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ティアムーン帝国物語 ~断頭台から始まる、姫の転生逆転ストーリー~  作者: 餅月望
第九部 世界に示せ! ミーア学園の威光を!
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第五十話 たっぷり、たっぷり!

 その日、ミーアたち一行は、聖ミーア学園内に泊まることになった。

 当初は、FNYミーアランドまで戻るか、あるいは、ベルマン子爵領へと戻ることも考えたが……。

「せっかくですし、ミーア学園に泊まっていくのがよろしいのではないかしら。そのほうが、明日も朝から見学できるでしょうし。それに、明日はルールー族の森にも行って、みなさんに挨拶したいですわ」

 森の木をもっと大切にするように言っておきたいミーアである。

 無駄に、皇女の彫像とか、作ってんじゃねぇぞ! っと釘を刺したいミーアである。

 あの七色に光る木は神からもらった宝物なんだろう! 雑に使うなよ! っと強く注意を促したいミーアなのである!

 幸いなことに、学園内にはきちんと寮が完備されていた。これも、例の六角形の小屋である。

 割り当てられた部屋の中に入って、ベッドの上にポーンッと飛び乗ったミーアはほーふ、と一息吐く。

「ふむ、これが子どもたちが寝起きしている場所なんですわね。セントノエルよりは少々、狭いですけど、でも、良いお部屋ですわ」

 というか、面白い部屋だった。普通の四角形の部屋より、ちょっぴり広々としているような……。

「騎馬王国の幕屋を思い出しますわね」

「お疲れさまでした。ミーアさま」

 アンヌに声をかけられて、ミーアはニッコリ笑みを浮かべる。

「うふふ、アンヌもお疲れさまでしたわね。それに、ありがとう。先ほど、ミーアランドで、忠告してくれなかったら、宴会料理がたっぷり食べられないところでしたわ」

 アンヌの忠言通り、ミーア学園では、宴会の準備ができていた。

 校庭にいくつか焚火を作り、そこで、肉や野菜を焼いて食べるのだ。

 焼き立ての、肉汁たっぷりのお肉の美味しさは言うに及ばず。焼いたフルムーンポテトにバターを乗せ、それがジュワッと溶けたところに、塩気の強いソースをかけ、ほふほふ言いながら食べるのは、言葉にならない感動だった。

 ――それに、あの、マッシュマナとか言う、白いフワフワのお菓子を焚火で炙ったものも実に美味でしたわ。熱々で、とろとろにとけて、とってもあまぁくて……。

 どうやら、庶民の食べ方らしいが、すっかり気に入ってしまったミーアである。

 ――危ないところでしたわ。ミーアランドでミーア焼きをたくさん食べてたら、こんなに気兼ねなく、今夜の宴会を楽しめないところでしたわ。

 演説の際、お腹の触り心地がちょっぴり気になっていたものだから、もしも「ミーアランドで食べるのを我慢した!」という実感がなければ危ないところだった。

 ……我慢した、といっても、ミーア焼き二つは食べていたのだが……まぁ、それはどうでもいいことなのであった。

 っと、そこへ。

「失礼いたします。ミーア姫殿下」

 入ってきたのは、眼鏡の忠臣、ルードヴィッヒだった。

「ああ、ルードヴィッヒ。みなさんの宿泊の手配、ご苦労さまでしたわね」

「いえ……。ですが、さすがに陛下がお泊りになるというのは……。こういったことは事前に、お知らせ頂いていると、ありがたいのですが……」

 ルードヴィッヒは疲れた顔で、やれやれ、と首を振った。

「ところで、どうだったかしら? ルードヴィッヒ、学園のみなさんの様子は? ちゃんとやる気になっていたかしら?」

 その問いかけに、ルードヴィッヒはスッと背筋を伸ばして。

「もちろんです。学生たちだけでなく、講師一同、襟元を正さずにはいられないでしょう」

「そう。それならば良かったですけど……上手く伝えられたか心配ですわ」

 まかり間違っても、小麦畑ミーアートが広まるようなことだけは防ぎたいミーアである。小麦畑ラフィーナートとかなら、全然構わないのだが……。

 ――理想は、ラフィーナさまの彫像を見て、この見事な彫像を作ったのは、ミーア学園の生徒らしいぞ、と思われることかしら……。直接的にわたくしを描いたり、讃えたりするのではなく……そう、あくまでも、注目を浴びるのはわたくしではなく別の方。わたくしは、その余光を……間接的に浴びられればそれで充分ですわ。

 ミーアは太陽が好きではない。月ぐらいがちょうどいい。直接、自身が光り輝くのではなく、間接照明ぐらいがちょうどいいのだ。

 根っからの月明かり気質なミーアなのであった。

「ところで、ここに来たのは、明日以降の予定についての打ち合わせのためですの?」

 首を傾げるミーアに、ルードヴィッヒは、思い出した、と言わんばかりに、眼鏡をクイッと押し上げて……。

「いえ、それもあるのですが……もう一つご報告がございまして。先ほど、仲間より、伝書が届いたのですが……」

 一度、言葉を切ってから、

「どうやら、グロワールリュンヌ学園が動き出したようです」

「あら……。ふふふ、エメラルダさんの策が早速、実ったということですわね」

 ミーアは、うんっと頷いて……。

「それでは、迎え撃つ準備をしておいたほうがよろしいかしら……甘い物も食べ過ぎましたし、腹ごなしということで……。アンヌ、紅茶を淹れてきていただけるかしら? お砂糖をたっぷり入れて」

「はい。ミルクたっぷりのミルクティーを淹れてきますね」

 主の命令を、健康翻訳ローカロリーライズして、ニッコリと微笑むアンヌであった。

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― 新着の感想 ―
[良い点] >>あの七色に光る木は神からもらった宝物なんだろう! 雑に使うなよ! 蹴っただけで矢を射かけてくるような木だったのにねえ……。 聖ミーア学園で植林のノウハウでも開発しちゃったかな? >…
[良い点] >森の木をもっと大切にするように言っておきたいミーアである。 族長「問題ありませんじゃ。孫のワグルが学園で植林というものを学んでくれたので、我ら一族の宝の木を増やせるようになりました。コ…
[良い点] >たっぷり、たっぷり! ミーアが自分の記念館を見る →うちのめされて胸が「いっぱいいっぱい」になる →受けたダメージを回復しようと「たっぷりたっぷり」食べる →身体が「たっぷたっぷ」にな…
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