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ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~  作者: 餅月望
第九部 世界に示せ! ミーア学園の威光を!
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第百二十九話 ミーア姫、大丈夫だと信じる!

 ――ふむ、まぁ……あちらはとりあえず、大丈夫そうですわね。たぶん。うん……大丈夫だと信じることにしますわ。信じることは、とても大切ですし……大丈夫!

 ミーア、自分に言い聞かせつつ、そっと目を逸らす。

 意識を、フーバー子爵家の問題へと向けて、改めて考える。

「……しかし、フーバー家については、どういうことかしら……。蛇の知識を利用している様子なのに、蛇ではないようだ、というのは……」

 シュトリナとパティの話を検証する。

 奇妙な話であるし、そもそも感覚的なものだから、本来はあまり信用できないかもしれない。これが、自分自身の直感だったり、ベルがなんか言ってる……程度の話だったりすれば、まぁ、考慮せずとも良いかもしれないが……。

 ――蛇に精通し、なおかつ頭も良いこの二人が言っているというのであれば、考えなければなりませんわ。

 ミーアは、そうして考える。どのような事情があったのか……。フーバー子爵にチラリと目をやり……直後、閃いたっ!

「あるいは、一部しか知らされていなかった……肝心な部分を知らされていなかった、と……信用の問題で……」

 つぶやくミーアの脳裏には、前時間軸の光景が思い出されていた。

 それは、いつも通りにクソメガネに愚痴っていた時の記憶で……。


「うぐぐ……いったい、なぜ、誰もこのように大切なことを、わたくしに教えてくださらなかったのかしら? この帝国がここまで大変なことになる前に、少しでもわたくしに教えておいていただければ、もっとやりようがございましたのに……」

 八方ふさがりな状況……。ルードヴィッヒから伝えられるものは、どれもこれも絶望的で、ミーアにはどうすることもできなくって……。

 思わず情報を隠していた文官たちを蹴り飛ばしたくなるミーアである。

 まぁ、そういう者たちは、すでに白月宮殿にも月省にも顔を出さなくなっているわけだが……。

「あるいは、より状況を悪化させてしまう、と思われたのかもしれません」

 ルードヴィッヒのつぶやきに、ミーアはギンッと鋭い目を向け、

「どういう意味ですの、それは……! わたくしに知らせることで、いったい、どのような不都合があるというんですの!?」

「無論、ミーア姫殿下が、余計なことを口走らぬよう、という配慮です。知らなければ余計なことを言ってしまうこともない。そのような配慮もあり得るでしょう。なにしろ、私もしてますから。商人との会談の時とか、事前に注意しますよね」

「ぐむ……。確かに、そうした側面もあるかもしれませんけれど……。しかし、あなたのように事前に言っておいてくれればいいだけのことですわ。言われてなお、余計なことを口走ると思われるのは心外ですわ! わたくしが、そこまでのうっかり者だと思われているということかしら?」

「……それもあるでしょうが、あるいは、悪意からわざと口走ると思われたのかも……」

「なっ!」

 ミーアは信じられない、と言った顔で、ルードヴィッヒを睨みつけた。っと、そんな恨めしげな視線を受けて、ルードヴィッヒは苦笑いを浮かべる。

「なにしろ私もはじめのうちは、愚かで、わがまま勝手な極悪姫だとお聞きしておりましたから……」

 歯に衣着せぬ物言いに、ミーアの頬がヒクッと引きつる。が……、

「……はじめのうち、ということは、今は違うとわかったということかしら……?」

「そうですね。少なくとも極悪ではないことはわかりました。どちらかと言えば、善良と言っても問題ない姫殿下であるということは……」

「ふっふーん、そうでしょう、そうでしょう。わかればよろしいのですわ……って、あら? わがままで愚か者かつうっかり者というほうは……?」

「……まぁ、それはともかく」

「ちょっ! ルードヴィッヒ、ちゃんと答えなさい!」

 ミーアの抗議の声が響いた。


 ――あの時のクソメガネにはムカついたものですけれど……しかし、確かに、信頼できる方にしか、大切な情報を明かさないということはあり得ることかもしれませんわ。そして……。

 ミーアは、チラリ、とフーバー子爵のほうに目を向ける。

 ――なるほど、確かにあの方は……少々、迂闊というか、小物というか……。蛇の側としてもあまり信用できる方ではないのかもしれませんわ。だから、仲間にするのではなく、利用した、と。

 その頑迷さを使い「破局へと向かうように仕向けられた帝国の伝統」を死守するようにのみ言われた。そう考えるのが良いのかもしれない。

 ――しかし、もしそうならば、これはなかなかに扱いが難しそうですわ……。蛇であるならば、明確な敵としてラフィーナさま送りにできますけれど……。

 ミーアは、シュトリナとパティのほうに目を向けて、自らの推論を開示する。

「……はい。私も同感です」

「リーナもそう思います」

 二人の見解を聞いたミーアは、もう一度検討し……。

「ふむ、では前提として、フリオ・フーバー子爵、並びにナコルは蛇の知識を一部持ってはいても、蛇ではない、ということで、働きかけるとしましょうか……」

 まぁ、後で話してみて、もし怪しければシュトリナにお願いして、ちょっぴり口が軽くなるお薬でも使えばいいか……と思いつつ、さぁてどうするかなぁ、と考えながら、再びミーアは討論のほうへと意識を戻す。っと……。

「ミーア姫殿下お一人が、この帝国の初代皇帝陛下から始まる歴史の積み重ねに勝る信用をお持ちだと……そう思うのか?」

「はい。そのとおりです。ミーア姫殿下への信頼は、これまでの帝国の歴史に勝るほど大きなものである、と私たちは考えます」

「はぇ…………?」

 ミーアが聞いていないうちに、討論は、ととっ、トンデモネェ! ことになっていた!


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― 新着の感想 ―
[一言] まあ子爵家のうっかり蛇の知識と教え伝達ミスのおかげでか兄を慕い家族想いな現子爵が皇帝の教育係だったから、革命で処刑されたミーアも、親馬鹿皇帝には愛されて育てられたですよね。 蛇側も人間だから…
[良い点] >>あなたのように事前に言っておいてくれればいいだけのことですわ。 ルートヴィッヒがものすごーく変わり者なだけで、他の官僚は忖度してしまうものなのですよ。 それがこうして後々ミーアの為に…
[良い点] ミーア像や灯台が天より高くなりそうだなぁ (討論を見ながら)
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