キュア―
楽しんで戴けたら嬉しいです。
圭依の具合が心配なシャインは外へ圭依を連れ出すのを止めて、できるだけ圭依の部屋で過ごすようにした。
圭依の映画を観ている内にシャインも映画にはまり、圭依と映画を観るのが一日の楽しみになった。
その日もシャインと圭依は二人で並んで映画を観ていた。
ブラッド・レンフロ主演の古い映画で、エイズの少年との友情を描いたキュア―と云う作品である。
圭依が言った。
「死にたくなかっただろうな」
エイズで死んだ子の事を言っていた。
シャインは圭依を見詰めた。
圭依は哀しい顔でエンドロールを観ていた。
「オレ、生きられるなら映画創る仕事したかった
昔テレビで観た田舎の日曜日ってフランス映画が、一場面一場面一枚の絵みたいに凄くキレイでさ、オレもこんなキレイな映像創ってみたいって思ったんだ」
そう語る圭依は顔を輝かせ、夢見る様だった。
シャインは願いを籠めて言った。
「いつか、叶うといいね」
圭依は顔をしかめて言った。
「学校もろくに行けないのに叶う訳無いだろ
適当な事言うなよ」
シャインは圭依の肩に手を置いた。
圭依は急に思い立った様に言った。
「お前、オレを吸血鬼にする方法知らないの? 」
「え? 」
シャインは眼を丸くした。
「そんな事、生まれてから考えた事も無かったから知らないよ」
圭依はがっかりして肩を落とした。
「ほんと、情けない吸血鬼な」
「ごめん」
シャインも肩を落とした。
「確かにボク、傷とか直ぐ治るし、風邪すらひいたこと無いけど、ボクはハーフだから、そんな力があるかどうかも解らない
ボク自身成長してるから、歳老って死ぬかもしれないし」
「使えねえ」
圭依はぼそりと言った。
「そう云う言い方ないだろ! 」
シャインは眼を剥いた。
「使えないから使えないって言ったんだ!
言い方も何も無いだろ! 」
「人を無能みたいに言うな! 」
シャインは立ち上がった。
「無能じゃないか!
吸血鬼の癖に仲間の作り方も知らないなんてさ! 」
圭依も立ち上がった。
「命と引き換えに生きる事がどれほど哀しい事なのか圭依は解って無い! 」
「それでも、オレは生きたいんだよ!
寿命の長いシャインには解らないんだ! 」
圭依とシャインは暫く睨み合った。
「………………帰るよ」
圭依との関係が拗れるのを恐れ、これ以上言い争いたくないシャインは靴を履いて出て行った。
「なんだよ。
本当の事言っただけなのに」
圭依はその場に胡座をかいて座り込んだ。
ここまで読んで戴き有り難うございます。
残り後、四話です。
短編なので一気に投稿できれば良かったのですがスマホに移す作業が辛いので、小分けになりました。
BGMはいつもヴィジュアル系です。
最近のお気に入りはRAZORとDIAURAです。
達也さん美しい&笑顔素敵。
勿論、ドラムも。