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最強剣士のRe:スタート  作者: 津野瀬 文
第二章 金と翡翠の冒険者
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第四十九話 それぞれの武器


「ともにログホルトに行く……ああ、分かった」


 トトアラに同行を懇願こんがんされたメルクは、一つ頷きあっさりと了承した。


「本当? いいの?」


 そのあまりにあっけなさに、トトアラは逆に困惑した顔つきとなる。その反応からして、一か八かの申し出だったようだ。


「ああ、どうせ目指す場所は一緒。私の進むペースに合わせてくれるのであれば支障ない。エンデ市からここまでくるのに割と早い速度で歩いてきたが、トトアラは問題なくついてこられたしな」

「でも、今日会ったばかりだし……疑ったりしないの?」

「それはトトアラさんが私を害する可能性があると言う事か? しかし、つけられている時もあなたから害意は感じなかったし、時々わざと隙を見せたが何もなかった……まぁ、一応は同行しても大丈夫だと思ったんだ」

「そっか……信用してもらえたってことね」

「……ああ」


「よかったぁ」と安堵したように胸に手を当てるトトアラ。どうやらメルクの信用を勝ち取れたと思っているようだ。


(……こそこそつけられるより、傍にいてもらった方が動向を把握できるからな)


 だが、メルクは完全に彼女を信じ切ったわけではなかった。


 彼女の気配を断つ技術は中々のものだ。魔力を意識して探らなければ、すぐに居場所を突き止めることは難しい。そうなると常に周囲に気を配らないといけないため精神的に疲れそうだ。

 それくらいならばまだ、傍において肉眼で見えてる方がいいだろう。そうすれば寝ている時くらいしか警戒の必要はないし、傍にいなくてもつけられているのなら、どのみち警戒しなければいけない。

 ともに野営したとして、なんなら寝ている時は魔力を硬化していればいいのだ。相手がルゾーウルムと同程度の実力でもない限り、一撃はまず防げるだろう。


 それに道中、どうしても疑念を拭えなければその時に置き去りにしたり、いたりすればいい。取りあえず行動を共にしなければ、相手の人柄も考えも分からないのだから。


「じゃあ、改めてよろしくね? えーと、別にトトアラでいいんだよ? メルクって成人迎えて直ぐとは思えないほど大人びてるから、そんなに年も離れていないように感じるし」

「いいのか?」

「もちろん。その代わり、私もこれまで通りメルクって呼ぶね?」

「ああ」


 そんなやりとりをして、時間もないと言う事でさっそく二人は歩き始めた。林道と言う事もあって、とても手入れされた道とは言えない荒れた地面を踏みしめ、メルクもトトアラもかなりの速度で歩いていく。


 メルクが隣のトトアラをうかがうと、どうやら自分に合わせて無理している様子でもなさそうだ。息を切らすどころか、周囲に目を配って辺りを警戒する余裕さえ見受けられる。


(……すごいな。今どき冒険者志望ってのは、これだけの実力者なのか)


 自分の力を過信するつもりもないが、トトアラのその姿に思わず感心してしまった。


 前世のエステルトとして冒険者になったころなど、農民に毛の生えた程度の力や技術しかないものが溢れ返っていた。だが現代では、冒険者になる前からトトアラのようにすでにある程度の技量がないと試験にさえ受からないのだろう。


「うん? どうかした?」


 彼女の挙動に感服していると、メルクの視線に気付いたのか不思議そうな目を向けてくる。


「いや……なんでもない」

「そう? あ、そういえばメルクは木の棒を使って戦うの?」

「ああ、今はそうだな。いずれは剣を手に入れたいと思っているが」


 顔を向けたついでと言わんばかりに、トトアラがメルクの腰元を見る。メルクも彼女の視線の先にあった、携えていた木の棒に触れた。


 すでに長年愛用しているので忘れがちだが、トトアラの言うようにこれは中に鉛が入っただけの単なる木の棒なのだ。実戦を考えるのであれば、やはり真剣を装備していた方がいいだろう。


 だが武具にも高練度の魔力硬化を使えるメルクにとって、一般的な武器屋に売っている業物では木の棒とあまり変わらない。

 やはりヨナヒムやエレアが持つ武器のように、迷宮で発見された特殊効果付きの物が望ましい。


(本当は、エステルトの時に一緒だった『あいつら』がいいんだけどな)


 前世で苦労して手に入れ、そして最期の時まで振るっていた二振りの剣を想う。

 彼らは世界を救うため、エステルトともに『為す者(ファルガーロ)』の前にじゅんじたのだ。どれだけ旅を続けたところで、再会することは叶わないだろう。


「……それで? トトアラは一体どういう戦い方をするんだ? 見たところ武器も持っていないようだが」


 少し感傷に浸りかけたところで頭を軽く振り、今度はメルクから尋ねてみた。実際それは少し気になっていたことだ。


 トトアラの魔力は人間にしてはそれなりにある。だが、ルカのような魔法使いを思わせる物は身に着けていないし、さりとてヨナヒムやエレアのように皮鎧や得物を装備しているわけじゃない。

 少し素材が良さそうなぴっちりとした衣服に身を包んでいるだけで、一見すると戦う者に見えないだろう。

 むしろそんな衣服のせいで強調された体型がなまめかしく、人によってはその手の職業かと勘違いされそうだ。


「私? 私はこれよ」


 そう言って彼女はぴっちりとした衣服を少しめくり、そこに隠されていた刃渡りの短いナイフを取り出した。少し幅広の、特徴的な柄をしている。


「ナイフか……なんだか暗殺者みたいだな」

「もう、人が気にしてるのにっ!」

「あ、そうなのか? すまない」


 素直な感想が口をついて出たメルクが謝罪すると、頬を含まらせたトトアラはすぐに舌を出した。


「……なーんて。実はちょっと意識してるんだよね。いい気な男が身体目当てで私に近づいてきたら、これでぶすり……へへっ。暗殺者っぽいでしょ?」

「そ、そうだな。気を付けるとしよう」

「? 何でメルクが気を付けるのよ?」


 少しだけ彼女から距離を取ったメルクに、理解できないと言わんばかりのトトアラ。もちろん、理解されたら困るのだが。


「しかしナイフが武器なのは良いが、それだけで大丈夫なのか? 冒険者は人間よりも魔物を多く相手にする。魔物によってはナイフじゃ刃が通らなかったり急所まで届かなかったりするんじゃないか?」

「へ?」


 メルクにそう言われ、その可能性に初めて思い当たったとばかりの表情になったトトアラ。しかしそれがメルクの見間違いだったかのように、すぐに取り繕ったような笑みを浮かべる。


「――そういえばそうね。でも長いことこれで技を磨いてきたから、冒険者になったら対人を主に頑張ろうかな」

「……ああ、それも悪くないかもな」

「あ、ところでさぁ――」


 それから他愛ない会話をしながら道を行く二人。

 楽しそうにこちらへしきり話しかけてくるトトアラへ相槌あいづちを打ちながら、メルクは冷静に彼女を観察していた。


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[気になる点] ふーん…?それはちょっと訳ありすぎないか…?
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