表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~  作者: 餅月望
第九部 世界に示せ! ミーア学園の威光を!
1250/1477

第百三十九話 ミーア姫、さいごの輝きを放つ!

「私もいろいろと学ばせていただきました。今日のこのやり取りから、新たな学科を作ることも検討しております」

 学長ガルヴの言葉を聞いて、ミーア・ルーナ・ティアムーンは穏やかに同意した。

「それも、大切なことかもしれませんわね。ガルヴ学長までもがそうおっしゃるのであれば……」

 その言葉を聞き、ユバータ司教は、わずかばかり驚きを感じていた。同時に、深い、深い感動も……。

 ――ミーア姫殿下……あなたは、なんという……。

 先ほどの討論会において、シオン・ソール・サンクランドがやろうとしたことは、ミーアの言葉を共有することではなかった。それはすなわち、ミーアの『考え』や『思想』のみを、みなに伝え広めることではなかった。

 彼は……ミーアの『実際の行動』、すなわち『実践』から意義を導き出そうとしたのだ。

 そして、そのやり方を、ミーアが認めたということに、ユバータ司教は震える。

 ――ミーア姫殿下は、これからも綺麗事を口先だけで唱えることはしない、とおっしゃっている。ご自身の行動によって、言葉の正しさを証明するとおっしゃっている。そして、そんなご自身の生き方を世に見せることで、他の王侯貴族に範を示そうとなさっているのだ!

 ミーア・ルーナ・ティアムーンは「口ではどうとでも言える」といった類の批判を受け付けない。なぜなら、行動と実績によって言葉の正しさを証明するからだ!

 さらに、ミーアは駄目押しとばかりに続ける。

「けれど、一応言っておきますわ。大陸の未来を論じる際、わたくしが関与したいくつかのことが話題になるかと思いますけれど……そこに誇張は必要ない、むしろ厳禁であると言っておきますわ」

 ミーアは、そんなのなんでもない、と言わんばかりの穏やかな顔で……。

「もしも、わたくしのしたことを伝えるというのであれば、一切飾り立てることなく、ありのままを伝えていただきたいですわ」

 その言葉に、またしても、ユバータ司教は感銘を受ける。

 ――ミーア姫殿下という善良な存在は、他の王侯貴族にとっては目障りなものとなり得る。ゆえに、揚げ足を取ろうとあら捜しをする者も現れるだろう。もしも、一つでも誇張が見つかれば、他のすべても誇張であると……、綺麗事であると貶め、己が悪行を省みることを拒むかもしれない。ゆえに、ミーア姫殿下は先手を打ったのだ。

 ありのままの自身の行いを見よ、と。

 ありのままの自身の行いから学び取れ、と。

 そう、ミーアは言っているのだ! ……そうだろうか?

 はたして、なんの躊躇いもなくそのようなことを言える者がどれだけいるだろうか……。

 恥ずかしげもなくそう言って、胸を張れるほどに厳しく自身を律する者が、どれだけいるだろうか……?

 ――なるほど……これが帝国の叡智。あの聖女ラフィーナさまが一番の友と認めた方か……。

 そーんな感じで、深くふかぁく感動するユバータ司教を尻目に……。


 ミーアはヤーデンの申し出を検討していた。

「なるほど。パライナ祭のほうで決まりがないのであれば……」

 一応、レアのほうに目を向けるミーア。

「パライナ祭の発起人はレアさんでしたわね。どうかしら? そのように、帝国から二校が代表として出るのは……」

「先ほどの討論会を見ていれば、反対する理由はどこにもありません。今から、両校が協力してどのような発表をしてくださるのか、楽しみです」

 レアも問題なし、と確認したうえで、ミーアは真っ直ぐにグロワールリュンヌの生徒たちと、聖ミーア学園の生徒たちに視線を向けて、

「ならば……聖ミーア学園、並びにグロワールリュンヌ学園の両校に連なる者たちに特別に命じますわ。我が、ティアムーン帝国の栄光を、大陸中の国々に示しなさい!」

「はっ!」

 その言葉に、その場のみなが背筋を伸ばす。

「わかっていることかとは思いますけれど、あえて、言っておきますわ。我が帝国の栄光を示すということは、我が帝国“だけ”の栄えを示せ、ということを意味しませんわ。わたくしは、他国を貶め、我が帝国のみが輝く……そのようなやり方は決して望みませんわ」

 みなの分もケーキを独り占めすることをミーアは望まない。

 同じく、栄光を独り占めするなどミーアは望まない。

 だって、危ないし……。それに、気分も良くないだろう。

 ミーアが望むのは、ケーキをみなで分け合い、自分はイチゴの乗った部分を食べること。気持ちよく、美味しく味わうこと。

 すなわち……。

「他国と栄光を分かち合い、他国を輝かせ、そのうえで我が帝国がより輝く! それこそが、わたくしが望むことですわ!」

 堂々と胸を張り、ミーアは言った!

 その言葉を放った時、ミーアは確かに輝いていた。強烈に強烈に、輝いていた!

 それは、星の命が尽きる直前に、ひときわ強く輝くのと同じ光であった。


 それは、肥沃なる三日月地帯を涙に染める(ふるきティアムーン)帝国が燃え尽きる、最後の光か。

 あるいは……ミーアの中に蓄えられた糖分が燃え尽きる、最後の輝きか……。


 士気あがる両校の学生たち、未来の忠臣たちが、どのような活躍を見せるのか……、見せちゃうのか!?

 今のミーアには知る由もないのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 章タイトルはミーア学園でしたが聖ミーア学園だけでなくグロワーリュンヌもミーア学園に染まってしまった?! この2校にも夏休みはあるのだろうか?!夏休みの宿題と自由研究を想像しちゃいます […
[一言] ユーバタ司教がパライナ祭の準備で帰国後に確実にミーア好きのラフィーナ様が様子を聞かれてミーアを聖女認定したりパライナ祭後に各国からもミーア聖女認定の要請が来てしまいミーアが頭を抱える未来も有…
[一言] ふ、フィクション要素も多い皇女伝が出張ってこないだけましだから... 多分きっとおそらく...? ???「おや、ここに良い教材が...!」
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ