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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

独白

作者: 新兎和真

僕にはどうも殺人鬼に同情してしまう癖がありまして


いえ別に殺人行為自体を認めているわけではないんです。

ただなんとなくそれをしてしまう気持ちが痛いほどわかってしまうだけなのです。


常に世間から「お前は役立たずのゴミ屑だ」と罵られてる気がしてならない。


人の笑い声も嫌いだな。


とにかくなにもかもが僕を嘲笑っているかのように思える。


テレビもダメだ。雑誌なんて人の顔が表紙になっていてゲロが出る。


でも不思議とビジュアル系の人は平気かな?

あれは人外というか、人から離れている感じがして好きですね。


きっと僕は人間が嫌いなんだと思う。


皆殺しにしたいぐらいに。


ふふふ、こんなことを思うのはずっと僕が物思いついた頃から今現在まで虐めや虐待にあってたからかな?


あ、失礼。別に美容師さんのことは嫌いではないです。


むしろくだらない僕の話に耳を傾けてくださっていて感謝しているくらいです。


でもね、こんな話をして美容師さんの気を悪くしてしまって今にもハサミでどうにかされるんじゃないかなんてね、考えているんですよ。おかしな話でしょう?


今、パサリ、パサリと僕の髪の毛が落ちていくのを見ていると、季節外れですけど、椿の花が首から落ちるのを連想してしまうんですよ。


そんなふうにね、パサリと僕の首も落とすんじゃないかと思いまして。


いやだなぁ、悪い冗談ですよ、そんな嫌な顔しないでください。


え?シャンプーですか?


ほうほう、何種類か選べるんですね。


今日は暑いからメンソールのシャンプーお願いします。


いつも思うんですがこのシャンプーするときに載せる白い布?


……僕がもし死んで顔に白い布を掛けられたらこんな感覚なのかな?って。


死ぬ話ばかりしてる?


ええ、いつも死にたいと思ってるかもしれませんね、それは。


この世の中にとことん絶望してるんですよ。


全人類を滅ぼすすごい力なんて僕にはないし、ただのガラクタ人間ですしね。

きっと自分を自分で殺したほうが早い。


そしたら世界が終わる。


くだらないことでイライラしたりしなくて済む。


きっと僕は世の中からしたら異物なんです。だからこんなに疎まれる。


でもね、異物にも心があるんです。


疎まれると辛いし悲しいし腹が立つ。


こんな自分だけど僕は人間の中では僕が好きなんです。


だから傷つける奴はどうしても許せない。


おお、いつの間にかセットも終わってしまいましたね。


ありがとうございます。また来ます。


こんな話して嫌われてるのは十分承知なんですが、美容師さん以外僕は話し相手がいないんです。







美容室は冷房がガンガンかかっていたせいか体の末端が冷えていて夏の暑さが逆に心地いい。


たぶん、あんな話をして迷惑だったろう……。


だけど誰にも言えない秘密をこっそり一人の人間に打ち明けたことで僕の心はとても軽くなっていた。


爽やかな風が地肌を通り過ぎていくのが心地よい。シャンプーをメンソールにしてもらって正解だった。


思わず僕は声を出して笑っていた。




ドッ





誰かが僕にぶつかってきた?


いや違う刺されたのだ。



そこにはさっきまでの僕がいた。


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