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ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~  作者: 餅月望
第八部 第二次司教帝選挙~女神肖像画の謎を追え!~
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第四十一話 リオネルの覚悟とシオンの想い

 その日の夕食時。

 食堂に足を運んだミーアは、手早くキノコシチューを駆けつけ三杯した後、シオンのところに足を運んだ。先ほどのベルの話を確認するためである。

「シオン、少しよろしいかしら?」

「おや、ミーア。どうかしたのか?」

 不思議そうな顔をするシオン。そんな彼の隣にささっと座ると、ミーアは声を潜めて言った。

「ベルから話を聞いたんですけど、あなた、リオネルさんの味方をするつもりとか……」

「ああ、あれか」

 それを聞き、シオンは思わずといった様子で手を打った。

「あれは、なかなかの妙手だったな。俺もつい協力したくなってしまったよ。さすがは、帝国の叡智の孫娘、と言ったところかな?」

 実に、感心したという様子だった。どうやら、協力するというのも間違いではないらしい。わかってはいても、舌打ちしたくなるミーアである。

「あるいは、もしかすると、君も似たようなことを考えていたんじゃないのか?」

「おほほ。まさか、あくまえも、あの子の考えたことですわ。まったくもって、わたくしが想像しなかったことでしたわ」

 あくまでも、ベルの行動は想定外のこと……とアピールしておく。

 すべて計算通りで、勝つ算段すら立っていると思われたら、手加減だってしてもらえないだろう。まぁ、最初から、手加減はほとんど期待できそうにないが……。

「ふふふ、そうか。あくまでも手柄を孫娘に譲るということか。いずれにせよ、帝国の未来は明るいな。うらやましいことだよ」

 シオンは愉快そうに笑い、

「それはともかくとして……やるからには全力でやろうと思っているよ」

 やっぱり、そんなことを言いやがった。

 性格的にそうだろうなぁ、と思いつつも、ミーアは少しだけ驚く。

「あら? ずいぶんと、リオネルさんの肩を持ちますのね?」

 全然、手加減してくれてもいいんだよぅ? なんだったら、手抜きしてくれても、オーケーよ? っと力強く主張したいミーアなのであるが……シオンは少し黙って、何事か考えた様子を見せてから……。

「ベル嬢から聞いているかは知らないが、彼は『特別初等部を潰せ』と言った者たちを遠ざけることにしたんだ。一番確実な支持層、確実に味方にできる者たちを、正義に反する者たちとして、ね」

 シオンは食堂の外れ、一人で食事をするリオネルのほうに目を向けた。

「なかなか勇敢な行動と言えるんじゃないかな。わずかでも、安全を捨てて、正しいことをしようというのは……」

 そう言われ、ミーアも思わず唸ってしまう。

 なるほど、確かに、それは評価に値することだろう。その勇気が持てずに、飢饉を呼び込んだ貴族が多かったことを考えれば、躊躇いなく正しい判断ができるリオネルは、十分に評価に値するだろう。

 ――それに、そういうタイプは、シオンが好きそうですし……。

 正義と公正のために、目の前のわかりやすい安全を投げ捨てる。実に、好きそうだ!

「彼は間違えかけた。けれど、悔い改めて正しい道を歩もうとしている。そんな若者を応援したい、応援してやらなければならない、と思ったのさ。ちなみに、俺のほうから、サンクランド貴族に声をかけるつもりはないが、幾人かの者は忖度するだろうから、結構いい勝負になるかもしれないな」

 そう笑うシオンに、ミーアは思わず頬がひきつる。

 ――いい勝負どころか、むしろ、戦況不利な気がいたしますわ。なにしろ、シオンは顔がいいですし、リオネルくんも、なかなか可愛らしい顔立ちをしている。油断はできませんわ。

 負けた時のダメージが減るほどに、勝ちが遠ざかっていく状況。

司教帝の影に怯えるミーアとしても、これはもう、リオネルが勝ってもいいんじゃないかな? などと、ついつい思い始めてしまって。

 ――そもそも、レアさん自体、わたくしが巻き込んでしまった感が強いですし。この逆風の中で、頑張り続けてくれるかしら……?

 それもまた問題だった。これは、いよいよ、ラフィーナを説得するほうが楽なんじゃ……? なぁんて、諦めモードに入るミーアである。そこへ……。

「ミーアさま……、ご相談したいことがあります」

 自分を呼ぶ声に顔を上げると、レアがそこに立っていた。

「ああ、レアさん。ちょうどよかったですわ。わたくしのほうからもお話ししておきたいことがございましたの。もう、お食事は済みましたの?」

 その問いに無言で頷くレア。

「そう。わたくしもお食事は終わりましたわ。それならば、デザートを食べつつ、わたくしのお部屋で話しましょうか?」

 そうして、誰にも何も文句を言われぬよう素早くデザートを手配、それから、レアを伴い、自らの部屋にやってきた。

「ええと……それで、何のお話しかしら?」

 そわそわとデザートを待ちつつ、ミーアは話を振ってみる。っと、レアはもじもじとうつむいてから、やがて、静かに顔を上げて……。

「私に……演説の仕方を教えてください」

 真っすぐに見つめてくるレアに、

「とっ、とりあえず、デザートが来るのを待ちましょうか」

 そう答えつつ、ちょっぴり気まずさを覚えるミーアである。

 ――うう、せっかくやる気になってきたところを、出鼻をくじいてしまいそうですわね……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 蛇の毒VSキノコの毒。
[気になる点] 恐らく帝国のミーア姫は聖女ではないが魔女でもない。彼女は『人』だ。一貫した邪悪さを持たぬ、善にでも悪にでもなる、気まぐれな『人』に過ぎない。他の王族と変わりはしないでしょう」とリオネル…
[一言] ミーア様なんだかんだ言葉選びに教養あって革命時に培われたクソ度胸あるから演説力高いのよね…… しかしクソ度胸とか教えられるもんではないしどうすればいいのやら
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