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第六十七話 相談は順調に進み

 ルールー族の村に戻ったミーアは、早速、族長の家にて話し合うことにする。

「族長さま、今後のことを少し話し合いたく思うのですけど……」

 ここでの作業は、恐らく時間がかかるうえに、人手もかかる。ミーア的には方針だけ決めてしまい、あとは現場に投げてしまいたい案件である。

 そもそも、ミーアは別に森歩きが得意でもない。どちらかというと馬に乗っての移動か、波に浮かんでの移動のほうが得意なのだ。自分で歩かなければいけないのは、疲れるし……。

 冒険やら探検やらが得意なわけでもない。キノコ狩りは得意だという自覚はあるのだが……。

 どこかのベルじゃないのだから、根本的に、普通の姫君やご令嬢というのは森の中を冒険するものではないのだ。

 ともあれ、調査の進め方については、ある程度、詰めておく必要があるだろう、と考えるミーアである。

 ――歌詞のほうは、ハンネスさんにお願いして……、ルールー族の言語を考慮して調べを進めるように指示すべきですわね。村での聞き取りが必要になるかもしれませんわ。それ以外の言語学的なことは、わたくしが口を出すことではありませんけど。

 できる限り、面倒くさそう(アカデミック)なことには関わりたくないミーアである。

 ――森の調査に関しては、森の賢者と名高いガルヴ学長にも助言を戴くとして……。ふむ、そちらも、ある程度は専門家にお任せしてしまうのがよろしいですわね。

 一つ頷き、ミーアは口を開いた。

「聖ミーア学園の学園長、ガルヴさんは、こちらにもよくいらっしゃるのかしら?」

「ガルヴ殿、ですか? それならば、七日から十日に一度は、酒を飲みにくる、です」

「ふむ、でしたら、ガルヴさんと先ほどのことを、相談していただくのがよろしいのではないかしら?」

 恐らく、あのガルヴならば、効率的な調査方法を知っているだろう。

「ガルヴ殿……聖ミーア学園と協力、ですか?」

「ん? まぁ、そうですわね。学生たちに任せるのはさすがに心配ですけど……。ああ、でも、ワグルは慣れているから大丈夫かしら?」

 そう言ってやると、族長はハッと目を見開き、それから、感動に目元を潤ませた。

「我が孫に、過分な信用、痛み入る、です」

 ――ふふふ、別れたお孫さんが、この森での生活に慣れて、よほど嬉しいのですわね。

 ニッコリ微笑んでから、ミーアは続ける。

「それはともかくとして、事前に話し合って適正な数を決めるのがよろしいのではないかしら?」

 調査に参加する者の数、同時に入るのは何人にするのか? どのように進めていくのか?

 組織の運用をきちんと考える必要がありそうだった。

「できるだけ効率的な数にしないといけませんわね」

「広さ次第だと思う、です」

「その通りですわね」

 ミーアは腕組みしつつ頷く。

 ――探す範囲がどれぐらいの広さと見積もるのかも重要なことですわ。実は考えているより狭い、なんてことがあれば、人海戦術で探したほうが話が早いということもあり得ますし。

 ミーアの言葉に族長は極めて真面目な、厳格な表情で頷いた。



「今後のこと……」

 ミーアから話を持ち掛けられた時、族長は、即座に彼女の言いたいことを察知した。

 ――パライナ祭での我らの立ち回り方について、か。

 どのように、ミーアの思惑を手伝えるのか、その辺りを事前に確認しておくのは有意義なことのように思えた。

「聖ミーア学園の学園長、ガルヴさんは、よくこちらに来られるの?」

「ガルヴ殿でしたら……」

 っと、その答えを聞いたミーアは言った。それならば、ガルヴに相談すればいい、と。

 ――ガルヴ殿に相談……。確かに、作成したミーア姫殿下の木像をどのように飾るか、相談しなければならない、か。一番、良い形で展示できるよう、よく話し合う必要がありそうだな。

 納得顔で頷いて、族長は言った。

「聖ミーア学園と協力、ですか?」

「ええ。学生たちに任せるのは少し心配ですけど、でも、ワグルは慣れているから大丈夫かしら?」

 あっさりと放たれた一言……そこに込められた信頼が、族長の胸に迫って来た。

 己が大切な孫が、帝国の叡智に認められているという幸せを噛みしめつつ、彼は言った。

「ああ、我が孫に過分な信用、痛み入る、です」

 ミーアは、そんなの当たり前のことだ、とばかりに、ただ黙って頷いて……。

「事前に話し合って、適正な数を決めるのがよろしいのではないかしら?」

 ミーアの言葉に、族長は頷く。

 ――そうだ、それは必要なことだろう。たくさん作り過ぎても飾り切れない。会場の広さを考えることが必要だろう。

 そのことを指摘すると、ミーアは深く頷いて、

「その通りですわね。どのぐらいの広さがあるものか……」

 聖ミーア学園とグロワールリュンヌ学園に与えられる展示のスペースがどのぐらいの大きさになるか?

 場合によっては、その展示用の建物からルールー族で作っても良いかもしれない。幸い、皇女の町FNYミーアランドで、皇女ミーア記念館建設に携わった者たちもいる。


 かくて、木材のスペシャリスト、ルールー族が、展示会場作りに正式に参加することが決定した。

 パライナ祭の会場に、帝国の叡智ミーアを主役としたテーマパークが出現してしまわないか、甚だ心配になるところだが……。

 あいにくとミーア当人は、その危険性にまったく気づいてはいないのであった。

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― 新着の感想 ―
ちょっと待って… お腹痛い なんでこうなる? 前話まで噛み合ってましたよね?よね? なんでしょうか もはや 神の見えざる手ですねぇ パライナ祭後は 各国にお土産として 持ち帰られるのでしょうか?
ミーアの場合、1周目の学園に通っていた頃はともかく嫌味メガネとあったぐらいから、ミーアの美点になった身分差は気にしないタチですが、帝国貴族の身分差気にしまくる帝国の実情知っていれば、族長みたいに感動し…
きちんと話し合ってるのに意思の疎通が全然できてないのすごい。これが帝国の叡智の力……眼鏡の有無に関係なく人を曇らせる……。
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