですよ。何か訳があるならいいですけど」
ん?、何のことを言っているのだ?目隠し?そう言われて目の辺りを触ると…
「え?」
何故か目の辺りを触ると布のような感触が伝わり目と手の間に隙間が生まれたのだ。しかし自分からはその布が見えない。
「なにこれ」
「まさか、気付いていなかったんですか?」
まさか、というより出会ったときに言ってほしかったのだが。
「うん…、今さっき転生したばっかりで…」
今考えたら、ロー麺屋?に来るまでにこんな目隠し付けたやつが15歳程の女の子と一緒に歩いていたんだもんな。
もし俺がおじさんに転生していたら、不審者でしかない。
こういう点ではクール美女に転生してよかったと思える。
「ああ、それよりも早く外してくれこのままだと不審者と思われかねない」
自分では外せないので見える人に外してもらう他ない
「私の話聞いていました?変態さん」
そういえばそうだった。俺はクール美女…
「…外してくださいお願いします」
「じゃあ、後ろ向いてください」
そして目を閉じ、後ろを向いて2分後
「はい、取れましたよ」
そう言われ、前を向きローゼを見ると、何故か服が透け…何でもないです!
「あなたオッドアイだったんですね。それにこの色…魔法術式じゃないですか!ちょっときちんと見せて下さい」
そうローゼは言いながら俺の頬を両手で、自分の顔まで近づけてきた。
「ちょっ近い…」
そう言っても彼女は俺の目を見るのをやめなかった。どうやら魔法術式が好きらしい。
「この魔法術式、左目と右目術式が違いますね。左目は…石化魔法でしょうか。右目…はさすが変態さんです。相手を自分のことを好きにさせる魔法ですね。」
「そ、そうか」
よかった~、バレなくて。バレたら即刻逮捕だろうな、でも左目と右目で違う魔法が使えるのか…どうやって?
「なぁこの目ってどうやって魔法を発動すればいいんだ?」
「いや、もう常時発動していますよ。変態さん」
じゃあなぜあなたは石化していないのですか…
いや~2話目めちゃくちゃ時間かかりましたね~もう俺でもロー麺の意味わかんないからな、でも一応意味はあって、ロー麺はホントは労麺なんですよね。労っていうのは敵と戦うゲームとかで敵がもう弱っている時、労っていうんですよ。そこから素材が労、すなわち弱っている→新鮮という所からきています。いや、俺でも何言ってんのかわかんねえ