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第百五十三話 ミーア姫、理想的体制を整える!

「私が……力を発揮できる場所……」

 ロタリアが小さな声でつぶやく。

「なるほど、確かに、レムノ王国の状況が憂慮すべきものであることはわかりました。サンクランドとして、助けを求められれば力を貸すことが正しいという状況であることも……しかし、風鴉のことを、ミーア姫殿下はどうお考えですか?」

 ナホルシアが鋭い視線を向けてくる。

「レムノ王国からすると、我らサンクランドは騒乱の原因を作った国。それが再び、女子教育について口出ししてきたとなれば突っぱねられる……と、そういうことだろうか?」

 腕組みしつつ言ったのは、シオンだった。

 なるほど、言われてみればそうですわ……っとミーア、心の中で頷く。

 だから、どうすればいい、という具体的なアイデアは特にないので、ここは聞き役に徹することにするが……。

「ええ。その通りです。もっとも、それを逆手にとって、謝罪の意味もあって協力したい……、などと理屈を付けることも一応はできるかもしれませんけれど……」

 なるほど、それは確かに協力する理由になりますわね……っとミーア、心の中で感心する。

 そこにどの程度のリスクが見込まれるのか、その理屈に説得力が本当にあるのかどうか、いまいち自信が持てないので、ここは聞き役に徹することにするが……。

「しかし、それは謝罪になるかしら? クラリッサ姫殿下は、お聞きした印象ではあまりレムノ王国では重んじられていないご様子。姫の行いが、レムノ王国上層部から疎まれるものであれば『謝罪の意味でそれに協力する』というのは筋が通らないように思うけれど……」

 ルスティラが指摘する。ちなみに、淹れ直してもらった紅茶に、ジャムを入れているのを、ミーアはしっかりチェックしていた! そして、ルスティラの背後、メイド長が、アンヌみたいな目つきで、ギンッと! 前大公夫人の動向を見張っていることも!

 ――なるほど、どこの国にも主の健康を心配してくれる忠義のメイドはいるものですわね……。ともあれ、なるほど。確かに『余計なことするな』と思っていることの手助けをしたとして、それが謝罪とはなりませんわ。

「逆に、そこにこそ可能性を感じる……とも言えますが……」

 そこで、満を持して声を上げたのは、これまでミーアの後ろで成り行きを見守っていた男、ルードヴィッヒだった。

 彼は眼鏡をクイッと押し上げつつ、ミーアに顔を向け、

「よろしいでしょうか、ミーア姫殿下……」

 発言の許可を求める。

 おお、ついに帝国の叡智袋が動き出してくれるか! っと、ミーアは静かに頷いて、

「ええ。あなたの発言を遮るような真似は、わたくしはいたしませんわ。あなたの言葉が無益であったことなど、ただの一度もないのですから……」

 それから、ミーアはサンクランドの面々に力強い笑みを浮かべ、

「この忠臣ルードヴィッヒは、わたくしが最も信頼する臣下の一人ですわ。彼の言は、わたくしの言葉と思ってお聞きいただければ幸いですわ」

 ちゃっかり、自分は何も言わなくても良い体制を築いていく!

 そう、ミーアの理想は、主君が寝ていても回っていく国なのだ。

 自分が、お茶菓子を食べる以外に口を開かなくとも会議が回っていくのが、一番の理想形なのだ!

「ありがとうございます。では僭越ながら……。レムノ王国の国王陛下と接してみた印象なのですが、むしろ、逆かもしれません」

「ほう。逆、というと?」

 ナホルシアが、興味深そうに視線を向ける。それを受け、ルードヴィッヒは小さく頷き、

「貴族令嬢、いえ、もっと広く女性全般など、どうでも良いもの、と。教育を施そうが、施すまいがどうでもいい……と。そのように見るのではないか、と思います。あるいは、そのように考えるよう、誘導するのは容易……そのような人物のように思いました」

 それからルードヴィッヒは指で眼鏡をコツコツと叩きながら……。

「ですから、蔑み侮っているからこそ、どちらでも構わない、と、そのような結論に導くことができれば、勝算は十分にあるように感じます」

 眼鏡を光らせつつ、ルードヴィッヒは続ける。

「むしろ、これが、セントノエルのような、国の次世代を担う貴族の男児への教育であったほうが抵抗は大きいだろうと思います。レムノ国王陛下は、サンクランドの介入を嫌うでしょう。だから、謝罪という名目でサンクランドに介入されることを警戒させてやれば……」

 ――なるほど……。国にとってあまり探られたくない場所に介入されるより、どうでもいい場所に送り込んでお茶を濁すのが最善……と思わせる。そんな誘導ですわね。それに、謝罪を断れば断ったで、サンクランドから怪しまれる、みたいな流れを作って断りづらい雰囲気も作れれば……。どうでもいいところを当てがってやったほうが面倒がなくてよい、と思わせることができるわけですわね。

 さすがルードヴィッヒだなぁ。やっぱり、帝国の知恵袋は違うなぁ! っと感心しきりのミーアである。

「あのレムノ国王であれば、そのように誘導することも可能ではないかと思います」

「確かに、そうですね。私もそのように感じました」

 ここで、ティオーナが、賛同の声を上げた。

「ティオーナさんは、レムノ王国の国王陛下とも面識があるのですか?」

 少し驚いた顔をするイスカーシャに、あっけらかんとした顔で、ティオーナは頷いた。

「はい。以前、レムノ王国の革命時に……」

「ああ、そうでしたわね。革命を起こした者たちの赦免をお願いしにいってもらったのでしたわ。あれは蛇によって起こされた事件でしたし、革命軍側も被害者と言えなくもなかったですから」

「そうだったな。思えば、我が国の諜報機関の暴走の後始末をさせてしまった形だ。あの時は申し訳ないことをした」

 シオンの言葉に、ティオーナはわたわたと手を振った。

「い、いえ! あの時はルードヴィッヒさんが主に話してくださったので、私はなにも……」

 などと慌てるティオーナだったが、ナホルシアは納得の表情で頷いて。

「ああ。そうでしたか……。ルドルフォン嬢は我が国の恩人だったということですね……」

 それから、胸に手を当てて、深々と頭を下げる。

「ならば、改めて、先ほど礼を失したことを申し上げたこと、心より謝罪いたします。そして、サンクランドの失態のため、ご尽力いただいたこと、心から感謝いたします」

 そんなナホルシアを見て、ティオーナはますます慌てるのだった。

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間違っていたらスミマセン(;_;) 「逆に、そこにこそ可能性を感じない……とも言えますが……」 ここの部分がどうしても分からないのです。 「可能性を感じる…とも言えますが…」や「可能性を感じないことも…
レムノの騒乱を革命と言うのは無理があるんじゃないでしょうか?宰相の解放を求めるものだったので一揆ですらなく、強訴という表現が一番近いかもしれません。 現実世界では地を這う者達が3割足らずの得票で8割を…
そうだったな。思えば、我が国の諜報機関の暴走の後始末をさせてしまった形だ。あの時は申し訳ないことをした」  シオンの言葉に、ティオーナはわたわたと手を振った。 「い、いえ! あの時はルードヴィッヒさん…
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