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ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~  作者: 餅月望
第九部 世界に示せ! ミーア学園の威光を!
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第百三十七話 充実した表情で……

 ――ふむ……これ以上は、情報は出てこないかしら……。

 その後もナコルから話を聞き出そうとしたミーアだったが、以降は特に目ぼしい情報はなかった。

 そろそろ潮時か……と判断したミーアは優しい笑みを浮かべて、ナコルに言った。

「ふぅむ、シドーニウス殿は、聞けば聞くほど興味深い方ですわね。できれば、今度、その残されたメモというのもお見せいただきたいですわ。ミーア学園の教育にも生かしたいところですし……」

「我が伯父に興味をお持ちいただき感謝いたします。ただ、その……。伯父の知恵は我がフーバー家の貴重な財産でもございますので……」

 ナコルの答えは、さすがに学問に造詣の深い家柄なだけあって、慎重だった。知識の重要さを熟知する者の賢明な答えと言えるだろう。

 けれど……。

「ならば、私が直接、命じよう」

 厳格な声が、響いた。

 娘の活躍を黙って見守っていた皇帝、マティアス・ルーナ・ティアムーンは、威厳たっぷりな態度でナコル・フーバーを見つめ、それから、やや離れたところで、物思いに耽っているフリオ・フーバー子爵に目を向けた。

「フリオ・フーバー子爵に問う。このティアムーン帝国にある、あらゆる物、あらゆる知識はただの一つの例外もなく、我が帝室のもの。そうだな?」

 突如、話の矛先を向けられたフーバー子爵は、すっと背筋を伸ばし、

「はっ! まさに、その通りでございます、陛下」

「ならば、フーバー子爵、特別に命じる。お前の兄、シドーニウス・フーバーの残した文書をすべて提出せよ。我が娘、ミーアの言葉を残らず実行するのだ」

「ははぁっ! 確かに承りました」

 ビシィッと背筋を伸ばすフーバー子爵。

 それから、マティアスはミーアに視線を向けて来た。キラッキラした目で見つめてくる。もしも、尻尾があったら、ぶんぶん勢いよく振っていそうな様子だった。

「どうもありがとうございます。助かりましたわ、陛下」

 ミーアの丁重なお礼にマティアスは眉をひそめる。

「むっ! ミーアよ、お礼を言う時は、お父さまか、もっと親し気にパパと呼んでくれても……」

「家臣の前ですわ、陛下」

 ニッコリ笑みを浮かべるミーアであったが、言葉に込めた謝意に偽りはなかった。それを感じ取ったのか、渋々ながら、マティアスも引き下がるのだった。

 ――お父さまのおかげで、シドーニウスの考えがわかるかもしれませんわ。それもすべてラフィーナさまにお送りしてしまうとして……。あとは、今、聞いたことを残さずルードヴィッヒとパティ、それにリーナさんに共有。それで大丈夫かしら……?

 一見すると、とってーも賢そうな顔で、これからすべきことを心の中にメモするミーアである。

 それからミーアは、部屋の隅のほうにいるヨハンナたちのほうに目を向ける。っと、ちょうどパティがヨハンナに抱きしめられていた。一瞬、ヨハンナの逆鱗に触れて締め上げられているのでは……と少しだけ心配になったミーアだが……どうやら、そうではないらしい。

 ――うん、ヨハンナさんのほうは、どうやら上手く解決できそうですわね。なによりですわ。

 フーバー子爵のほうも、とりあえずは上手く片付きそうだし、これはなかなか悪くない結末なのではないだろうか……と安堵するミーアであった。

 そうして、のんびーりと討論会場へと戻り……。部屋のドアを開け放った……瞬間っ! ミーアは違和感を察知する。

 室内の視線が一斉にこちらに向かってくる。その熱量に、ミーアは一歩引く。

 ――なっ、なんですの、この熱い視線は……! なにやら、雰囲気が、ちょっと違うような……? あら?

 極めて熱心、かつ叩きつけるような視線……これはいったい……?

 首を傾げるミーアであったが……そうなのだ。グロワールリュンヌの者たちは、ミーアの功績を聞いて圧倒されるのと同時に……うらやましくなってしまったのだ。

 そんなことできたらいいなぁ……、きっと人々の称賛を一身に集めることができるんだろうなぁ……うらやましいなぁ! などと……。

 ミーアを熱心に褒め称えるミーア学園の生徒たち、さらに、セントノエルの者たちを見て、あるいは、ミーアの家臣たちを見て……心に強い羨望を覚えたのは、カルラだけではなかったのだ。

 貴族とは、自尊心の塊。称賛を受けるのが、だぁい好きな者たちが多いのだ。

 ゆえに、彼らは思ってしまうのだ。

 自分も、ミーアのようになりたい! と……。

 ミーアのやり方を学び、みんなからの称賛を受けたい! っと。


 さて、そんな熱い視線を受けたミーアは、考えることしばし……。

 ――ふぅむ、まぁ、でも……討論の途中で抜けた者に興味が向くのは不思議なことでもないかしら。ここを離れてどんな話をしていたのか気になるものでしょうし……うん、気にする必要はないですわね、たぶん……。

 ミーア、なんとこれをスルー!

 そうなのだ、ミーアは、すでに使い果たしていたのだ。糖分を……。そして、前日、蓄えられたFNYのほうは、エネルギーにするには、いささか時間が必要で……。

 ということで、ちょっぴりポヤァっとした頭で、ミーアはシオンに問うた。

「それで、討論会は、どのような感じだったのかしら?」

「ああ、そうだな……。とても充実した話し合いができたと思うよ」

 満足げな顔で頷くシオン。さらに、ルードヴィッヒやバルタザルも討論会に参加していたらしい。いずれも充実した笑みを浮かべていた!

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― 新着の感想 ―
[一言] お肌の艶めき具合でミーアエリートレベルがわかります。
[一言] 曇り纏いし眼鏡達、つまりはファンによる推し活動後である! 精神安定的にはミーア様のこのスルーは正解かもですねw
[良い点] 学生たち『そんなこといいな、できたらいいな。あんな功績こんな功績いっぱいある~けど~♪称賛を一身に浴びたいな~♪』 ミーア『ハイっミーアネットですわ~♪』
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